編集長の着眼点はデータドリブン時代へ突入


by 村田マリ(起業家)


ここ最近、ネットメディアのトレンドが変わる間隔が短くなってきています。スマートフォンの登場でユーザーの情報消費スピードが一層上がったことも要因の1つです。これまで半年程度のサイクルで変わっていたものが3カ月程度になるなど、さまざまなところで移ろいのはやさを感じます。

トレンドが変わる間隔が短いということは、ユーザーに求められるメディアやコンテンツもどんどん変わっていくということです。今はスマートニュースやグノシーによって多くのトラフィックを獲得するなど、寵愛を受けているメディアがあるかもしれません。

しかし今後、スマートニュースやグノシーのダウンロード数をはるかに上回るようなアプリが出てきたら?強力なコミュニケーションツールやソーシャルメディアみたいなものが登場したら?5年安泰と言われるアプリ自体があまりないとも言われている現在では、これまで受けてきた寵愛が一瞬にしてなくなることも十分あり得ます。

そんな流れのなか、今後のネットメディアはどうなっていくのでしょうか。私個人としては、旧来型のメディアはそのまま存続する一方、新しいタイプのメディアが登場するのではないかと考えています。

メディア編集に必要なのは、属人的な知識やセンスではなく、トレンドの解析力


メディアの読者たちは常に時間がなく、かつ世の中は情報の洪水で溢れています。その中で、メディアにおける編集長が果たしてきた機能とは、数多くある情報から読者にとって必要で意味のある情報を抜き出し、コンテンツとして形にしていくものでした。この機能は今後もなくならないでしょう。

一方、属人的な編集長の力では追いつかなくなってくる部分も存在します。スマートフォンの普及によって、読者が消費するコンテンツの量やスピードは格段に大きく、はやくなっています。また読者が望むコンテンツも多様化しています。いかに優秀な編集長でも、このスピード、量、そして多様性についていくことは容易ではありません。

今までであれば、

・特定の業界や特有の視点を持っている
・特化したコンテンツ領域や書き口みたいなものがある

など、コンテンツ独自が持つ「何かしらの強み」を活かし、それを長く続けていくことでメディアのブランドにつながるという考え方がありました。しかし、私が考えている新しいタイプのメディアは、これとは少し違います。

私の考える新しいメディアとは、トレンドにあわせて大胆にコンテンツを変えられるメディアです。

たとえば、テキストコンテンツとして強かったメディアが、画像のまとめが流行したら、すぐに「猫の画像まとめ」のようなコンテンツを強みにでき、さらに高品質な動画コンテンツまで対応できる・・・など、トレンドに合わせてコンテンツを変えられるというものです。

このような変化が激しい時代では、テキストコンテンツの中身が素晴らしい、といったような、人の知識や経験をベースにした国語力だけでは勝ち抜くことはできません。コンテンツの中身より、ユーザーの興味や時代のトレンドをリサーチして、解析し、ユーザーが求めているコンテンツを知る解析能力のほうが大きな影響を与えるのではないでしょうか。

iemo」でも、そういったユーザーの動きやトレンドの解析を行うチームを導入しています。買収先としてDeNAを選んだのは、解析に長けた人材の層の厚さがあったからでもあります。さっそく、DeNAでは2015年4月からグロースハック部門を新設し、どういったコンテンツがウケるのかを考えたり分析して、それに対応したコンテンツを作るところまで繋げるためのチームを作っています。

スタートアップから持ち込まれた着想、コンテンツ、思想の部分に、これまでDeNA社内でソーシャルゲームの解析をしていた解析が得意な人たちをつけ、筋肉質なチームを作っているのです。

ディストリビューター(スマートニュースやグノシー)とパブリッシャー(iemo)の未来


メディアの話をするときに最近話題に上がるのは、スマートニュースやグノシーのようなディストリビューターと、自ら取材してコンテンツを作るパブリッシャーが、お互いどう進化していくのか、どのようにお互い事業収益を作っていくのかということです。正直、これは難しい話です。

メディアの中で最もコストがかかるのは、コンテンツ制作部分です。ディストリビューターは、コンテンツを外部から持ってくることができるので、アプリなどプラットフォーム制作に注力できます。そういう意味では、ディストリビューターの方が、ドミナントプラットフォームとなれれば、収益を上げやすい構造にはなっています。

しかしディストリビューターは、スタート時に1人でも多くのユーザーを獲得したもの勝ちという側面があるため、最初から熾烈なマーケティング合戦を繰り広げることになります。

そして、仮にスタート時に多くユーザーを獲得できたしても油断はできません。ディストリビューターは、後から参入してくる人も多いのです。

新規のディストリビューターは既存のディストリビューターに比べて技術的にあまり差分がなく、かつ大勢のユーザーが瞬間的にそちらへ乗り換えてしまう可能性があります。収益や利益率が上がりやすいとは言えますが、たとえば「とても使い勝手がいい」というだけで一斉に乗り換えが起こるという危うさとトレードオフであるとも言えるのです。ゆえに、パワーゲームになりやすいのです。

その点、パブリッシャーには年月が経てば経つほど「蓄積型」になれるという強みがあります。特に「iemo」のようなバーティカルメディアでは、情報深度が深くなればなるほど価値が上がります。長く続ければ続けるほど、コンテンツの独自性、専門性が上がります。パブリッシャーにとっては、そこをいかに積み上げられるかが、ディストリビューターよりも優位になれるポイントです。パブリッシャーはその時その時で最適なディストリビューターと全方位で組んでいけば事業成長させることができる、いわば負けにくいモデルです。

専門性が高くて独自性の高いコンテンツをコツコツと真面目に作っていれば、Googleからの評価も高くなります。そして、ブランドも構築されてユーザーからの信頼も生まれます。長く続けることで後から競合が参入してきても先行者優位があります。何より、我々のような農耕型民族にとっては、コツコツと作っている方が精神衛生上いいんです(笑)。

結局のところ、ディストリビューターもパブリッシャーも、どちらの業態をとっても大変さは変わりません。しかし、メディアビジネスには頑張った人がちゃんと報われるという側面がなくてはならないと私は信じています。誰かが不当にフリーライドすることは、メディア業界の発展のためにも許されることではないでしょう。

広告から収益を出すという1つのビジネスモデルは見えています。今後も大きく変化するであろうユーザーのアテンションの流れ、リアルタイムで変化するユーザーの嗜好の変化、この2つを見極めながら、最適なディストリビューターと組んで、より多くの読者に価値あるコンテンツを届けていくこと。ウルトラCはありませんが、これを作れるコンテンツパブリッシャーが大きな存在になっていくと考えています。


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