ソウル市江南区庁の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)防疫対策本部が設けられた江南保健所は、先週から週末・休日を返上して「MERSとの闘い」を繰り広げている。相当数の一般病院が呼吸器疾患を発症したり高熱を出したりした患者の診察を渋っているため、行き場がなくなった人々が保健所に集中しているのだ。10日に取材した同保健所3階の相談センターは、巨大なコールセンターと化していた。相談員10人は午前8時から翌日午前8時まで24時間態勢でMERSに関する相談電話に対応していた。MERS感染の危険性がある隔離対象者の状況を一日に2回確認するため、トイレに立つのもままならない様子だ。
MERS感染拡大を阻止しようという努力が韓国各地で行われている。保健当局や医療関係者は感染の危険にさらされながら寝る間も惜しんで患者や感染が疑われる人々の診察などにあたり、市民の中には自分のお金や時間を費やしてMERSに立ち向かおうという人も増えている。
ソウル市内のある大学病院救急医学科専門医アンさん(32)は、MERS感染拡大阻止の最前線となっている救急外来で、一日14時間も診察をしている。アンさんは4カ月後に父親になる。「私のせいで、もしかしたら妻のおなかにいる子どもにMERSが感染するのではと心配になるが、医師としてはやらなければならないことなので逃げはしない」と言った。アンさんの妻パクさん(28)も同じ病院に勤務する内科医だ。妊娠6カ月目を迎えたパクさんも病院で患者に応対している。パクさんは「MERS感染に対する懸念が全くないわけではないが、主治医として担当している患者には70-80代の高齢者が多く、放っておけない。マスクを着用し、手洗いや消毒を怠らなければ、MERSに勝てると思う」と言った。
漠然としたMERSへの恐怖心を乗り越えようと立ち上がった人々もいる。あるコンピューター・プログラマーは3日、「MERS情報提供アプリ」を開発、無料で配布した。スマートフォン利用者は、このアプリで共有されている地図にMERS患者発生が疑われる地域を表示することができるだけでなく、ほかの人々が情報提供した地域を見てMERS危険地域を把握することができる。現在までに1万人がこのアプリをダウンロードして情報を共有している。今月2日には、別のプログラマーが「Mers-Cov」というアプリを無料配布した。MERS発症時の症状や予防法が電子書籍形式になっており、疾病管理本部の「MERSホットライン」(043-719-7777)にもワンタッチでつながるアプリだ。MERS感染者が発生した地域や、MERS関連ニュースを速報で知らせる「アンチMERSアプリ」、MERS関連のニュースを自動的にまとめて表示する「MERSニュース・ルーム・アプリ」も無料配布されている。
最近はハンドウォッシュや消毒薬の入手が困難になっているが、これを受けてインターネット上ではブログや掲示板を通じ「消毒薬の作り方」が公開されている。消毒用エタノール、グリセリン、水を使って消毒薬を簡単に作る方法を紹介したり、手作り消毒薬を無料で配ったりする人もいる。大学生のユンさん(22)は少し前、自分の家で作った天然材料の消毒薬を8人に配送費も自己負担で無料送付した。ユンさんは「お金は重要ではない。誰かが私が作った消毒薬によってMERSの危険から救われればと思った」と話している。