ネット上でのQ&Aサービスを作り方のコツを語ってみるよ


by 古川健介(起業家)


僕は、インターネット上のコミュニティサービスをたくさん作って15年くらい立ちますが、大ヒットは飛ばせないものの、全くダメで人がこないという失敗を避けるコツはつかめてきたかも、という感覚はあります。

で、そこで学んだことはいろいろあるのですが、その一つに、「Q&Aサービスの作り方」というものがあります。

Q&Aサービスとは、要はYahoo!知恵袋や、LINE Qみたいな総合型から、弁護士ドットコムのような専門性高いものなど、たくさんありますが、みなさんご存知の通り、質問者が質問をなげると、回答者が回答をくれるというものです。

僕の会社でも、何度かQ&Aサービスを立ち上げるというものをやったりしていました。この時のコツを紹介します。



質問者を集める!


Q&Aサービスで一番大事なのが、質問者を集めるということです。

Q&Aサービスは、質問する人と、回答する人がマッチングするサービスなので、どちらかから増やす必要があります。しかし、ここで勘違いしがちなこととして、「困っている人はきっと質問するだろうけど、それにたいして親切に回答してくれる人には、何かのインセンティブをあげないとダメだろうなあ」というものがあります。

僕も昔そう思っていました。しかし、これは僕のコミュニティの師匠の一人であり、いとまささんという方が「回答者は何もしなくても集まるけど、いい質問をする質問者を集めるほうが難しいよ」と言っていたのを聞いて、ハッとしました。

たしかに、自分を振り返っても、インターネット上に困っている人がいて、質問していたら、回答してしまうのです。人間は、質問されると答えたいと思うのかもしれません。ともかく、質問さえしっかりしていれば、回答を集めるのは、その質問を見ている人がいる限り、集まりやすいのではないかなと。

なので、多くの質問サイトが「回答率90%を超えています!」とアピールしていますが、回答率は高くて当たり前なのです。

むしろ、質問は難しい。というのも、人が質問をするというのは結構難易度の高いことなのです。「質問力」「聞き上手」みたいな本がたくさん出ているように、うまく質問するというのは実はスキルがいる。

回答が集まってくるような質問をするには、

  1. 自分は困っているのだという課題を認識する
  2. その課題を言語化する
  3. 言語化したものを、答えやすいように工夫する

というステップが必要だからです。

なので、Q&Aサービスを作る上では、とにかく、いい質問をするユーザーを集めるというのが重要なのですね。いい質問さえ集まってしまえば、回答をする人は勝手に集まるわけです。

検索エンジンを目指さない


次に、Q&Aサービスを作る時には検索エンジンを目指してはいけない、というのがあります。Q&Aサービスがミスる一つの方向性としては、検索エンジンぽさを目指してしまうということです。

これは、昔「アンサー」というQ&Aサービスを作っていた時に感じたことです。新しいカタチの検索エンジンは、チャットUIで行われ、機械と人間がハイブリットで答えるんだ!と思っていたのですね(今はアンサーは総合コミュニティサイトになっています)。

で、これは未だにいいと思っているのですが、Q&Aサービスには向かないんです。あくまで、質問者と回答者のコミュニケーションのスタイルがQ&Aなのであって、実は答えを求めている人というのはQ&Aサービスには少ないのですね。

よく女性と男性のコミュニケーションのすれ違いの時に言われますが、「女性は聞いて欲しいだけなのに、男性は答えを言ってしまう」みたいなケースに近いのかもしれません。完璧な答えよりも、共感やら、自分の考えを肯定してもらいたい、という意思がQ&Aサービスでは入りやすいので、そのユーザーの方々の気持ちを尊重しないといけないのかなと思っています。

たとえば「ハリウッド映画で一番おもしろいのは、インデペンデンス・デイだけど、二番目は何だと思いますか?」みたいな質問がそうです。明らかに、インデペンデンス・デイおもしろいよね!っていいたいだけですよね。もちろん、映画なので、人によっておもしろいものは違うわけですが、こういう質問をすることで、インデペンデンス・デイがおもしろいよ、と言いたいだけなのです。一方で、コメントするほうも「ダークナイト」、みたいな、自分がおもしろいと思う映画を回答したりするのですね。要は雑談コミュニケーションの一種として使っているわけです。

こういうのを無視してはサイトとしての熱量というかパワーが落ちてしまうので、やってはいけないかなあ、と。(ちなみにGoogleで検索して、調べてみたら「バッファロー‘66」が一番おもしろい映画だそうです)。

一方で、答えがさくっと知りたい系の質問もあるわけですが、その場合、Q&A形式だと使いづらいんですね。Googleのように、10件くらいの候補から選んでもらう、というほうが使いやすいわけで、検索エンジンの結果ページという、完成されたインターフェイスがあるので、それを答えるのはなかなか難しいかなと。

過去の質問に誘導しない


過去の質問というのは、非常に有意義なコンテンツであり、SEOでの集客などにも使えるので、Q&Aサービスにとっては資産です。

しかし、サービス内から過去の資産に誘導しすぎると、質問をしづらくしています。特に「過去の質問読めよ」みたいな回答をするユーザーは最悪です。過去の投稿から探せる人は検索するでしょうから、そもそも質問しないでしょう。

なるべく、同じ質問でも、回答だとしても許される雰囲気というのを作るのは大事だなと思っています。

おわりに


Q&Aサービスというのは、いろいろなジャンルやセグメントにわけてもユーザーを集めやすい優秀な仕組みです。ただ失敗すると、人がいる感じをなくしてしまったり、気持ち悪い人が集まってしまったりするので注意が必要です…。


The First Penguin」は起業家の軌跡から学ぶメディアです。

このメディアをFeedlyに登録する