認知症になると、認知症の人からは「出かける自信がない」、家族からは「どこに連れて行っていいかわからない」といった意見が聞かれることもあるようです。そういった悩みに対する一助として登場した「認知症カフェ」というものについて見ていきましょう。
目次
認知症になると出かけたくなくなってしまう?
認知症の人の中には、外出先での失敗などを経験してしまうと、「また同じようなこと繰り返してしまうのでは?」という不安を感じてしまったり、周囲(家族や外出先)への申し訳なさや遠慮を感じてしまったりして、外出そのものが嫌になってしまうという方もすくなくありません。
面倒を見る家族としても、ひきこもったままはよくないだろうと、「○○に行かない?」と趣味の場に誘ってはみるものの、なかなか気乗りしないようで、外出する不安や怖さの方が心理的に上回ってしまう、ということもあるようです。
病院であれば、ある種の仲間がいたり、そこに医療の専門家たちが揃っているので、なんとか重い腰を上げてくれるものの、もっと他にどこか日常的に気兼ねなく出かけられるようなところはないか、と認知症の人だけでなく、その家族も頭を悩ませています。
そこで近年注目されつつあるのが「認知症カフェ」です。
認知症カフェと急増の背景とは?
では、「認知症カフェ」とはいったいなんのための、どんなものなのでしょうか?
認知症カフェとは?
認知症カフェは、認知症の人やその家族、各専門家や地域住民が集う場として提供され、お互いに交流をしたり、情報交換をしたりすることを目的として近年急増しています。
認知症の人が「スタッフ」として、コーヒーや軽食をふるまうこともあり、自分の存在意義を確認するという役割も果たしています。
カフェといっても現状では、一般的なカフェのように営業するのではなく、月数回の定期イベントとして開催されるケースが多いです。
場所は主催者の自宅などの民家や、各種レンタルスペースなどを借りて実施されることが多く、参加費も数百円~2千円程度のところが多いです。
認知症カフェ急増の背景は?
現在、日本では軽度認知障害を含めると、約800万人ほどの認知症高齢者がいるとも言われています。国民の約15人に1人、65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症の人ということになります。
今後、高齢化が進む中で、認知症の人がさらに増加することが懸念されるため、彼らに対する支援として、厚生労働省が「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定しました。
この新オレンジプラン内の一施策として、認知症カフェの設置を挙げています。
新オレンジプランとは?
新オレンジプランでは、
「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」
ということを基本的な考え方としていて、策定にあたっては認知症の人やその家族といった関係者から広く意見を取り入れています。
そして、新オレンジプランでは具体的な施策として、以下の「7つの柱」を置いています。
- 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
- 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
- 若年性認知症施策の強化
- 認知症の人の介護者への支援
- 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
- 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
- 認知症の人やその家族の視点の重視
この中の、「認知症の人の介護者への支援」の中で、認知症カフェの設置を推進していく予定となっています。
海外で始まった認知症カフェ
認知症カフェはイギリスの「メモリーカフェ」、オランダの「アルツハイマーカフェ」などを参考にしています。
認知症に対して国家戦略を持ち、認知症ケア先進国とも言える両国では、すでに認知症の人たちが社会に参画するための場として大きな役割を担っています。
認知症カフェの15のメリット
認知症カフェに行くことで認知症の人、そしてその家族が得られる15個のメリットをそれぞれ見ていきましょう。
主に認知症の人が得られるメリット
本音で話せる
健常者と会話するとなると、「認知症について触れるべきか触れないべきか」、もしくは「できれば話したくないな」などと思うこともあるでしょう。
しかし、お互いに認知症の人だとわかっていれば、自分の症状について話すことについてもあまり抵抗がなくなりますよね。極端な話、自分の失敗談ですら同じ仲間の中であれば笑い話として披露できてしまうものなのかもしれません。
さまざまな情報を受け取れる
お互いの経験を聞けるわけですから、自分ひとりで実際に経験するよりも多くのことを学ぶことができるはずです。
「ここはいいよ」「あそこは危ないよ」などと話している内に外への興味もわいてきて、自然と普段も外出したい、という気持ちになるかもしれません。
心理的な不安の軽減、心のよりどころ
同じ仲間がいるというのはそれだけで不安をやわらげるものです。
そして、次第に「ここに来れば本音で話せるし、同じ悩みを分かち合える」と心のよりどころにもなりえるでしょう。
単純な娯楽として
みんなで世間話をする、音楽を聴く、歌をうたう、料理をする……というような活動をする、運動をすることは気持ちを明るくさせる娯楽になります。
「楽しいから来たい」
それだって十分な理由ですよね。
趣味の発見
人と一緒に活動をすることで、いつしかそれが趣味につながるかもしれません。何か熱中するものがあるというのは、脳の働きを活発にするので、認知症の人にとって非常に良いことであるといえるでしょう。
地域や社会との関わり
引きこもったままの生活を続けていると、自分(たち)がその地域や社会から孤立してしまっているような感覚におそわれることがあります。
孤独が不安を呼び、不安が孤独を呼ぶという悪循環を繰り返してしまいます。
「認知症カフェ」を訪れ、他人と会話をし、同じ空間を共有することで、その地域に社会に自分がいるんだ、と改めて認識することができます。
また、「認知症カフェ」では自分がコーヒーやお茶菓子を提供する側にまわることもできるため、他社への貢献を感じることもできます。
友人や仲間ができる
同じ悩みを共有する人たちと、交友関係を深め、情報の交換をしたり、お互いに安否確認をしたり、カフェの外でも同じ趣味を楽しんだり、などといったこともできます。
支援し(助け)てくれる人がいるという気づき
「認知症カフェ」では医療従事者やケアマネージャー、認知症サポーターなどの専門家、または民間のボランティアに出会うでしょう。
家にこもっているとどうしても孤独を感じ、「自分を助けてくれる人などいないのではないか」などと考えてしまいがちですが、カフェを訪れることで自分のことを喜んで助けてくれようとする彼らの存在に気づけるわけです。
専門家(医療従事者、ケアマネージャーなど)とのつながり
医療や介護の専門家とつながりを持つことは非常に重要で、「認知症カフェ」を継続的に訪れることで、適切な医療・行政のサービスについて提案してもらうことができるでしょう。
各種症状等の早期発見・診断
専門家はちょっとした違いや異変にも気づいてくれることがあるため、重症化しかねない兆候を早期に発見し、その後の適切な処置につなげることができるかもしれません。
また、顔を合わせ会話をすることが、心身の状態を把握するための診断にもなります。
生き生きとした生活が送れる
不安を取り除き、楽しみを得ることができるので、少なからず生き生きとした毎日の生活につながっていくことでしょう。
認知症の進行を遅らせる
人との触れ合いや、娯楽、刺激などを得ることによって、認知症の予防になったり、進行を遅らせる効果があったりするのではないかと考えられています。
主に認知症の人の家族が得られるメリット
家族同士の情報交換
認知症の人の家族を持つもの同士の有益な情報交換ができるかもしれません。
普段、自分は何の気なしにしていることも、他の家族からすれば「なるほど」と思うようなこともきっとあるでしょう。
家族の(心理的)負担軽減
「辛い思いをしているのは自分たちだけではないんだ」と感じられるだけでも、心がスッと楽になるのではないでしょうか。
家族の介護についての専門家への相談
「認知症カフェ」には医療・介護の専門家も参加するケースが多いため、今後認知症の人である家族をどのように介護していったらいいか、など相談に乗ってもらったり、アドバイスを求めたりすることができます。
認知症カフェの今後の発展について
新オレンジプランでは「認知症カフェの設置」を掲げているため、今後も広がりをみせていくでしょう。
2018年(平成30年)にはすべての市町村に「認知症地域支援推進員」が配置されます。これに伴い、多くの地域で認知症の人や家族が参加できる場が増えていくことが期待されています。
参考:
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/01_1.pdf
http://www.sakura-urban.jp/news/pdf/20130327.pdf
http://www.alzheimer.or.jp/webfile/cafe-web_0001.pdf