ギリシャは珍しい政府機関を有している。NAAという機関で、翻訳すると国立保険計理院くらいになる。長期的な人口変化を予測して、国民年金と健康保険が今後も存続できるかどうかを点検する役目を担っている部署だ。国家の負債が山積し、未来が心配になったことで、2002年に設立された。
2カ月前にNAAが暗い見通しを示したのを、ギリシャのメディアが大きく取り上げた。昨年1105万人だった人口が2060年には850万人に減少する、とNAAは予測したのだ。人口が減るだけではなく、その頃になれば10人に6人が65歳以上になるという。労働人口が不足し、65-74歳の4分の1は引退できずに仕事を続けるほかない状況に追い込まれる、とも報じた。年金の所得代替率も2020年以前に減り始め、現在の80%水準から60年には64.6%に縮小する見通しだ。
すでにギリシャは長期不況のため子どもの出産が減り、それが経済活動人口の減少を呼び、景気の低迷が深刻化する恐怖のサイクルに陥っている。同国は、2010年から人口が減り始めたが、あいにくにも同年に最初の救済金融の手を借りた。その後、債務国に転落したために緊縮政策を取るようになり、人口減少の速度が速まった。健康保険をはじめとする社会保障制度が弱体化し、子どもを生まない現象が広まったのだ。生活水準がその他のヨーロッパ諸国に比べて低迷しているため、移民してくる外国人は減り、若い頭脳は先進国へと出ていった。
こうして5年が過ぎると、ギリシャ人たちは未来がないと思うようになった。人口減少と高齢化によって国家が再起する可能性を低く見積もっている。よって、今回の危機さえ越えられれば再び立ち上がることができる、という意志にはつながりにくい。だから「なるようになれ」といった振る舞いに出る人が多いのだ。ギリシャ人の怠け心を取り上げる声もあるが、至って副次的だ。未来を考えれば考えるほど答えが出なくなるため、せめて現在だけでも楽に生きようといった発想になり、生ぬるい政策を提示する左派政権に票が集まる。
こうしたギリシャの事態は、何も「対岸の火事」といって片付けられる問題ではない。1970年代以降、韓国では1971年生まれが102万人で1年間の出生数としては最も多い。その後は出生数が減る。1971年生まれは現在韓国の年(数え年)で45歳だ。マイホームを建てたり仕事をしたりと経済活動が最も旺盛なのが40代中盤だ。今後は30、40代が現在よりも経済活動を盛んに行うのが構造的に難しくなるというわけだ。統計庁が2年後には生産可能人口(15-64歳)が減り始めると予測しているのも同じ脈略からだ。1971年生まれよりも20歳若い91年生まれは71万人、30歳若い2001年生まれは55万人しか生まれていない。
人口減少が現実化した後に国家的危機に直面すると、十数年前に通貨危機を乗り切った時とは明らかに違ってくる。数日で通り過ぎる嵐くらいに考えて再建に立ち向かうには障壁が高過ぎる。その頃には、家の片隅で眠っている金の指輪を国のために差し出すのは容易でなくなる可能性が高い。これこそギリシャの状況に注視せざるを得ないもう一つの理由だ。