山中教授「少数のためではなく、みんなのための技術を」

iPS細胞の専門家・山中伸弥教授、WCSJで基調講演
「幹細胞の標本バンクを作れば安さの恩恵を受けられるが、活用までに10年はかかる」

山中教授「少数のためではなく、みんなのための技術を」

 「来年には、iPS細胞を利用したパーキンソン病治療の臨床試験が日本で始まる。新たな挑戦で、希望の持てる結果が出ればいいと思う。しかし幹細胞治療剤が、すぐに使えて万病に効く薬ではないということは明らかだ。忍耐力を持ち、10年は待たなければならない。一つの特別な良い結果を得るよりも、あらゆる人が利用できる技術を開発することが、科学の真の目標だ」

 2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大学教授(53)は9日、ソウルのCOEXで開かれた「科学ジャーナリスト世界会議(WCSJ)」の開会式で基調講演を行い「治療の難しい病気の患者や家族に過度の幻想を植え付けないため、常に努力している」と語った。山中教授は2007年、成人の育ち切った皮膚細胞に成長を調節する遺伝子を組み込み、ヒト胚性幹細胞(ES細胞。受精卵に存在する細胞で、人体のあらゆる組織に分化させることができる)状態に戻す技術を開発した。こうして作られた細胞を「iPS」という。iPSを皮膚に移植すれば皮膚細胞になり、心臓に移植すれば心臓の細胞になる。患者自身の細胞を利用して作るので拒絶反応はなく、ES細胞と違って受精卵を利用する必要がないことから倫理的な問題もない。

 日本の研究チームは昨年、加齢黄斑変性にかかった患者の目にiPSを移植し、7カ月以上にわたって視力の低下を防いだ。最近では、iPSを利用して血液細胞も作り出した。山中教授は「血液を作ることができれば、高齢化時代に献血者が足りなくなる現象に対応することができるだろう。iPSで免疫細胞を作り、高齢者の免疫力を高める研究も可視化しつつある」と紹介した。

 山中教授は最近、iPSバンクを作るために尽力している。iPSは基本的に、患者自身の細胞を使うから拒絶反応がない。しかし1人のiPSを作って培養・使用するためには、少なくとも100万ドル(約1億2400万円)以上の費用が掛かる。山中教授は「数多くの人を対象に研究した結果、約140種類のiPSを作れば、90%以上の人に拒絶反応なく利用できることが判明した。この140種類のiPSを作って全国で分散保管し、必要な人は誰でも利用できるようにしようと、大学・病院・政府と協議している」と説明した。

 整形外科医出身の山中教授は、9日の講演で、自分は立派な医師ではなかったと告白した。手術の素質がなく、他人なら30分で済む手術に2時間かかることもざらだったという。同僚は、山中教授のことを「じゃまなか」というあだ名で呼んだ。しかし、レジデント(臨床研修医)時代に父親が糖尿病と肝炎で突然世を去ったことで、山中教授の人生も変わった。「世の中には治せない病気が非常に多いということを、そのとき悟った。父のように死ぬ人がいない世の中をつくろうと決心し、基礎医学分野に進路を変えた」

 医師としては劣等生だったのに、学者としては世界のトップに立った秘訣(ひけつ)について、山中教授は「間違いから学ぼうと努力した」と語った。科学をやっていると、意図しない結果が出てくることがよくあるが、それがまさに、新たな発見の決定的なチャンスだという。

パク・コンヒョン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 山中教授「少数のためではなく、みんなのための技術を」

right

関連ニュース