4年前の東日本巨大地震では、ロボットが投入された。東京工大が作った「ヘビ」のような姿のロボットが、崩壊した建物の山を掘り返し、生存者を捜した。千葉工業大・東北大が共同で作った防災ロボット「Quince」は、建物の中を撮影した映像データを送ってきたが、欠陥も明らかになり、コントロールする人員も足りなかった。福島第一原子力発電所では、高濃度汚染水が12万トンもたまっており、残留放射能も極めて強力だったため、命を懸けた東京電力の職員ですら、近づくことができなかった。いずれも、最先端の「極限作業ロボット」が待たれたが、良い知らせはなかった。
「ロボット大国」日本は自尊心を捨て、米国防総省に支援を求めた。主に戦闘用に開発された米国のロボットが、日本に急派された。「Tホーク」「パックボット」といったロボットは、建物の残骸や階段を越えて原発の内部を撮影した。放射線や化学物質の流出量も測った。防護ドアやバルブを開け閉めすることもできた。「ウォリアー」「ドラゴンランナー」は、原発の中に入った。しかし、とりたてて成果はなかった。大人の背丈で設計された原発の内部で、人の膝くらいの高さの軍事用ロボットは、大して役に立たなかった。
すると国防総省の下にある国防高等研究計画局(DARPA)が、福島の惨事から1年がたった2012年、「ロボット工学チャレンジ(DRC)」プロジェクトをスタートさせた。まず「極めて危険な災害の状況」を想定した。「人間が遠隔操作して任務を遂行する人間大の地上ロボット」を比べてみようと提案した。賞金総額350万ドル(現在のレートで約4億3600万円)の「防災ロボット・ワールド・カップ」だ。仮想空間での大会と実物を使った予選を経て、先週末の決勝戦に至るまで、33カ月かけて全ての日程を終えた。
大会を制したのは、韓国のKAIST(韓国科学技術院)が作った人型ロボット「HUBO」だった。当初、HUBOの成績は中上位圏だったが、最終日に劇的な逆転勝利を収めた。フロリダの決戦会場は、福島第一原発の事故現場を模して作られた。出場したロボットも、二足歩行する人間大のロボットだった。「HUBO」は車両を運転し、防護ドアやバルブを閉め、壁に穴を開け、コンセントも差した。2本足で動き、階段も軽々と上った。
「HUBO」は「周辺環境に柔軟に対処した」という評価を受けた。産業ロボットや人工知能ロボットの面で遅れている韓国が、人型ロボットの分野で朗報をもたらしたのだ。DARPAは、旧ソ連のスプートニク衛星打ち上げに刺激され、1958年に米国がつくった機関だ。「米国の知らないうちに米国を驚かせる技術が開発されることを防ぐ」と定款に書いてある。DARPAは、こうしたプロジェクトを59組も進めている。韓国政府が進めている「国民安全ロボットプロジェクト」がどれくらいまで来ているのか、心配になる。