安倍政権の「女性が輝く」の本質を示す記事が増えてきています。日本経済新聞のシリーズ「働き方 Next 女性が創る」の6月26日「フィリピンは「先進国」」がその典型です。
「ここでは働く女性がメイドを使うのは一般的」。世界経済フォーラムが調べた女性管理職比率は日本は11%なのにフィリピンは48%。世界トップクラスの原動力は家事の代行や育児支援サービスにある。
メイドも「働く女性」のはずですが、「輝く女性」とは見做されていないようです。
次の記事も同様です。リーズナブル=非常に安い(低賃金)を意味します。
共働きができる背景には「リーズナブルなメイドの供給」があると思う。シンガポールにいる欧米エリートたちは「自国でメイドさんを雇うなんて考えられない」という。それくらいシンガポールは家事支援環境が整っている。近隣諸国から大量にメイドの供給が可能であり、かつ事実上最低賃金がないため非常に安く雇うことができる。
「性別分業の否定⇔格差社会」のメカニズムは下の記事で言及済みですが、フィリピンはその典型例です。
男女平等先進国のスウェーデンでも格差が急速に拡大中です。
[…] inequality has risen faster in Sweden than anywhere else in the past two decades.
フィリピンは、多数の労働者が海外(過半数が中東)に出稼ぎに行く国でもあります*1。これを日本が見習うべき「先進国」とする主張は異様です。*2
「女性が輝くためにリーズナブルなメイドの供給を」は、要するに「家事・育児は低次元の“輝けない”仕事→主婦はなんで自分の人生を家事や育児をすることにかけているんだろう?→低賃金労働者にやらせればよい」という勝ち組女の論理です。アメリカやシンガポールに移住したスウェーデン人の女が「目覚め」て実行していることでもあります。
このような観念を持った女が「自分より稼がない男」と結婚して一家の大黒柱になることはまずありません。シンガポールがその好例です。
結局のところ、ナチスドイツが見抜いていたことが、先進国に広がる「男女の同等化=女性が輝く」の本質ということでしょう。そもそも、男たちの大部分は「輝いていた」というより「賃金奴隷」ではないでしょうか。*3
ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ
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「過去の婦人運動は36人の婦人国会議員と数十万のドイツ女性を大都市の路上に狩り出した」と、ある女性の党支持者は書いた。「それは1人の女性を高級官僚にし、数十万の女性を資本主義的経済秩序の賃金奴隷たらしめた。働く権利を奪われている男はいまや約600万もいる。女だけが、安価でいつでも利用できる搾取の対象として、いまなお仕事を見つけることができるのである」。
「男女平等」とリベラルを装いながらも"have it all"と強欲を隠さないネオリベラルエリート(羊の皮を被った狼)の庶民への攻勢はますます激しくなりそうです。