今月10日正午、ソウル・鍾路3街の「天使無料給食センター」を訪れた高齢の男性は、入り口の前でしばらくの間うろうろした後、引き返していった。この男性は前週まで、ここで週に3回昼食を済ませていたが、この日から給食センターは閉鎖された。社団法人「天使無料給食センター」は、全国26地域で毎日、生活が苦しい一人暮らしの高齢者など約1000人を対象に給食を提供してきた。ところが、中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染拡大を受け、10日から全国の全ての無料給食センターの運営を暫定的に中止した。免疫力の弱い高齢者の間でMERSの感染が広がるのを防ぐためだ。給食センターの関係者は「最近、センターを訪れた高齢者が空咳をしたところ、向かいに座っていた高齢者が『病気がうつるからあっちに行け』と大声で怒鳴り、けんかになったことがあった」と話した。給食センターの近くにある鍾路区老人福祉センターも15日まで休業することを決めており、鍾路区一帯に集まっていた高齢者たちは行き場を失った。
MERS感染拡大の影響で、無料給食センターなどが相次いで閉鎖に追い込まれ、低所得層の高齢者たちが「生活苦」と「MERS感染の恐怖」という「二重苦」にあえいでいる。わずかながら運営を続けている給食センターには高齢者たちが殺到している。鍾路区のタプコル公園近くにあるウォンガク寺無料給食センターは、MERSの感染が広がって以降、訪れる高齢者たちが増え、12日には普段の2倍近くもの高齢者たちが列をなしていた。同センターは最近、鍾路保健所に依頼して消毒作業を行ったが、依然心配だと話した。コ・ヨンベ事務局長は「先週から給食を提供する時間が1時間ほど長くなった。当分の間は利用者が向き合ってご飯を食べる給食スタイルの代わりに、おにぎりを配ることも検討している」と話した。
ソウル市東大門区踏十里一帯の路地では、歩道のブロックの上に腰掛けて弁当を食べる高齢者たちが増えた。同地区で給食を提供してきた「ご飯を配る運動本部」が、今月9日から給食の提供をやめ、弁当やパンを配り始めたためだ。800人ほどの高齢者たちが給食センターを訪れたが、MERS感染拡大の影響で、企業などから集団で派遣されるボランティアは40%ほど減少し、人手が足りなくなっている。
医師たちが外国人労働者たちを対象に運営している無料診療ボランティアも中止された。ソウル市九老区の外国人労働者専用医院で1カ月に2回無料診療を行っている「平和と愛を分かち合う奉仕団」は、今月14日に予定されていた無料診療を中止することを決めた。同団体のイ・ヒイル委員長は「中国人患者がMERS感染に敏感になっていることから、苦心の末、いったん活動を休止することを決めた」と話した。