根岸拓朗、鹿野幹男、編集委員・大月規義
2015年6月8日09時58分
政府と東京電力は7日、福島第一原発事故で避難した商工業者の損害賠償について、2016年度までの2年分をまとめて払い、終了する方針を明らかにした。賠償に頼らなくても自立した経営ができるよう、今後2年で支援策を集中させる。実際自立できるのか、地元は困惑している。
■政府の方針説明に首長らも慎重
福島市で開かれた福島県の協議会で、東電の広瀬直己社長と経済産業省の高木陽介副大臣が、被災自治体の首長や商工業者の代表らに方針を説明した。営業損害を受けている約8千の事業者には事故前の利益を今後2年分まとめて払う。居住制限区域などの避難者への慰謝料も3年分まとめて支払い、打ち切る。
一方、政府は、商工業者の自立支援策などを近く閣議決定する。自立を進めて、被害者に支払う賠償額を圧縮するのが狙いだ。
官民合同で支援チームをつくり、事業者を個別訪問する。事業再開した事業主には、賠償金による設備投資などで業績回復を目指す。再開や転業ができないときは、転職先を見つけて収入を得る手段を考える。県によると、避難事業者の半数は今も再開していない。
協議会に出席した、被災自治体の首長からは慎重な意見が相次いだ。福島第一原発があり、ほとんどが帰還困難区域の大熊町では、多くの商工業者は避難先で事業を再開するしかなく、新たな顧客を見つけなければならない。渡辺利綱町長は「事業再建に向け、個別の状況に応じた手厚い支援をお願いしたい」と話した。
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