<報道圧力発言を憂える>読者と国民を愚民視
◎河北新報社取締役編集局長 鈴木素雄
自民党所属国会議員の勉強会で、報道機関に圧力をかけて言論を封殺しようとする発言が相次いだ。「選良」と呼ばれる人たちの言論の自由に対する鈍感さと無理解に、背筋が寒くなる。ペンの力をよく知り、それ故にその行使についてより自制的であるべき人気作家が講師役を務めたと聞いて、二の句が継げない。
標的となったのは沖縄県の地元紙「琉球新報」と「沖縄タイムス」だった。米軍普天間飛行場の県内移設問題について、いずれも政府に厳しい論調を展開している。人気作家や勉強会の出席者は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」「左翼勢力に乗っ取られている」と、口を極めてののしった。
エネルギー政策や安全保障問題などをめぐって、国策と地方の利害が対立することは珍しくない。地方紙が県民の声を代弁して編集に当たることはむしろ当然の任で、それに掣肘(せいちゅう)を加えるがごとき言動は異論封じ以外の何ものでもない。地方を眼下に見る高慢さが見え隠れしていないだろうか。
東日本大震災以降、両紙は月命日を中心に河北新報など被災3県の地元紙の記事を転載するなど、震災の風化にあらがう紙面作りを続けている。東北から南に千数百キロ。友好紙への政権与党からの故なき中傷を、看過することはできない。
「マスコミを懲らしめるには、広告料収入をなくせばいい」。これもまた、聞き捨てならない暴論だ。ご承知の通り、新聞社の経営は大きく分けて購読料と広告料収入で賄われている。二つある糧道のうち一つを断てば音を上げるはずとの読みだろうが、浅知恵と言うほかない。
まず、スポンサーは費用対効果という経済原則に沿って広告を出稿しているのであり、時の権力者の鼻息をうかがっているわけではない。経団連を通じて圧力をかける「私案」を披露した議員もいたようだが、見くびられた経団連こそいい迷惑というものだろう。
そしてこれが最も大事なことだが、読者の信頼を失えば権力者がわざわざくちばしを入れずとも、新聞が自壊の道を歩むことになるのは自明の理だ。
どんな事態か。権勢を振るう者に不都合な真実に目をつぶり、広告料欲しさにへつらう。勉強会の面々が理想とする、そんな新聞の姿だ。誰が読んでくれよう。読者と国民を愚民視したという点でも、一連の報道圧力発言は根深い問題をはらんでいる。
2015年06月30日火曜日