誰だって、健康でいたい。
だが、食べ物に気をつけ、適度な運動をし、健康的な生活をしていても、病魔に侵されることはある。病気になるリスクを、ゼロにするのは不可能だ。
しかも、その“変化”は、皮肉にも元気であればあるほど突然に訪れる。
ある日を境に、満足に仕事ができなくなり、時短勤務でしか働けなくなり、長期療養が必要となり、最悪の場合、退職に追い込まれる。
と、何だかちょっとばかり重い出だしになってしまったが、今回はそんな健康不安と切ない気持ちが入り乱れた話からスタートします。
テーマは、20年、いや15年後の「私たちの問題」とでも言っておこう。
今から2年前、駅の構内に座り込んでいた73歳の男性が保護された。ホームレスの“見回り隊”に声をかけられた男性は、自分の状況を十分に説明することができず、
「認知症が進んでいる」――と判断されたのだ。
その後の調査で、
・男性が40年もの間、調理師として働いていたこと
・月収は、25万円程度だったこと
・ぜいたくはできないけど、それなりの不自由のない生活を送っていたこと
などが分かった。
そんな彼がなぜ、ホームレスになったのか?
きっかけは、身体を壊し退職を余儀なくされたことだった。
仕事を辞めた後、男性はコツコツと貯めてきた預金でアパートを借り、単身で生活をしていたという。
そんなある日、“事件”が起こる。なんと、天井からポタポタと、水が滴り落ちてきたのである。
驚いた男性はバケツを置き、なんとかしのぐ。それを相談できる家族も、友人もいなかった男性は、どうすることもできずにそのまま放置した。
男性はその頃から認知症の症状が出ていたと考えられ、部屋には荷物や食べ物が散乱。半年後には、何もかも水浸しになり、生活ができなくなった。そこで男性は部屋を出て、ビジネスホテルを転々とする暮らしを始めたのである。
そして、ホテル生活を始めてから2週間ほどたった頃。男性は再び病魔に襲われる。
持病の心臓の病気が悪化し、救急車で病院に運ばれたのだ。幸い大事には至らず退院したものの、直後に男性は銀行の通帳と現金が入ったカバンを紛失。40年貯め続けた全財産を失い、一文無しになってしまったのだ。
帰る家も、生活するお金も、頼れる友人も、家族もいなかった男性は、たった一人で、そうたった一人で街をさまよい続け、2カ月後、駅の構内の片隅で、うずくまっているところを保護されたというわけ。
―――。