社内改革は、成果が出やすい小さなことから始めるといい


by 川鍋一朗 (経営者)


どちらかというと私は、いわゆる起業よりもマッキンゼーでのコンサルティングや日本交通の企業再生のキャリアが豊富です。なので、今回は企業における社内改革の話をしたいと思います。

企業には、すぐには結果が出ないけれども大事なことがあります。たとえば、私の会社では「事故防止」です。タクシーの運営事業者にとっては、安全が一番大事です。

しかし、安全に関する施策が実を結ぶまでにはある程度時間がかかります。こちらが望まなくても事故が起きてしまうこともあります。事故を起こさないようにあらゆることを一生懸命やって、「事故数が前年比1割減りました」となっても、事故には様々な要因が重なりますので、本当にその施策によって減ったのかがわかりません。

企業再生時の社内改革の仕事を通して、私は、社内改革においては、このような大事だけれども結果が見えづらいことよりも、まずはわかりやすく結果の出やすいものにフォーカスして施策を展開し、結果を出すことが大事だと気付きました。

企業再生時の社内改革は、結果を出すことが何よりも大事なのです。

何をやるかよりも、誰がやるか


社内改革は結局、何をやるかよりも誰がやるか、で決まります。「あの人がやるならなんとかなるだろう」と社員たちに思ってもらえるかが、ほぼすべてです。

たとえば、松下幸之助が書いた本と同じ内容を全然知らない人が書いたら「こんなの当たり前じゃん」と誰もが思うでしょう。つまり、松下幸之助が言っているから大事なのです。それは社内改革にも当てはまります。施策の切れ味よりも、誰がそれを言うかの方がはるかに大事なのです。

では、それはどういう人なのか。それは、結果を出している人です。単にそれだけなのです。

たとえば、あなたが社内改革のリーダーに抜擢されたとしましょう。しかし、社内改革を進めるにしても、一人でできる範囲というのは限られます。多くの人に手伝ってもらわないといけません。そのためにはまず「この人がやるなら絶対に大丈夫」と周囲に思ってもらう必要があります。

ではどうするか。それは、「あの人、この間のコピー代削減プロジェクトでコピー代を2割削減したよね」といったように、まずはわかりやすく、すぐ結果が出ることをやって周囲を巻き込んでいくのがよいでしょう。

そうやって、「あの人はできる」と思われた上で、「これもやりましょう」と言えば、周囲も「じゃあやってみようか」となるのです。

つまり、自分の信頼性を高めるのが最初にやることなのです。真面目に「これが事業にとってもっとも大事だ」という優先順位付けで施策に取り組んでしまうと、社内改革の場合は必ず失敗します。特に、社外のコンサルタントがクライアント企業に入って改革する場合、まず「こいつできるの?」というところからスタートするわけですから。

大事なことよりもわかりやすいことを、小さく数多く


今もし、私が社内改革としてまずやるとすれば、コスト削減です。前向きな施策で、かつ絶対に結果の出ることをわざと見つけてやるのです。

たとえば僕は、2014年5月、東京ハイヤー・タクシー協会の協会長に就任しましたが、そこでまずやったのは、すべての出金伝票を見ることでした。一枚一枚請求書を見ていると、名刺代5,000円の請求書などが出てきます。名刺が100枚で5,000円だと、高いですよね。今なら、クオリティを下げずにもっと安い名刺にすることもできる。そういう小さいことを一つひとつチェックしていくと、圧倒的にコスト削減ができるのです。

大事なことよりも結果が出ることを最初にやる、というのは、見方によってはずるいやり方に感じられるかもしれませんが、とても大事なのです。英語にも「Low Hanging Fruits」という言葉があります。果物のなる木があったら、とりあえず取りやすいところにあるものをとればいい。上の方にある大きくて美味しそうなものをわざわざとらなくても、近くのものを食べていれば美味しいし、何よりも先にその美味しさを知るのが大事ということなのです。そうすることで、まず変わっていくという実感が得られます。

事業立ち上げにもこの考え方は使える


これは社内改革だけでなく、事業立ち上げなどにも応用することができます。

事業立ち上げ時に僕がよくやるのは、2~3人ずつのプロジェクトを同時に10ぐらい走らせることです。やり始めて一カ月もすれば、どれがダメでどれがいいか大体わかります。ダメそうなプロジェクトは「ご苦労様でした!じゃあ、あちらのチームに合流しましょう」と解体し、プロジェクトを再構築していく。そして、最終事業を10のうち可能性のある3つに絞れれば、当たる確率は絶対に上がるはずです。真面目に「失敗しちゃいけない」と考えるより、もっとラフな10をやるのです。ダメそうなものは、すぐやめればいいのです。

しかし、なかには「全然ダメだったじゃないか!」と失敗したプロジェクトについて言ってくる人がいます。そういう人には「おっしゃる通り。本当に全然ダメでした。申しわけない」と言えばいい。そうすれば、みんなそれ以上は追求してきません。そこで「そんなことないよ。実はこういう意味があって…」なんて言いわけをしてはいけません。言いわけするとまた「いや、そんなこと言ったってさ」となってしまいます。素直に謝られると、人間それ以上は突っ込んでこないものです。

つまり、とにかくたくさんやることが重要ということです。10回打席に立てば絶対に2、3発は当たります。

そして、当たった施策を言いふらすのです。「これがこんなにうまくいったよ! ありがとう」「私がこれをやりました!」と、堂々と周りに言うのです。もう、しつこいまでに「これうまくいった」と周りに言いまくります。そうすると、一度ぐらい失敗しても必ず元に戻れます。

小さく成果を出す→小さくチャレンジする→小さく成功or失敗する。最初はとにかく小さくわかりやすくやることが大事です。

ポイントは、10ぐらいの数を同時にやることです。そして、可能性の高い3つぐらいに少しずつリソースを寄せていって、当たったものは周りに言う。こうするとすぐに成果が出るので、周囲からも「やれるじゃん」と思ってもらえるのです。いきなり事業でホームランは出ないので、このように少しずつ積み重ねるのが大事なのですね。

ここで私が言いたいのは、「大事なことよりもわかりやすいことをやる」「絶対に一撃必殺を狙わないようにする」ということです。これをやれば絶対に大丈夫だから全員でこれをやるぞ、というのはすごく危ないのです。やり始めたら全然違っていたということは、いっぱいあります。

一生懸命やるわけですから、同時に10やれば、確率論で2か3は絶対に当たります。ただ、どれがどのぐらい当たるかはよくわかりません。だとすると、研ぎ澄まされた一撃とか、研ぎ澄まされた3つよりも、ラフな10の方がいいのです。

とにかく、何か新しいことをやるときや社内を改革するときには、信頼が大事です。信頼を得るためには、とにかく一番早く、成果が出るものから取り掛かることをおすすめします。


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