新国立費用、900億円上乗せの2520億円に
政府は2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の整備費用について、予定より約900億円も上回る約2520億円とする方針で調整していることが24日、分かった。文部科学省と日本スポーツ振興センター(JSC)が建設業者と協議し、2本の巨大な「キールアーチ」のデザインを維持した形で、コスト削減を進めることを確認。ただ、技術的な問題や財源確保などの課題は残されたままとなっている。
複数の政府関係者によると、整備事業の主体であるJSC担当者と建設業者が23日に都内で協議。全体の整備費用は、昨年の基本設計時に1625億円とされた額から900億円上乗せされた約2520億円となることを確認した。問題点が指摘される「キールアーチ」構造を特徴とするデザインを生かした形で建てるとし、7月上旬の工事契約、10月着工を目指す。下村博文文科相(61)も了承した。
370メートルある2本の「アーチ」を外すなど、白紙に戻しての再設計も検討されてきた。だが、監修者、ザハ氏との契約を解除すると訴訟リスクがあり、国際的な信用に関わるとの見方が強まった。また、再設計の場合、新国立を使う2019年秋のラグビーW杯日本大会に間に合わない可能性が出てきたため、断念したとみられる。
ただ、2520億円で、契約が結ばれた場合も課題は山積みだ。
【技術的な問題】世界的な建築家・槙文彦氏(86)が、巨額な費用がかかり、「技術的に大変な問題があり、工期遅れにつながる」と指摘したアーチ構造を再現できるかどうか。「巨大クレーンでビルをつり上げ、溶接でつなぐようなもの」と別の建築家も危惧する難工事。実証実験や膨大な設計図、審査が必要で、建設業者は現在も、費用面などで難色を示している。
【財源問題】膨れ上がった整備費の財源をどう確保するか。現在までの確保分は約500億円とされる。文科省などは、東京都に約500億円の費用負担を求めているが、舛添都知事は保留。都民や東日本大震災被災地からの不満の声も予想される。整備費に充てるスポーツ振興くじ(サッカーくじ)の割合引き上げで、年間100億円以上は見込めるものの、17年4月の消費税率引き上げや、人件費などで「終わってみれば3000億円では」と、費用が膨らむ可能性も指摘されている。
【五輪後の問題】整備費高騰で、五輪後の新国立の使用料、賃貸料も大幅アップの見通し。政府・与党で検討される五輪後の民間委託も難しい情勢になってきた。五輪後に設置するとした開閉式屋根にも数百億円が必要とされる。政府関係者は「民間委託をした場合でも建設費の回収は困難になった。コンサート開催や、プロスポーツチームに貸す場合でも高額な料金がネックとなり、稼働率を上げることはできないだろう」とみている。