無類の読書好きが、本は勉強にならないというのはなぜですか?
Growing Reed On Air 2015/05/31
Guest 成毛 眞(書評家、文筆家)
岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、Growing reed。この番組では、毎週ひとつのテーマの専門家をお呼びして徹底的に質問。番組の終わりには、考える葦として僕も皆さんと一緒に成長したいと思います。
さて、今夜のゲストは、書評家、文筆家の成毛 眞(なるけまこと)さんです。若干30代半ばでマイクロソフト日本法人社長に就任。Windows95の大ヒットからパソコンが特別な物ではなくなる、そんな時代を作ってこられた方です。そんなITの、ど真ん中から一気に転身。現在は書評家として日本最大級の書評サイトを運営されたり、文筆家として様々なジャンルにわたって書くことでも表現をされています。今夜は、様々な顔を持つ成毛さんに、今一番興味のあること、これから僕たちに伝えたいことをじっくり伺っていきたいと思います。 J-WAVE Growing reed、新しい一週間最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください。」
* * *
岡田「あの、成毛さんは、すごいとこに勤めて…いたのに、なんでいきなり辞めたんですか?」
成毛「飽きたんです」
岡田「(笑)」
成毛「(^^)」
岡田「飽きたんですか?」
成毛「あの…」
岡田「飽きたんですか。だって誰もが羨む、マイクロソフトのトップに…日本の」
成毛「ええ」
岡田「トップになって…30代半ばで」
成毛「そうですね」
岡田「誰もが羨む、で…Windows95を日本に普及させるんだって」
成毛「ええ」
岡田「立て役者として、やってこられて。これからもう、バリバリじゃないですか」
成毛「ね、Windows95と98の、あの大騒ぎがあって、」
岡田「はい、あれ、すごかったですよね」
成毛「辞めたのが2000年ですから」
岡田「はい」
成毛「もうほんとに絶好調の時ですよね」
岡田「なんで…
」
成毛「誰が考えたって不祥事があったんじゃないかって思ってるんですけど(笑)」
岡田「(笑)…何か問題が…あったわけではないんですよね?」
成毛「何もないんです。あの…むしろほんとに…そうですね、記者会見の時に記者が300人ぐらいと、」
岡田「はい」
成毛「テレビカメラが10台以上入ったんですけどね、」
岡田「うん」
成毛「なんで辞めんですか?って質問があって…最初にやるわけですよね」
岡田「はい」
成毛「最初に…最初にっていうか、あの…もう飽きたんですと。」
岡田「うん…
ッハ…言ったんですか?」
成毛「会場がシーンとしまして…」
岡田「その場で…飽きましたって…」
成毛「言いました言いました」
岡田「へぇー。正直…正直って言ったらヘンですけど…」
成毛「あの…でも、それだけ注目されてると、」
岡田「はい」
成毛「むしろそういう人がいても、いいんだっていうふうに…ね、若い人は思ってもいいんじゃないかって思ったんですよ(^^)」
岡田「(笑)…えぇぇ。いや、でも誰もが羨む…これからも、ほんとに…ま、ヘンな言い方したら…稼げる…時じゃないですか」
成毛「ところが、辞めてから一カ月後ぐらいですかね、マイクロソフトの株価が半分になっちゃったんですね」
岡田「うーん…」
成毛「いい時に辞めたといえば良い時に辞めたわけで(笑)」
岡田「じ…自分のせいじゃないんですか?(笑)」
成毛「(笑)」
岡田「社長が辞めたっていうアレで…株価が下がったわけじゃなくてですか?」
成毛「や、なんかね、あの…やっぱりITバブルの崩壊とかっていうの、当時ね」
岡田「はいはい」
成毛「言われてたじゃないですか」
岡田「はいはい」
成毛「だから、おそらく、その飽きたっていうのも、なんとなくニオイ感じたんじゃないでしょうかね」
岡田「…
ッハ…」
成毛「もうね(笑)…死臭を嗅いだ。みたいなところがあって。」
岡田「
ッハハハハ……すごいスね…な、何者かが…もう…分からないというか」
成毛「ただまぁ、なんかね、アメリカの本社のほうも、幹部がかなり辞め始めた時期なんですね」
岡田「うーん」
成毛「つまりその…マイクロソフトっていう会社は、それまではこう…家庭用のコンピュータに力を入れてたのが、2000年ぐらいからビジネス用っていうんですかね、企業用のコンピュータに力を入れてきたんで、」
岡田「はい」
成毛「その意味じゃ、なんかこう…家庭用のコンピュータを一所懸命作ってた連中は、つまんなくなったっていう…」
岡田「へぇ〜」
成毛「そういうところもありますよね」
岡田「もともとそうなんですか?大学の時とかから…」
成毛「いや、もう大学の時は、そうですね…あの…食うためにどっかに勤めなきゃいけないよねって思ってただけで、」
岡田「はい」
成毛「コンピュータには全然興味なかったですね」
岡田「へぇ──」
成毛「なので、最初に入った会社が、あの…日米合弁の、車の部品を作ってる会社に入りましたね」
岡田「うーん…そっから…どういう流れでマイクロソフトの社長に…?」
成毛「そうそう…それで3年後に、大阪営業所長になれって言われて、」
岡田「はい」
成毛「え?大阪営業所とかないじゃん、とか言ったら、いや、お前が最初の所長だよ。とか言われてですね、喜んで行ったんですけど、」
岡田「はい」
成毛「大阪の…あの、何て言うんですかね、水に合わなかったですね」
岡田「
っははは…」
成毛「たったそれだけの理由で、これは辞めようと思って」
岡田「はい」
成毛「それでまぁ、本が好きだったんで、出版社に勤めようと思ったんだけど、」
岡田「うんうん」
成毛「まぁ、パソコンも当時ね、出て来たばっかりだったんで、」
岡田「はい」
成毛「アスキー出版という」
岡田「はい、アスキー」
成毛「会社に入ったんですね」
岡田「はい」
成毛「これからもう…次の日から来てくれって言うんで、編集者になれるぞ!と思ったんだけど、」
岡田「はい」
成毛「次の日から、アスキーマイクロソフトっていう会社があるんで、そこに出向しろって言われましたけどね、」
岡田「うん」
成毛「結局、何がなんだか分からないまま、今に至るという…」
岡田「…
っはははは、」
成毛「そういう感じなんです
」
岡田「そのマイクロソフトの会社に行って、そのままやってたら…」
成毛「あれよあれよという間に、入社順で社長になったっていう…感じですね」
岡田「…(笑)、そんなこたない
…そんなことはないでしょ…だって…」
成毛「あのね…」
岡田「な、何が…何が強みなんですか?」
成毛「あの…」
岡田「今、お聞きしてる限りでは、もう面倒くさいとか、疲れたとか(笑)」
成毛「(笑)」
岡田「水が合わないっていう感じでしか…聞こえてこないですけど
」
成毛「なんですかね、強みは運じゃないですかね」
岡田「運ですか?」
成毛「うん、あの…」
岡田「でも、仕事が出来るわけですよね?めちゃくちゃ仕事が…出来る、」
成毛「…や、仕事はあんまりしてませんでした」
岡田「判断力が…」
成毛「…からね。」
岡田「(笑)。判断力が凄い。」
成毛「いや、全部部下に任せる…」
岡田「ああ」
成毛「んですよ」
岡田「はい」
成毛「良きに計らえってやってるわけです」
岡田「
」
成毛「だからマイクロソフトの社長時代の社内のあだ名は、ずっと“殿”です」
岡田「へぇ──」
成毛「殿っていうのは、あだ名じゃなくて、実際に入って来て、社長室に人が。で、皆 『殿!』ってやってるわけですよ」
岡田「はい」
成毛「俺、官兵衛かと思いましたよ(笑)」
岡田「
ッハハハハ…。へぇー、すごいですね。でも、そう言われる、やっぱりなんか…人格者…」
成毛「いや、そういうんじゃなくて、なんでもかんでも良きに計らえになっちゃうんで、とりあえず報告はしとくけど…殿はどうせ何も言わないで…」
岡田「殿って言っとけば…おお、なんだって機嫌が良いから(笑)」
成毛「よし、飲みに行くぞって感じですからね(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「夜のほうが長いわけですから(^^)」
岡田「へぇー(^^)」
* * *
成毛「だからそういう時代なんですね」
岡田「そういう時代
…そういう時代なんですかねぇ…?何が強みなんですか…や、何か隠してるんだと思うんですよ。」
成毛「いや…そう…」
岡田「成毛さんは、もう60になられる…」
成毛「ええ」
岡田「ぐらいですよね。だからなんかこう…ITが来た時の、やっぱり走りの…世代の…」
成毛「なんかこう…それをね、読んで行ったと思うじゃないですか」
岡田「はい」
成毛「全然読んではいないわけですから。本人は、出版社に勤めてると思ったら、」
岡田「(笑)」
成毛「次の日に、マイクロソフトっていう会社に出向しろと」
岡田「(笑)」
成毛「そのマイクロソフトは何ですか?って聞いたわけですよ。何をやってる会社ですか?と。知らないで入ってるわけですから。」
岡田「へぇー」
成毛「で、入ったら、あの…入社順位が3番目かなんかだったんです」
岡田「うん」
成毛「ですから、こう…」
岡田「始まりの…創成期に…」
成毛「順番で社長になったっていう」
岡田「へぇ──」
成毛「ぐらいの感じですよね」
岡田「25年前…」
成毛「そう……?」
岡田「何年前ですか…25年…30年ぐらい」
成毛「そうですね」
岡田「創成期ですよね」
成毛「80年です。80年に入ったんですからね」
岡田「へぇーっ、僕が生まれた年です」
成毛「ぅワオッ!」
岡田「
ッハハ」
成毛「ちょっと…」
岡田「僕が生まれた年から働き…すごいですね、やっぱりでも。その時…その時、でもPCとかっていうのは、そんなに、普及は全然してない時ですよね?やっぱり」
成毛「そうですね。8ビット…っていう」
岡田「はい、昔の…」
成毛「電卓に毛が生えたようなもんですよね」
岡田「ぐらいの…」
成毛「だから何にも出来なかった、PCでは。仕事も出来ないし、ワープロも出来ないっていう時代でしたよね」
岡田「そこからどんどん、技術が開発されて、」
成毛「ええ」
岡田「何を引っ張って来られたんですか?」
成毛「???え?何引っ張って…?」
岡田「いや、だって
…あの…社員としてっていうか、その…」
成毛「あ、いやいや、あのね、あの…マイクロソフトの社長ってよく言われるんですけど、」
岡田「うん」
成毛「僕ね、それは…なんかどっか間違いがあると思っているんです。つまり、うーん…」
岡田「でも社長だったわけで…」
成毛「ナントカ自動車とか、ナントカ銀行の大阪支店長のことを社長って言わないじゃないですか。」
岡田「はい」
成毛「もしくは、ニューヨーク支店長のことを社長って言わないわけですよね」
岡田「…うん」
成毛「だけどなぜか外資系が日本に来て、子会社を作ると、そこの子会社の責任者を社長って呼んで、」
岡田「うん」
成毛「なんか偉そうなことをしているように見えちゃうんですよね」
岡田「うん…」
成毛「実際には支店長なんですよ」
岡田「うん」
成毛「つまり日本を統括してる営業所長みたいなもんですから」
岡田「うん」
成毛「だからその意味では、こう…自分で何かデシジョンするとか、自分で新しい商品を作るとか、製品を作るっていうことはないんですよね」
岡田「うーん」
成毛「もう本社が作った製品を日本に…販売をすると。」
岡田「どうやって広めるか…はい…」
成毛「ええ。マーケティングが主たる業務になっちゃいますよね」
岡田「でも、マーケティングとして、あんだけのブームを…ブームって言っていいブームだったとは思うんですよ。95…」
成毛「そうですよねぇ」
岡田「Windows95、98。皆 Windowsでしたから。」
成毛「もう随分…マイクロソフトの本社と喧嘩しましたけどね。あの、マイクロソフト本社は、日本語版と英語版を同時に出荷したいんですね」
岡田「はい」
成毛「カッコイイじゃないですか。世界同時発売っていうのは。」
岡田「うん」
成毛「今…Appleなんかみんなそうですよね。で、僕はその…僕はですね、日本語版だけを3日ぐらい遅らせて出荷させてくれって言ってたんです」
岡田「はい。その意図は?」
成毛「そうすると、アメリカで大騒ぎになっているわけですよね、Windows95で。」
岡田「はいはい、はい。」
成毛「その大騒ぎの様子を、メディアが伝えるじゃないですか。アメリカじゃあ徹夜で人が並んでるぞとか言って、ワーワーやってるわけですよね」
岡田「うん。販売意欲を煽るための…」
成毛「ねぇ。それで3日後に日本語版を出したら、」
岡田「はい」
成毛「売れ行き、さらに良くなるよねという」
岡田「うんうん」
成毛「そんなもんですよね。つまり、こう…ただでコマーシャル出てイイじゃないっていう…」
岡田「(笑)」
成毛「それをマーケティングって呼んでいいかどうかっていうね(笑)」
岡田「いやいや(笑)、マーケティングですよ。戦略ですから」
成毛「ほんと大丈夫か?っていう感じなんです」
岡田「(笑)。そういうのをやってきたってことですよね」
成毛「やってきた…その一件に関しては、ビル・ゲイツと喧嘩しましたね。ヤツはもう同時出荷したいわけで、」
岡田「うん」
成毛「でも同時出荷したくないと。」
岡田「うん」
成毛「コマーシャルも打ちたくないと。」
岡田「うん」
成毛「お金使いたくないっ。」
岡田「うん…お金使えない…」
成毛「で…ニュースでガンガンやってもらって、アメリカの様子を。」
岡田「はい」
成毛「一週間ほど、もう毎日のごとくやってもらって」
岡田「はい」
成毛「それでやると売れるよね。っていう…その程度のことですからね、考えてることは(笑)」
岡田「(笑)…いやいや
それが大事なことですからね。戦略で、販売の…あれっていうのは……それ、一番ですか?それ、あの…」
成毛「そのぐらいしかあんまり覚えてないんですよ(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「本当のこと言うと
」
岡田「なんで…ほんとに飽きちゃったんですか?飽きて…」
成毛「飽きますよ…」
岡田「誰もが羨むポジションから転身。飽きたからって言って…」
成毛「あの…マイクロソフトの日本の社長をやると、次のポジションって、もうアメリカ本社に行くしかないんですよね」
岡田「はい」
成毛「アメリカに行きたくないんですよ、僕。その…住みたくないというか」
岡田「はい…水が合わない可能性が(笑)」
成毛「水が合わない。サンマのね(^^)、」
岡田「(笑)」
成毛「あの美味しいサンマ、食えないんじゃないかとか、いろいろ心配事が頭ン中を駆け巡って、」
岡田「へぇー」
成毛「当時はねぇ、寿司屋なんかもあんまり無かったですからねぇ」
岡田「はい。…で辞めた(笑)」
成毛「アメリカに行くぐらいなら辞めてやろうっていう」
岡田「(笑)」
* * *
岡田「めちゃめちゃ本を読むっていうのは…有名ですけどね」
成毛「えっとね、小学校の頃から本は読んでたんですね」
岡田「うんうん」
成毛「ただあの…本もね、何かを勉強するために読むようなことはないんで、」
岡田「うん」
成毛「面白いから読んでるだけなんですよ。ですから他の人が、サッカーやったり、音楽聴いたり、映画観たりっていうことと全く同じ」
岡田「うーん」
成毛「道楽というか。何て言うのかな…趣味としての、本当に趣味としての読書なんですね」
岡田「う〜ん」
成毛「逆に言うと、本ばかり読んでるんで、その類の映画とかスポーツとかスポーツ観戦とか、音楽とかも一切に近いぐらい触らないですね」
岡田「今どのぐらい本を読まれてるんですか?」
成毛「ところがこれが、あの…3年ぐらいで、書評をプロのようにして書くようになっちゃったんで、」
岡田「はい」
成毛「あれ、趣味で本を読んでるうちは楽しいんですよね」
岡田「
」
成毛「プロになると(笑)、楽しくないじゃんっていうんで、」
岡田「そうですよね…」
成毛「最近読んでないですね、あんまり(笑)」
岡田「なんでですか(笑)」
成毛「どうしたんだろう
」
岡田「書評サイト『HONZ』の代表」
成毛「ええ」
岡田「ですよね?本好きだから、書評サイトを作ろうっていう…」
成毛「そうですね」
岡田「楽しいことしようっていう感じですか?でも仕事にしちゃうと楽しくなくなるっていう」
成毛「そうですよね。やっちゃったら失敗したっていう…」
岡田「(笑)」
成毛「失敗したっていうのは、逆に『HONZ』が上手く行きすぎちゃったんで、」
岡田「へぇー」
成毛「個人的には、あら失敗したね、って。シャレでやってるうちは良かったんだけど、」
岡田「うん」
成毛「シャレじゃなくなっちゃって、毎日、何万人もの人が見るようになっちゃうわけですよね」
岡田「はい。上手くいっちゃって」
成毛「ね。そうすると、下手な新聞書評なんかよりも読まれるわけで」
岡田「はい」
成毛「本の売れ行きに影響を与えるようになってきちゃうわけですよね」
岡田「はいはい」
成毛「そうすると、これはもしかして仕事なんじゃないかと(笑)」
岡田「(笑)、いや仕事ですよ。立ち上げた時から…仕事じゃないですか
」
成毛「仕事すんの、キライなんですよ、ほんとにこう…」
岡田「
ッハハハハハ」
成毛「遊びでやってるうちは、何でもいいんだけど。ほんとにだから厳しいですよねぇ…」
岡田「
大変ですか?」
成毛「大変ですねぇ…」
岡田「大変ですか?今は。でも、本はほんとに…捨てないんですよね?」
成毛「捨てないですね」
岡田「読まれた本は」
成毛「全部取ってありますね」
岡田「え、置いとけない…僕は、ちょっと処分しちゃうんですよ、置いとけないないので。置いといたら家が凄いことになっちゃうので」
成毛「床抜けたりしますからね」
岡田「重いですからね。全部…どうされてるんですか?」
成毛「そのために家作りました」
岡田「…へぇ──」
成毛「地下に書庫が入るようなものを作ってですね」
岡田「はい」
成毛「そこで…そうですね…万単位で持ってるんでしょうね、きっと。でももう数を数えるのも止めちゃいましたからね」
岡田「ご家族には怒られないんですか?」
成毛「んー…ま、それで食ってるようなもんなんで、」
岡田「ああ、まぁ…」
成毛「あの…家族は、黙ってますけど。でももう、今も本だらけですからね。あの…本の中で、ラーメン啜ってるっていう凄い光景になってますよね、今日の昼も(笑)」
岡田「(笑)、でもそれが幸せ…一番幸せな瞬間っていうのは、どういうときなんですか?」
成毛「ちょっと前までは、本を読んでるときだったんですけどね。今はなんか…さっきの、本が趣味じゃなくて仕事になっちゃったんで、」
岡田「はい」
成毛「これから幸せを見つけなきゃいけないね。っていうふうに…(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「なんかね、思い始めてるんですけど(笑)」
岡田「(笑)…ちょっと前までは、本に囲まれて、自分が集めた本に囲まれて、静かに本を読むのが…」
成毛「そう…あっ、僕ね、静かに本を読まないんですよ。テレビつけっぱなしで読んでるんです」
岡田「へぇー」
成毛「下手すると、テレビ2台つけっぱなし状態で読んでるっていう」
岡田「いろんな音が鳴ってないと…」
成毛「鳴ってないとダメですねぇ」
岡田「へぇー」
成毛「なので、その状態で、しかもソファーで寝転がって読んでいるのに、無情の幸せを感じますから」
岡田「んー…」
成毛「それであとポップコーンでも食おうもんなら、もうね(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「絵に描いたような自堕落な奴っていう」
岡田「(笑)」
成毛「そうなっちゃうんですけど」
岡田「それが、今は…今は、じゃあ幸せは分からない…探してる」
成毛「探してるんですよ。自分探しの旅に…あの、もう還暦になりそうなんで、」
岡田「(笑)」
成毛「これから出ようかと思っているんですけどね(笑)」
岡田「いいですね(^^)、いろんなことをやっていくけど…飽きたり、仕事になって上手くいくと…面白くなくなったり…」
成毛「そうですよねぇ、なんかねぇ、人から言われるとか、義務感があるようなものとか…」
岡田「好きで発信しているのはいいけど、期待されて…」
成毛「そういうことですねぇ…。なんでもかんでもフリーハンドでいたいんですよね、あらゆることに。」
岡田「へぇー…」
成毛「うん。自分からも束縛されたくないみたいなところがあって」
岡田「自分からも?」
成毛「自分で決めたくないっていうかね、こう…」
岡田「うーん…」
成毛「自分の人生、これからこうやろうとか」
岡田「うん」
成毛「だから目標とか持ったことも一回もないですし。」
岡田「うん」
成毛「自分の本にも『目標は持つな』って書いてますからね」
岡田「うーん…」
成毛「それを読んだ人が、3分の1ぐらいは、なんか納得するんだけど、3分の2は、こいつ少しおかしいんじゃないかっていうんで(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「賛否両論です」
岡田「大体、逆ですからね、あの…目標を持って、」
成毛「そうそうそう」
岡田「立てて、」
成毛「ええ」
岡田「着実に」
成毛「そうですよね」
岡田「道を進んで行きましょう。みたいな…」
成毛「『努力はするな』って書いてますから、自分の本には」
岡田「何なんですかねぇ…」
成毛「だって大変じゃんっていう…理由は、大変だからっていう理由ですから」
岡田「な…何なんですかね」
成毛「何でしょうね…」
岡田「寅さん的なことですかね?…(笑)」
成毛「あ、近いかもしれないですね」
岡田「何なんですか?楽しんで…本とかもいっぱい…ね、なんかでも…楽しそうなことばっかり…『メガ!:巨大技術の現場へ、ゴー』っていうのを…」
成毛「最近の…新潮社から出した本で。フルカラーの本なんですけどね。あの…東京の地下のトンネルの中の工事現場から、ジュネーブにある、人類が作り出した最大の機械っていうか…実験装置ですよね、ヒッグス粒子を発見した」
岡田「はい」
成毛「そこまで行って。結局ね、24箇所。回りましたね」
岡田「うーん。最新の設備とか、施設とかそういうのをこう…」
成毛「そうですね、巨大な装置…もしくは、最先端科学」
岡田「うん」
成毛「を見に行くという。で、ただ見に行くだけなんですよ」
岡田「(笑)」
成毛「深くは理解しなくて結構だっていう(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「その辺がね、こう…今までにはない本だって言われてますけどね(笑)」
岡田「(笑)。いいですね。ただ見に行く…でも男心には…あ、これ…たまらない本ですけどね」
成毛「たまらないですよね」
岡田「男心には…(笑)」
成毛「ここで働いてる人達の、その男っぽさ…ま、女性も含めてなんですけどね、」
岡田「うん」
成毛「っていうのが、またたまらないですね」
岡田「う──ん…」
成毛「自分にはない、ほんとに命懸けでやってる姿を見て、感動したりするわけで、」
岡田「うーん…」
成毛「やっぱり良いものを今日見ちゃったなと思いながら帰って来るんですよ」
岡田「いいですねぇ…」
成毛「で、自分はって振り返ると、やっぱり他のとこ行こうとか、次 飲みに行こうか、みたいなそういう自堕落な生活にやっぱりなっちゃうんですけどね」
岡田「これは、ご自分でやりたいと思ってやられたんですか?」
成毛「そうです。企画を…ある週刊誌に持ち込んで、」
岡田「うん」
成毛「で、連載をして」
岡田「うーん」
成毛「その連載を開始するところから、単行本の編集者がついて。ま、このような形にしようと、最初から決めて作りましたよね」
岡田「ああ…最初から決めて、こういうふうにしたいから、どう動くかみたいな…」
成毛「本を書いてるっていうよりも、本を作ってる…プロデューサーの立場のほうが近いですね」
岡田「うーん」
成毛「どっちかって言うと」
岡田「全部プロデュースですか?今までやってきたものは。」
成毛「えーとね…」
岡田「ご自身の中では」
成毛「全部でもないんですけどね…4、5冊がプロデュースの範囲内ですね、きっと」
岡田「うーん…」
成毛「自分でこれを作ろうという。残りは、編集者からのこう…なんて言うんですかね…オファーというか…こういうの一冊書きませんか?というのを受けて書いてますけどね」
岡田「人生プロデュースは上手くいってる感じですか?今まで。惜しいとは思わなかったんですか?その…マイクロソフトの社長を辞めるとかっていうときも、今はその…ポジションがなくなるっていうことに対して、怖いって思う人って多いと思うんですよね。その…今、安定のある場所だったりとか、自分から手放すっていうのは、なかなか…」
成毛「でも、辞めてつくづく良かったんですよねぇ…と思います」
岡田「うーん」
成毛「何しろ、一応、毎日会社に行かなきゃいけないじゃないですか」
岡田「はい」
成毛「恐ろしいことだなと思いますよね」
岡田「
ッハハ…いや、でも大抵の人はそれをやって、頑張って…」
成毛「そうですよね(笑)」
岡田「(笑)…いますけどね」
成毛「ええ…」
岡田「大抵の人は…」
成毛「大抵の人はそうですよね。その…マイクロソフトを辞めて、作った投資会社の中でも、結局二年後か三年後ぐらいに、あの…FF11っていうネットワークゲームにハマっちゃって…」
岡田「うん…ファイナルファンタジーの…?」
成毛「ファイナルファンタジーです。」
岡田「ああ」
成毛「二年間ずっと籠ってたんです、家に。」
岡田「
」
成毛「そうすると、向こうから熊みたいな奴が歩いて来るんですね、ゲームの画面の中でですよ」
岡田「はい」
成毛「で、ハイ!とか言って…で、あの…誰々さんから電話ですっていうメッセージが来て、」
岡田「
」
成毛「ゲームの中で(笑)、つまり電話しても…」
岡田「あー」
成毛「取らないんで」
岡田「はい。あ、ゲームの中から」
成毛「ゲームの中からわざわざ…そいつはしょうがないから、僕にメッセージを伝えにゲームのキャラになってやって来るんです」
岡田「
ハハハハッ」
成毛「そろそろ会議ですとか言ってですね。で、そいつがまたハマっちゃったんですけど(笑)」
岡田「戻って…(笑)」
成毛「戻って来ない(笑)…そろそろ…地上は怖くないよとか言いながら…そろそろ戻っておいで、みたいな(笑)」
岡田「(笑)…いいですね。いいっていうか…なんか…」
成毛「人生一回きりですからね」
岡田「(笑)…そうですけど
」
成毛「好きなことやらないと(^^)」
* * *
岡田「なにで…や、何が凄くて…普通はでも、そういうことをやってたら、あれですよね?ま、ヘンな言い方したら…見放されちゃいますよね?そんなゲームのこう…会社の人…反乱が起きてもおかしくないじゃないですか」
成毛「ね。ところが、」
岡田「首にしろとか」
成毛「それを防ぐために、ファイナルファンタジーを作ってる会社の、社外役員やってたんです、ついでに。」
岡田「…(笑)」
成毛「そしたら文句言われないだろうっていう…社外役員としての義務として…」
岡田「頭良いのか(笑)…」
成毛「ゲームのチェックをするっていう(笑)」
岡田「頭良いのかなんなのか…よく分からないんですけど
…あ、執行役員みたいなのをやって、」
成毛「そうそう。やって。」
岡田「それ(ゲーム)をやってる理由を、」
成毛「つけたんです」
岡田「つけた…ぁぁ…」
成毛「周り…」
岡田「文句言われない…」
成毛「家族とか全員に、これは、」
岡田「仕事なんだと」
成毛「スクウェア・エニックスの社外役員としての仕事なんであると」
岡田「はい」
成毛「文句を言ってもらっては困る!」
岡田「
」
成毛「皆、なんかヘンだなとは思ってたと思う」
岡田「頭いいのか
なんなのか…分からない(笑)。や、ほんとのこと教えてくださいよ」
成毛「…」
岡田「本当は何ですか?本当ですか?それ。本当の…」
成毛「本当ですよ、ホント
」
岡田「今ちゃんと仕事してない人になってますよ」
成毛「あの、ちゃんと仕事をする気、全然ないんですよ、もう。あの、もうっていうか…大学時代から。何しろ、一番最初に入った会社なんかも、勤める気、全然無いわけですから。だけど、母親から父親から、自分で金稼げって言われて、どうしようかと思って。就活したことがないんですよ…就活って言うんですか…それで、今の嫁さん…当時の彼女に、どっか勤めないとマズイらしいんだ、俺。っていう話をしてたんですよ。そしたら、その嫁さんが通っている英会話学校の校長先生が、たまにガソリンを入れに行くガソリンスタンドの、さらにそのガソリンスタンドのお客さんが、人を探していると、新卒を。」
岡田「うん」
成毛「あ、良い話だなつって、そいでそこに入ったんです。そこだけ受けたんです、僕。その会社だけを。」
岡田「へぇー…」
成毛「ですから、あの…面接しに行って驚きましたよね、向こうも驚いてますけど、こっちもね…じゃあ、いつから来てくれますか?って言われて、俺アルバイトかと思いましたけどね、面接で言われて(笑)」
岡田「へぇー…」
成毛「それで入った会社で、三年後に大阪に行って、」
岡田「はい」
成毛「大阪の水が合わなくてと。いうことですから…物事をまともに…真面目に考えたこと、一回もないですね」
岡田「
いや…若者に、あの…何かお言葉ありますか?みたいなのを訊こうと思ってたんですけど…」
成毛「…あのね、今の若者 真面目過ぎちゃうじゃないですか」
岡田「ん…はい」
成毛「なんか一生懸命ね、こう…だから全員が真面目になっちゃうのが怖いなって思いますよね」
岡田「うん」
成毛「僕みたいな人がいて、社会とか世代っていうのが上手く回るんだと思うんですよ」
岡田「うーん」
成毛「ヘンな奴がいないと、やっぱりマズイんじゃないかと。」
岡田「(笑)」
成毛「全員真面目とか、全員ギンギンにやる気満々とか、もう行くぞモードに入っちゃうっていうのはちょっと…」
岡田「でも…」
成毛「辛いですよ、ちょっと」
岡田「難しいじゃないですか、いい加減と良い加減っていうのは違うじゃないですか。ま、言葉の綾ですけど。その…どこかちゃんとしている…(笑)とこがあるわけですよね?…無いとでも…やってけないと思うし…マイクロソフトの社長もやってけないだろうし、その後も全部こう…成功してこないとは思うんですけど、そのなんか…真面目じゃなくていいけど、いい加減じゃ悪いわけじゃないですか」
成毛「そうそう、いい加減じゃマズイんですよね。だから、一つだけあるとしたら、結果を出す…もの凄い労力を少なくして、頑張らないで、結果だけ残せるかっていう…」
岡田「それは何ですか?そのコツはなんですか?」
成毛「他のことをしないことだと思いますよ。その…何て言うんですかね…例えば、今期いくらいくらの売り上げをあげたいと。いうふうにアメリカの本社が言ってきました」
岡田「はい」
成毛「売り上げなのか利益なのか、どっちかハッキリせい!と言うと、アメリカ人のことですから、や…じゃあ今年は利益より売り上げをまず上げようと、目標を狭くしちゃうんですよね」
岡田「うん」
成毛「それだけを達成するのは、そんなに難しくなかったりするんだと思うんです」
岡田「うん」
成毛「だからそれと同じように、他のことも…生きる術も含めて、できるだけピンポイントで目標というか、達成可能な…なんて言うんですかね、しかも、あとから達成したかどうか分かるような、」
岡田「うん」
成毛「そういうその…身近な目標みたいなやつを持つっていうのは、いいのかもしれませんね。それはやってましたね」
岡田「身近な目標。へぇー…なんかご自身で、それだけ本を読まれてきたとかっていうのは、役に立ってたりとかっていう実感はあるんですか?」
成毛「なんかあの…本を読んだことは役に立ってることは間違いないと思うんですが、言いたくないんですよ、本は役に立つということを(笑)」
岡田「なんで(笑)」
成毛「つまり…結果的に役に立っているっていう感じ…
」
岡田「いやいや、書評サイトの代表もやられているし、本も発売されてるし、」
成毛「ね」
岡田「本は大事だっていうのは…」
成毛「いや、言ってないですよ、僕一回も。本は大事だって(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「だからどの書評にも、あの…本にも書いてなくて、」
岡田「(笑)」
成毛「本は楽しんで読むべきであると。」
岡田「勉強するためではないと」
成毛「ええ。デスメタを聴く人に、デスメタはあなたの仕事にどれほど役に立ってますか?って訊くと、ええ !?って驚くじゃないですか。それと多分、同じことだと思ってるんです」
岡田「うん」
成毛「なので、結果的に何か役に立つことはあるかもしれないけど、役に立つために本を読むっていうのは、どうも本末転倒のような気がしますよね」
岡田「うーん…。もう娯楽として、」
成毛「うん」
岡田「読むのが、」
成毛「ええ」
岡田「よくて。楽しいから読むっていうのが一番…」
成毛「そうですね」
岡田「正しくて。」
成毛「なので、自分が読みたい本、面白いと思う本だけを読むべきだというのが、持論なんですけどね」
岡田「うん…あんまり勉強のために読んでいると、ロクなことはない…」
成毛「やんなっちゃいますよね」
岡田「
」
成毛「音楽家…ミュージシャンが、勉強のためになるからといってクラシックを朝から晩まで聴きまくって、で、あなたの音楽の傾向はなんですか?デスメタですって…ありえないじゃないですか(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「でも、間違いなく楽典を考えたら、やるべきですよね、きっと。クラシックを。楽典ぐらいは調べるべきで。」
岡田「うん」
成毛「だけど、それってちょっと違いませんかと。」
岡田「うん」
成毛「いうふうに思いますよね」
岡田「まぁ、なんか…たくさんの人にこう…影響を与えたりとか、いろんなことを発信している成毛さんですけれども、成毛さんにとって、もう…60に近くなってきて、過ごしてきた時間というか…どういう存在ですか?」
成毛「…もう時間があの…今、その…とにかく時間が欲しいですよね」
岡田「うーん」
成毛「結局その…なんて言うんですかね、僕にとってみると…過去っていうのは、あんまり興味がない。自分の過去も、あらゆるものの過去っていうのは、興味がないんですね」
岡田「うーん」
成毛「一分前であれ、百年前であれ(^^)」
岡田「うん」
成毛「歴史は別なんですけどね。なので、その…これからの時間のほうが遥かに僕にとって重要。」
岡田「うん」
成毛「で、その時間のクオリティを、どうやって上げていくか。っていうのは、それこそ自分探しみたいなもんですよね」
岡田「うん…」
成毛「結局、人生一回しかないですからね。だからこれから…死ぬまでの間のクオリティを上げるためには、過去を振り返る…その時間そのものが、もう既に勿体無いし、」
岡田「うん」
成毛「あの…やりたくないことっていうのを、やることそのものが、やっぱり勿体無いと思いますよね。なので、もうたとえ、それこそ…あの…経済的に恵まれない状態になっちゃっても、そっちのほうが本望だというふうに思うと思いますね」
岡田「成毛さんにとって、良い時間って何ですか?」
成毛「これから何をやるかっていうことを、考えてる時間が一番良い時間ですね。」
* * *
岡田「J-WAVE Growing reed、今夜は書評家、文筆家の成毛 眞さんにお話を伺ってきました。ということでね、あの…ほんとに面白い…方でしたね…(笑)っていう…すごい…すごいなぁと思って。なんかあの…でも、多分、ちゃんとしてるんですよね。あの…周りの人を働かせるやり方を知ってるというか…働きたくなる、何かのツボを知ってるというか…ね、そういうのをこう…上手く心得てる人なんだろうなって…思うし。でも、あの世代の方って、ちゃんと話してくんないんですよね。自分の。…(笑)、頑張ったとことか、分かんないけど(笑)。なんかあの…なんか、あんまりそういうのが格好良く思ってなくて。ちょっとちゃらんぽらんな感じのほうが…いいでしょ?おじさん。みたいな感じが(笑)、する人が多い世代ではあることはあるんですよね、やっぱりあの世代の方って。ちゃんとなんか…勉強もしてきて、歴史も学んで…ま、本好きの由来もそうだと思うんですけど、そういうのもちゃんとやってきて、なんか若い頃は若い頃で…なんかいろんなことに反発もしてきたけど、みたいなね(^^)、匂いがすごいするというか…ちゃんと、いろんなことを戦ってきながらも、でもなんかこう…だんだん人のね、使い方も上手くなって、コツを…ツボを分かってます。みたいな。なんか…大人のひとりなんだなぁっていうのを、すごく思いましたし。…ね。なんか…お酒飲みながらね、話聞きたいなって思わせてくれる…方でしたね。楽しかったです。」
〜TRACK LIST〜
『GO』 CHEMICAL BROTHERS
『GOOD THINGS』 SPENGLER
『DON'T PLAY NO GAME THAT I CAN'T WIN』 BEASTIE BOYS FEAT.SANTIGOLD
『VERGE』 OWL CITY FEAT.ALOE BLACC
『TIME(CLOCK OF THE HEART)』 CULTURE CLUB
『HANGING AROUND』 STAYCOOL
Guest 成毛 眞(書評家、文筆家)
岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、Growing reed。この番組では、毎週ひとつのテーマの専門家をお呼びして徹底的に質問。番組の終わりには、考える葦として僕も皆さんと一緒に成長したいと思います。
さて、今夜のゲストは、書評家、文筆家の成毛 眞(なるけまこと)さんです。若干30代半ばでマイクロソフト日本法人社長に就任。Windows95の大ヒットからパソコンが特別な物ではなくなる、そんな時代を作ってこられた方です。そんなITの、ど真ん中から一気に転身。現在は書評家として日本最大級の書評サイトを運営されたり、文筆家として様々なジャンルにわたって書くことでも表現をされています。今夜は、様々な顔を持つ成毛さんに、今一番興味のあること、これから僕たちに伝えたいことをじっくり伺っていきたいと思います。 J-WAVE Growing reed、新しい一週間最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください。」
* * *
岡田「あの、成毛さんは、すごいとこに勤めて…いたのに、なんでいきなり辞めたんですか?」
成毛「飽きたんです」
岡田「(笑)」
成毛「(^^)」
岡田「飽きたんですか?」
成毛「あの…」
岡田「飽きたんですか。だって誰もが羨む、マイクロソフトのトップに…日本の」
成毛「ええ」
岡田「トップになって…30代半ばで」
成毛「そうですね」
岡田「誰もが羨む、で…Windows95を日本に普及させるんだって」
成毛「ええ」
岡田「立て役者として、やってこられて。これからもう、バリバリじゃないですか」
成毛「ね、Windows95と98の、あの大騒ぎがあって、」
岡田「はい、あれ、すごかったですよね」
成毛「辞めたのが2000年ですから」
岡田「はい」
成毛「もうほんとに絶好調の時ですよね」
岡田「なんで…
成毛「誰が考えたって不祥事があったんじゃないかって思ってるんですけど(笑)」
岡田「(笑)…何か問題が…あったわけではないんですよね?」
成毛「何もないんです。あの…むしろほんとに…そうですね、記者会見の時に記者が300人ぐらいと、」
岡田「はい」
成毛「テレビカメラが10台以上入ったんですけどね、」
岡田「うん」
成毛「なんで辞めんですか?って質問があって…最初にやるわけですよね」
岡田「はい」
成毛「最初に…最初にっていうか、あの…もう飽きたんですと。」
岡田「うん…
成毛「会場がシーンとしまして…」
岡田「その場で…飽きましたって…」
成毛「言いました言いました」
岡田「へぇー。正直…正直って言ったらヘンですけど…」
成毛「あの…でも、それだけ注目されてると、」
岡田「はい」
成毛「むしろそういう人がいても、いいんだっていうふうに…ね、若い人は思ってもいいんじゃないかって思ったんですよ(^^)」
岡田「(笑)…えぇぇ。いや、でも誰もが羨む…これからも、ほんとに…ま、ヘンな言い方したら…稼げる…時じゃないですか」
成毛「ところが、辞めてから一カ月後ぐらいですかね、マイクロソフトの株価が半分になっちゃったんですね」
岡田「うーん…」
成毛「いい時に辞めたといえば良い時に辞めたわけで(笑)」
岡田「じ…自分のせいじゃないんですか?(笑)」
成毛「(笑)」
岡田「社長が辞めたっていうアレで…株価が下がったわけじゃなくてですか?」
成毛「や、なんかね、あの…やっぱりITバブルの崩壊とかっていうの、当時ね」
岡田「はいはい」
成毛「言われてたじゃないですか」
岡田「はいはい」
成毛「だから、おそらく、その飽きたっていうのも、なんとなくニオイ感じたんじゃないでしょうかね」
岡田「…
成毛「もうね(笑)…死臭を嗅いだ。みたいなところがあって。」
岡田「
成毛「ただまぁ、なんかね、アメリカの本社のほうも、幹部がかなり辞め始めた時期なんですね」
岡田「うーん」
成毛「つまりその…マイクロソフトっていう会社は、それまではこう…家庭用のコンピュータに力を入れてたのが、2000年ぐらいからビジネス用っていうんですかね、企業用のコンピュータに力を入れてきたんで、」
岡田「はい」
成毛「その意味じゃ、なんかこう…家庭用のコンピュータを一所懸命作ってた連中は、つまんなくなったっていう…」
岡田「へぇ〜」
成毛「そういうところもありますよね」
岡田「もともとそうなんですか?大学の時とかから…」
成毛「いや、もう大学の時は、そうですね…あの…食うためにどっかに勤めなきゃいけないよねって思ってただけで、」
岡田「はい」
成毛「コンピュータには全然興味なかったですね」
岡田「へぇ──」
成毛「なので、最初に入った会社が、あの…日米合弁の、車の部品を作ってる会社に入りましたね」
岡田「うーん…そっから…どういう流れでマイクロソフトの社長に…?」
成毛「そうそう…それで3年後に、大阪営業所長になれって言われて、」
岡田「はい」
成毛「え?大阪営業所とかないじゃん、とか言ったら、いや、お前が最初の所長だよ。とか言われてですね、喜んで行ったんですけど、」
岡田「はい」
成毛「大阪の…あの、何て言うんですかね、水に合わなかったですね」
岡田「
成毛「たったそれだけの理由で、これは辞めようと思って」
岡田「はい」
成毛「それでまぁ、本が好きだったんで、出版社に勤めようと思ったんだけど、」
岡田「うんうん」
成毛「まぁ、パソコンも当時ね、出て来たばっかりだったんで、」
岡田「はい」
成毛「アスキー出版という」
岡田「はい、アスキー」
成毛「会社に入ったんですね」
岡田「はい」
成毛「これからもう…次の日から来てくれって言うんで、編集者になれるぞ!と思ったんだけど、」
岡田「はい」
成毛「次の日から、アスキーマイクロソフトっていう会社があるんで、そこに出向しろって言われましたけどね、」
岡田「うん」
成毛「結局、何がなんだか分からないまま、今に至るという…」
岡田「…
成毛「そういう感じなんです
岡田「そのマイクロソフトの会社に行って、そのままやってたら…」
成毛「あれよあれよという間に、入社順で社長になったっていう…感じですね」
岡田「…(笑)、そんなこたない
成毛「あのね…」
岡田「な、何が…何が強みなんですか?」
成毛「あの…」
岡田「今、お聞きしてる限りでは、もう面倒くさいとか、疲れたとか(笑)」
成毛「(笑)」
岡田「水が合わないっていう感じでしか…聞こえてこないですけど
成毛「なんですかね、強みは運じゃないですかね」
岡田「運ですか?」
成毛「うん、あの…」
岡田「でも、仕事が出来るわけですよね?めちゃくちゃ仕事が…出来る、」
成毛「…や、仕事はあんまりしてませんでした」
岡田「判断力が…」
成毛「…からね。」
岡田「(笑)。判断力が凄い。」
成毛「いや、全部部下に任せる…」
岡田「ああ」
成毛「んですよ」
岡田「はい」
成毛「良きに計らえってやってるわけです」
岡田「
成毛「だからマイクロソフトの社長時代の社内のあだ名は、ずっと“殿”です」
岡田「へぇ──」
成毛「殿っていうのは、あだ名じゃなくて、実際に入って来て、社長室に人が。で、皆 『殿!』ってやってるわけですよ」
岡田「はい」
成毛「俺、官兵衛かと思いましたよ(笑)」
岡田「
成毛「いや、そういうんじゃなくて、なんでもかんでも良きに計らえになっちゃうんで、とりあえず報告はしとくけど…殿はどうせ何も言わないで…」
岡田「殿って言っとけば…おお、なんだって機嫌が良いから(笑)」
成毛「よし、飲みに行くぞって感じですからね(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「夜のほうが長いわけですから(^^)」
岡田「へぇー(^^)」
* * *
成毛「だからそういう時代なんですね」
岡田「そういう時代
成毛「いや…そう…」
岡田「成毛さんは、もう60になられる…」
成毛「ええ」
岡田「ぐらいですよね。だからなんかこう…ITが来た時の、やっぱり走りの…世代の…」
成毛「なんかこう…それをね、読んで行ったと思うじゃないですか」
岡田「はい」
成毛「全然読んではいないわけですから。本人は、出版社に勤めてると思ったら、」
岡田「(笑)」
成毛「次の日に、マイクロソフトっていう会社に出向しろと」
岡田「(笑)」
成毛「そのマイクロソフトは何ですか?って聞いたわけですよ。何をやってる会社ですか?と。知らないで入ってるわけですから。」
岡田「へぇー」
成毛「で、入ったら、あの…入社順位が3番目かなんかだったんです」
岡田「うん」
成毛「ですから、こう…」
岡田「始まりの…創成期に…」
成毛「順番で社長になったっていう」
岡田「へぇ──」
成毛「ぐらいの感じですよね」
岡田「25年前…」
成毛「そう……?」
岡田「何年前ですか…25年…30年ぐらい」
成毛「そうですね」
岡田「創成期ですよね」
成毛「80年です。80年に入ったんですからね」
岡田「へぇーっ、僕が生まれた年です」
成毛「ぅワオッ!」
岡田「
成毛「ちょっと…」
岡田「僕が生まれた年から働き…すごいですね、やっぱりでも。その時…その時、でもPCとかっていうのは、そんなに、普及は全然してない時ですよね?やっぱり」
成毛「そうですね。8ビット…っていう」
岡田「はい、昔の…」
成毛「電卓に毛が生えたようなもんですよね」
岡田「ぐらいの…」
成毛「だから何にも出来なかった、PCでは。仕事も出来ないし、ワープロも出来ないっていう時代でしたよね」
岡田「そこからどんどん、技術が開発されて、」
成毛「ええ」
岡田「何を引っ張って来られたんですか?」
成毛「???え?何引っ張って…?」
岡田「いや、だって
成毛「あ、いやいや、あのね、あの…マイクロソフトの社長ってよく言われるんですけど、」
岡田「うん」
成毛「僕ね、それは…なんかどっか間違いがあると思っているんです。つまり、うーん…」
岡田「でも社長だったわけで…」
成毛「ナントカ自動車とか、ナントカ銀行の大阪支店長のことを社長って言わないじゃないですか。」
岡田「はい」
成毛「もしくは、ニューヨーク支店長のことを社長って言わないわけですよね」
岡田「…うん」
成毛「だけどなぜか外資系が日本に来て、子会社を作ると、そこの子会社の責任者を社長って呼んで、」
岡田「うん」
成毛「なんか偉そうなことをしているように見えちゃうんですよね」
岡田「うん…」
成毛「実際には支店長なんですよ」
岡田「うん」
成毛「つまり日本を統括してる営業所長みたいなもんですから」
岡田「うん」
成毛「だからその意味では、こう…自分で何かデシジョンするとか、自分で新しい商品を作るとか、製品を作るっていうことはないんですよね」
岡田「うーん」
成毛「もう本社が作った製品を日本に…販売をすると。」
岡田「どうやって広めるか…はい…」
成毛「ええ。マーケティングが主たる業務になっちゃいますよね」
岡田「でも、マーケティングとして、あんだけのブームを…ブームって言っていいブームだったとは思うんですよ。95…」
成毛「そうですよねぇ」
岡田「Windows95、98。皆 Windowsでしたから。」
成毛「もう随分…マイクロソフトの本社と喧嘩しましたけどね。あの、マイクロソフト本社は、日本語版と英語版を同時に出荷したいんですね」
岡田「はい」
成毛「カッコイイじゃないですか。世界同時発売っていうのは。」
岡田「うん」
成毛「今…Appleなんかみんなそうですよね。で、僕はその…僕はですね、日本語版だけを3日ぐらい遅らせて出荷させてくれって言ってたんです」
岡田「はい。その意図は?」
成毛「そうすると、アメリカで大騒ぎになっているわけですよね、Windows95で。」
岡田「はいはい、はい。」
成毛「その大騒ぎの様子を、メディアが伝えるじゃないですか。アメリカじゃあ徹夜で人が並んでるぞとか言って、ワーワーやってるわけですよね」
岡田「うん。販売意欲を煽るための…」
成毛「ねぇ。それで3日後に日本語版を出したら、」
岡田「はい」
成毛「売れ行き、さらに良くなるよねという」
岡田「うんうん」
成毛「そんなもんですよね。つまり、こう…ただでコマーシャル出てイイじゃないっていう…」
岡田「(笑)」
成毛「それをマーケティングって呼んでいいかどうかっていうね(笑)」
岡田「いやいや(笑)、マーケティングですよ。戦略ですから」
成毛「ほんと大丈夫か?っていう感じなんです」
岡田「(笑)。そういうのをやってきたってことですよね」
成毛「やってきた…その一件に関しては、ビル・ゲイツと喧嘩しましたね。ヤツはもう同時出荷したいわけで、」
岡田「うん」
成毛「でも同時出荷したくないと。」
岡田「うん」
成毛「コマーシャルも打ちたくないと。」
岡田「うん」
成毛「お金使いたくないっ。」
岡田「うん…お金使えない…」
成毛「で…ニュースでガンガンやってもらって、アメリカの様子を。」
岡田「はい」
成毛「一週間ほど、もう毎日のごとくやってもらって」
岡田「はい」
成毛「それでやると売れるよね。っていう…その程度のことですからね、考えてることは(笑)」
岡田「(笑)…いやいや
成毛「そのぐらいしかあんまり覚えてないんですよ(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「本当のこと言うと
岡田「なんで…ほんとに飽きちゃったんですか?飽きて…」
成毛「飽きますよ…」
岡田「誰もが羨むポジションから転身。飽きたからって言って…」
成毛「あの…マイクロソフトの日本の社長をやると、次のポジションって、もうアメリカ本社に行くしかないんですよね」
岡田「はい」
成毛「アメリカに行きたくないんですよ、僕。その…住みたくないというか」
岡田「はい…水が合わない可能性が(笑)」
成毛「水が合わない。サンマのね(^^)、」
岡田「(笑)」
成毛「あの美味しいサンマ、食えないんじゃないかとか、いろいろ心配事が頭ン中を駆け巡って、」
岡田「へぇー」
成毛「当時はねぇ、寿司屋なんかもあんまり無かったですからねぇ」
岡田「はい。…で辞めた(笑)」
成毛「アメリカに行くぐらいなら辞めてやろうっていう」
岡田「(笑)」
* * *
岡田「めちゃめちゃ本を読むっていうのは…有名ですけどね」
成毛「えっとね、小学校の頃から本は読んでたんですね」
岡田「うんうん」
成毛「ただあの…本もね、何かを勉強するために読むようなことはないんで、」
岡田「うん」
成毛「面白いから読んでるだけなんですよ。ですから他の人が、サッカーやったり、音楽聴いたり、映画観たりっていうことと全く同じ」
岡田「うーん」
成毛「道楽というか。何て言うのかな…趣味としての、本当に趣味としての読書なんですね」
岡田「う〜ん」
成毛「逆に言うと、本ばかり読んでるんで、その類の映画とかスポーツとかスポーツ観戦とか、音楽とかも一切に近いぐらい触らないですね」
岡田「今どのぐらい本を読まれてるんですか?」
成毛「ところがこれが、あの…3年ぐらいで、書評をプロのようにして書くようになっちゃったんで、」
岡田「はい」
成毛「あれ、趣味で本を読んでるうちは楽しいんですよね」
岡田「
成毛「プロになると(笑)、楽しくないじゃんっていうんで、」
岡田「そうですよね…」
成毛「最近読んでないですね、あんまり(笑)」
岡田「なんでですか(笑)」
成毛「どうしたんだろう
岡田「書評サイト『HONZ』の代表」
成毛「ええ」
岡田「ですよね?本好きだから、書評サイトを作ろうっていう…」
成毛「そうですね」
岡田「楽しいことしようっていう感じですか?でも仕事にしちゃうと楽しくなくなるっていう」
成毛「そうですよね。やっちゃったら失敗したっていう…」
岡田「(笑)」
成毛「失敗したっていうのは、逆に『HONZ』が上手く行きすぎちゃったんで、」
岡田「へぇー」
成毛「個人的には、あら失敗したね、って。シャレでやってるうちは良かったんだけど、」
岡田「うん」
成毛「シャレじゃなくなっちゃって、毎日、何万人もの人が見るようになっちゃうわけですよね」
岡田「はい。上手くいっちゃって」
成毛「ね。そうすると、下手な新聞書評なんかよりも読まれるわけで」
岡田「はい」
成毛「本の売れ行きに影響を与えるようになってきちゃうわけですよね」
岡田「はいはい」
成毛「そうすると、これはもしかして仕事なんじゃないかと(笑)」
岡田「(笑)、いや仕事ですよ。立ち上げた時から…仕事じゃないですか
成毛「仕事すんの、キライなんですよ、ほんとにこう…」
岡田「
成毛「遊びでやってるうちは、何でもいいんだけど。ほんとにだから厳しいですよねぇ…」
岡田「
成毛「大変ですねぇ…」
岡田「大変ですか?今は。でも、本はほんとに…捨てないんですよね?」
成毛「捨てないですね」
岡田「読まれた本は」
成毛「全部取ってありますね」
岡田「え、置いとけない…僕は、ちょっと処分しちゃうんですよ、置いとけないないので。置いといたら家が凄いことになっちゃうので」
成毛「床抜けたりしますからね」
岡田「重いですからね。全部…どうされてるんですか?」
成毛「そのために家作りました」
岡田「…へぇ──」
成毛「地下に書庫が入るようなものを作ってですね」
岡田「はい」
成毛「そこで…そうですね…万単位で持ってるんでしょうね、きっと。でももう数を数えるのも止めちゃいましたからね」
岡田「ご家族には怒られないんですか?」
成毛「んー…ま、それで食ってるようなもんなんで、」
岡田「ああ、まぁ…」
成毛「あの…家族は、黙ってますけど。でももう、今も本だらけですからね。あの…本の中で、ラーメン啜ってるっていう凄い光景になってますよね、今日の昼も(笑)」
岡田「(笑)、でもそれが幸せ…一番幸せな瞬間っていうのは、どういうときなんですか?」
成毛「ちょっと前までは、本を読んでるときだったんですけどね。今はなんか…さっきの、本が趣味じゃなくて仕事になっちゃったんで、」
岡田「はい」
成毛「これから幸せを見つけなきゃいけないね。っていうふうに…(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「なんかね、思い始めてるんですけど(笑)」
岡田「(笑)…ちょっと前までは、本に囲まれて、自分が集めた本に囲まれて、静かに本を読むのが…」
成毛「そう…あっ、僕ね、静かに本を読まないんですよ。テレビつけっぱなしで読んでるんです」
岡田「へぇー」
成毛「下手すると、テレビ2台つけっぱなし状態で読んでるっていう」
岡田「いろんな音が鳴ってないと…」
成毛「鳴ってないとダメですねぇ」
岡田「へぇー」
成毛「なので、その状態で、しかもソファーで寝転がって読んでいるのに、無情の幸せを感じますから」
岡田「んー…」
成毛「それであとポップコーンでも食おうもんなら、もうね(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「絵に描いたような自堕落な奴っていう」
岡田「(笑)」
成毛「そうなっちゃうんですけど」
岡田「それが、今は…今は、じゃあ幸せは分からない…探してる」
成毛「探してるんですよ。自分探しの旅に…あの、もう還暦になりそうなんで、」
岡田「(笑)」
成毛「これから出ようかと思っているんですけどね(笑)」
岡田「いいですね(^^)、いろんなことをやっていくけど…飽きたり、仕事になって上手くいくと…面白くなくなったり…」
成毛「そうですよねぇ、なんかねぇ、人から言われるとか、義務感があるようなものとか…」
岡田「好きで発信しているのはいいけど、期待されて…」
成毛「そういうことですねぇ…。なんでもかんでもフリーハンドでいたいんですよね、あらゆることに。」
岡田「へぇー…」
成毛「うん。自分からも束縛されたくないみたいなところがあって」
岡田「自分からも?」
成毛「自分で決めたくないっていうかね、こう…」
岡田「うーん…」
成毛「自分の人生、これからこうやろうとか」
岡田「うん」
成毛「だから目標とか持ったことも一回もないですし。」
岡田「うん」
成毛「自分の本にも『目標は持つな』って書いてますからね」
岡田「うーん…」
成毛「それを読んだ人が、3分の1ぐらいは、なんか納得するんだけど、3分の2は、こいつ少しおかしいんじゃないかっていうんで(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「賛否両論です」
岡田「大体、逆ですからね、あの…目標を持って、」
成毛「そうそうそう」
岡田「立てて、」
成毛「ええ」
岡田「着実に」
成毛「そうですよね」
岡田「道を進んで行きましょう。みたいな…」
成毛「『努力はするな』って書いてますから、自分の本には」
岡田「何なんですかねぇ…」
成毛「だって大変じゃんっていう…理由は、大変だからっていう理由ですから」
岡田「な…何なんですかね」
成毛「何でしょうね…」
岡田「寅さん的なことですかね?…(笑)」
成毛「あ、近いかもしれないですね」
岡田「何なんですか?楽しんで…本とかもいっぱい…ね、なんかでも…楽しそうなことばっかり…『メガ!:巨大技術の現場へ、ゴー』っていうのを…」
成毛「最近の…新潮社から出した本で。フルカラーの本なんですけどね。あの…東京の地下のトンネルの中の工事現場から、ジュネーブにある、人類が作り出した最大の機械っていうか…実験装置ですよね、ヒッグス粒子を発見した」
岡田「はい」
成毛「そこまで行って。結局ね、24箇所。回りましたね」
岡田「うーん。最新の設備とか、施設とかそういうのをこう…」
成毛「そうですね、巨大な装置…もしくは、最先端科学」
岡田「うん」
成毛「を見に行くという。で、ただ見に行くだけなんですよ」
岡田「(笑)」
成毛「深くは理解しなくて結構だっていう(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「その辺がね、こう…今までにはない本だって言われてますけどね(笑)」
岡田「(笑)。いいですね。ただ見に行く…でも男心には…あ、これ…たまらない本ですけどね」
成毛「たまらないですよね」
岡田「男心には…(笑)」
成毛「ここで働いてる人達の、その男っぽさ…ま、女性も含めてなんですけどね、」
岡田「うん」
成毛「っていうのが、またたまらないですね」
岡田「う──ん…」
成毛「自分にはない、ほんとに命懸けでやってる姿を見て、感動したりするわけで、」
岡田「うーん…」
成毛「やっぱり良いものを今日見ちゃったなと思いながら帰って来るんですよ」
岡田「いいですねぇ…」
成毛「で、自分はって振り返ると、やっぱり他のとこ行こうとか、次 飲みに行こうか、みたいなそういう自堕落な生活にやっぱりなっちゃうんですけどね」
岡田「これは、ご自分でやりたいと思ってやられたんですか?」
成毛「そうです。企画を…ある週刊誌に持ち込んで、」
岡田「うん」
成毛「で、連載をして」
岡田「うーん」
成毛「その連載を開始するところから、単行本の編集者がついて。ま、このような形にしようと、最初から決めて作りましたよね」
岡田「ああ…最初から決めて、こういうふうにしたいから、どう動くかみたいな…」
成毛「本を書いてるっていうよりも、本を作ってる…プロデューサーの立場のほうが近いですね」
岡田「うーん」
成毛「どっちかって言うと」
岡田「全部プロデュースですか?今までやってきたものは。」
成毛「えーとね…」
岡田「ご自身の中では」
成毛「全部でもないんですけどね…4、5冊がプロデュースの範囲内ですね、きっと」
岡田「うーん…」
成毛「自分でこれを作ろうという。残りは、編集者からのこう…なんて言うんですかね…オファーというか…こういうの一冊書きませんか?というのを受けて書いてますけどね」
岡田「人生プロデュースは上手くいってる感じですか?今まで。惜しいとは思わなかったんですか?その…マイクロソフトの社長を辞めるとかっていうときも、今はその…ポジションがなくなるっていうことに対して、怖いって思う人って多いと思うんですよね。その…今、安定のある場所だったりとか、自分から手放すっていうのは、なかなか…」
成毛「でも、辞めてつくづく良かったんですよねぇ…と思います」
岡田「うーん」
成毛「何しろ、一応、毎日会社に行かなきゃいけないじゃないですか」
岡田「はい」
成毛「恐ろしいことだなと思いますよね」
岡田「
成毛「そうですよね(笑)」
岡田「(笑)…いますけどね」
成毛「ええ…」
岡田「大抵の人は…」
成毛「大抵の人はそうですよね。その…マイクロソフトを辞めて、作った投資会社の中でも、結局二年後か三年後ぐらいに、あの…FF11っていうネットワークゲームにハマっちゃって…」
岡田「うん…ファイナルファンタジーの…?」
成毛「ファイナルファンタジーです。」
岡田「ああ」
成毛「二年間ずっと籠ってたんです、家に。」
岡田「
成毛「そうすると、向こうから熊みたいな奴が歩いて来るんですね、ゲームの画面の中でですよ」
岡田「はい」
成毛「で、ハイ!とか言って…で、あの…誰々さんから電話ですっていうメッセージが来て、」
岡田「
成毛「ゲームの中で(笑)、つまり電話しても…」
岡田「あー」
成毛「取らないんで」
岡田「はい。あ、ゲームの中から」
成毛「ゲームの中からわざわざ…そいつはしょうがないから、僕にメッセージを伝えにゲームのキャラになってやって来るんです」
岡田「
成毛「そろそろ会議ですとか言ってですね。で、そいつがまたハマっちゃったんですけど(笑)」
岡田「戻って…(笑)」
成毛「戻って来ない(笑)…そろそろ…地上は怖くないよとか言いながら…そろそろ戻っておいで、みたいな(笑)」
岡田「(笑)…いいですね。いいっていうか…なんか…」
成毛「人生一回きりですからね」
岡田「(笑)…そうですけど
成毛「好きなことやらないと(^^)」
* * *
岡田「なにで…や、何が凄くて…普通はでも、そういうことをやってたら、あれですよね?ま、ヘンな言い方したら…見放されちゃいますよね?そんなゲームのこう…会社の人…反乱が起きてもおかしくないじゃないですか」
成毛「ね。ところが、」
岡田「首にしろとか」
成毛「それを防ぐために、ファイナルファンタジーを作ってる会社の、社外役員やってたんです、ついでに。」
岡田「…(笑)」
成毛「そしたら文句言われないだろうっていう…社外役員としての義務として…」
岡田「頭良いのか(笑)…」
成毛「ゲームのチェックをするっていう(笑)」
岡田「頭良いのかなんなのか…よく分からないんですけど
成毛「そうそう。やって。」
岡田「それ(ゲーム)をやってる理由を、」
成毛「つけたんです」
岡田「つけた…ぁぁ…」
成毛「周り…」
岡田「文句言われない…」
成毛「家族とか全員に、これは、」
岡田「仕事なんだと」
成毛「スクウェア・エニックスの社外役員としての仕事なんであると」
岡田「はい」
成毛「文句を言ってもらっては困る!」
岡田「
成毛「皆、なんかヘンだなとは思ってたと思う」
岡田「頭いいのか
成毛「…」
岡田「本当は何ですか?本当ですか?それ。本当の…」
成毛「本当ですよ、ホント
岡田「今ちゃんと仕事してない人になってますよ」
成毛「あの、ちゃんと仕事をする気、全然ないんですよ、もう。あの、もうっていうか…大学時代から。何しろ、一番最初に入った会社なんかも、勤める気、全然無いわけですから。だけど、母親から父親から、自分で金稼げって言われて、どうしようかと思って。就活したことがないんですよ…就活って言うんですか…それで、今の嫁さん…当時の彼女に、どっか勤めないとマズイらしいんだ、俺。っていう話をしてたんですよ。そしたら、その嫁さんが通っている英会話学校の校長先生が、たまにガソリンを入れに行くガソリンスタンドの、さらにそのガソリンスタンドのお客さんが、人を探していると、新卒を。」
岡田「うん」
成毛「あ、良い話だなつって、そいでそこに入ったんです。そこだけ受けたんです、僕。その会社だけを。」
岡田「へぇー…」
成毛「ですから、あの…面接しに行って驚きましたよね、向こうも驚いてますけど、こっちもね…じゃあ、いつから来てくれますか?って言われて、俺アルバイトかと思いましたけどね、面接で言われて(笑)」
岡田「へぇー…」
成毛「それで入った会社で、三年後に大阪に行って、」
岡田「はい」
成毛「大阪の水が合わなくてと。いうことですから…物事をまともに…真面目に考えたこと、一回もないですね」
岡田「
成毛「…あのね、今の若者 真面目過ぎちゃうじゃないですか」
岡田「ん…はい」
成毛「なんか一生懸命ね、こう…だから全員が真面目になっちゃうのが怖いなって思いますよね」
岡田「うん」
成毛「僕みたいな人がいて、社会とか世代っていうのが上手く回るんだと思うんですよ」
岡田「うーん」
成毛「ヘンな奴がいないと、やっぱりマズイんじゃないかと。」
岡田「(笑)」
成毛「全員真面目とか、全員ギンギンにやる気満々とか、もう行くぞモードに入っちゃうっていうのはちょっと…」
岡田「でも…」
成毛「辛いですよ、ちょっと」
岡田「難しいじゃないですか、いい加減と良い加減っていうのは違うじゃないですか。ま、言葉の綾ですけど。その…どこかちゃんとしている…(笑)とこがあるわけですよね?…無いとでも…やってけないと思うし…マイクロソフトの社長もやってけないだろうし、その後も全部こう…成功してこないとは思うんですけど、そのなんか…真面目じゃなくていいけど、いい加減じゃ悪いわけじゃないですか」
成毛「そうそう、いい加減じゃマズイんですよね。だから、一つだけあるとしたら、結果を出す…もの凄い労力を少なくして、頑張らないで、結果だけ残せるかっていう…」
岡田「それは何ですか?そのコツはなんですか?」
成毛「他のことをしないことだと思いますよ。その…何て言うんですかね…例えば、今期いくらいくらの売り上げをあげたいと。いうふうにアメリカの本社が言ってきました」
岡田「はい」
成毛「売り上げなのか利益なのか、どっちかハッキリせい!と言うと、アメリカ人のことですから、や…じゃあ今年は利益より売り上げをまず上げようと、目標を狭くしちゃうんですよね」
岡田「うん」
成毛「それだけを達成するのは、そんなに難しくなかったりするんだと思うんです」
岡田「うん」
成毛「だからそれと同じように、他のことも…生きる術も含めて、できるだけピンポイントで目標というか、達成可能な…なんて言うんですかね、しかも、あとから達成したかどうか分かるような、」
岡田「うん」
成毛「そういうその…身近な目標みたいなやつを持つっていうのは、いいのかもしれませんね。それはやってましたね」
岡田「身近な目標。へぇー…なんかご自身で、それだけ本を読まれてきたとかっていうのは、役に立ってたりとかっていう実感はあるんですか?」
成毛「なんかあの…本を読んだことは役に立ってることは間違いないと思うんですが、言いたくないんですよ、本は役に立つということを(笑)」
岡田「なんで(笑)」
成毛「つまり…結果的に役に立っているっていう感じ…
岡田「いやいや、書評サイトの代表もやられているし、本も発売されてるし、」
成毛「ね」
岡田「本は大事だっていうのは…」
成毛「いや、言ってないですよ、僕一回も。本は大事だって(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「だからどの書評にも、あの…本にも書いてなくて、」
岡田「(笑)」
成毛「本は楽しんで読むべきであると。」
岡田「勉強するためではないと」
成毛「ええ。デスメタを聴く人に、デスメタはあなたの仕事にどれほど役に立ってますか?って訊くと、ええ !?って驚くじゃないですか。それと多分、同じことだと思ってるんです」
岡田「うん」
成毛「なので、結果的に何か役に立つことはあるかもしれないけど、役に立つために本を読むっていうのは、どうも本末転倒のような気がしますよね」
岡田「うーん…。もう娯楽として、」
成毛「うん」
岡田「読むのが、」
成毛「ええ」
岡田「よくて。楽しいから読むっていうのが一番…」
成毛「そうですね」
岡田「正しくて。」
成毛「なので、自分が読みたい本、面白いと思う本だけを読むべきだというのが、持論なんですけどね」
岡田「うん…あんまり勉強のために読んでいると、ロクなことはない…」
成毛「やんなっちゃいますよね」
岡田「
成毛「音楽家…ミュージシャンが、勉強のためになるからといってクラシックを朝から晩まで聴きまくって、で、あなたの音楽の傾向はなんですか?デスメタですって…ありえないじゃないですか(笑)」
岡田「(笑)」
成毛「でも、間違いなく楽典を考えたら、やるべきですよね、きっと。クラシックを。楽典ぐらいは調べるべきで。」
岡田「うん」
成毛「だけど、それってちょっと違いませんかと。」
岡田「うん」
成毛「いうふうに思いますよね」
岡田「まぁ、なんか…たくさんの人にこう…影響を与えたりとか、いろんなことを発信している成毛さんですけれども、成毛さんにとって、もう…60に近くなってきて、過ごしてきた時間というか…どういう存在ですか?」
成毛「…もう時間があの…今、その…とにかく時間が欲しいですよね」
岡田「うーん」
成毛「結局その…なんて言うんですかね、僕にとってみると…過去っていうのは、あんまり興味がない。自分の過去も、あらゆるものの過去っていうのは、興味がないんですね」
岡田「うーん」
成毛「一分前であれ、百年前であれ(^^)」
岡田「うん」
成毛「歴史は別なんですけどね。なので、その…これからの時間のほうが遥かに僕にとって重要。」
岡田「うん」
成毛「で、その時間のクオリティを、どうやって上げていくか。っていうのは、それこそ自分探しみたいなもんですよね」
岡田「うん…」
成毛「結局、人生一回しかないですからね。だからこれから…死ぬまでの間のクオリティを上げるためには、過去を振り返る…その時間そのものが、もう既に勿体無いし、」
岡田「うん」
成毛「あの…やりたくないことっていうのを、やることそのものが、やっぱり勿体無いと思いますよね。なので、もうたとえ、それこそ…あの…経済的に恵まれない状態になっちゃっても、そっちのほうが本望だというふうに思うと思いますね」
岡田「成毛さんにとって、良い時間って何ですか?」
成毛「これから何をやるかっていうことを、考えてる時間が一番良い時間ですね。」
* * *
岡田「J-WAVE Growing reed、今夜は書評家、文筆家の成毛 眞さんにお話を伺ってきました。ということでね、あの…ほんとに面白い…方でしたね…(笑)っていう…すごい…すごいなぁと思って。なんかあの…でも、多分、ちゃんとしてるんですよね。あの…周りの人を働かせるやり方を知ってるというか…働きたくなる、何かのツボを知ってるというか…ね、そういうのをこう…上手く心得てる人なんだろうなって…思うし。でも、あの世代の方って、ちゃんと話してくんないんですよね。自分の。…(笑)、頑張ったとことか、分かんないけど(笑)。なんかあの…なんか、あんまりそういうのが格好良く思ってなくて。ちょっとちゃらんぽらんな感じのほうが…いいでしょ?おじさん。みたいな感じが(笑)、する人が多い世代ではあることはあるんですよね、やっぱりあの世代の方って。ちゃんとなんか…勉強もしてきて、歴史も学んで…ま、本好きの由来もそうだと思うんですけど、そういうのもちゃんとやってきて、なんか若い頃は若い頃で…なんかいろんなことに反発もしてきたけど、みたいなね(^^)、匂いがすごいするというか…ちゃんと、いろんなことを戦ってきながらも、でもなんかこう…だんだん人のね、使い方も上手くなって、コツを…ツボを分かってます。みたいな。なんか…大人のひとりなんだなぁっていうのを、すごく思いましたし。…ね。なんか…お酒飲みながらね、話聞きたいなって思わせてくれる…方でしたね。楽しかったです。」
〜TRACK LIST〜
『GO』 CHEMICAL BROTHERS
『GOOD THINGS』 SPENGLER
『DON'T PLAY NO GAME THAT I CAN'T WIN』 BEASTIE BOYS FEAT.SANTIGOLD
『VERGE』 OWL CITY FEAT.ALOE BLACC
『TIME(CLOCK OF THE HEART)』 CULTURE CLUB
『HANGING AROUND』 STAYCOOL