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朝日新聞よ、誤魔化すな!

ISAFの独軍を訪れたメルケル首相 Photo by H-stt
ISAFの独軍を訪れたメルケル首相 Photo by H-stt
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小川 和久, 2015年6月1日

5月30日、ようやく朝日新聞が事実上の訂正記事を出しました(4面)。昨年6月15日付け1面トップの誤報を指摘して、なんと11カ月と半月。締め切りに間に合わないといった自分の都合で役所や企業の広報担当者を急かし、脅している新聞記者の姿を思い浮かべると、なんと悠長で自分勝手なペースかと苦笑せずにはいられません。

事実上の訂正記事は、「憲法解釈変えアフガン派兵55人犠牲 独軍と同じ道 野党懸念 PKO法改正案」とする記事の最後に、申し訳程度に掲載されています。

朝日新聞は昨年6月15日付朝刊にシリーズ企画『集団的自衛権 海外では』の一つとして『平和貢献のはずが戦場だった/後方支援、独軍55人死亡』などの見出しでドイツ軍のアフガニスタン派遣に関する記事を掲載しました。ドイツ軍は当初、NATOによる集団的自衛権で兵士を派遣し、集団安全保障の枠組みに切り替えましたが、記事ではそうした経緯に触れなかったため、派遣全体が集団的自衛権に基づくという誤解を招きました。今回、関連の記事を掲載するにあたり、記事の中で経緯を詳しく説明しました。

「訂正記事」が不誠実であることは、私の同僚である西恭之氏(静岡県立大学特任助教)の以下の指摘(当メルマガ2014年6月19日号「朝日新聞が誤報したドイツの集団的自衛権行使」)を見れば明らかです。

 朝日新聞は6月15日、アフガニスタンに派遣されたドイツ軍人の犠牲を、『集団的自衛権 海外では』と銘打って朝刊1面トップで取り上げた。しかしながら、この記事は、『集団安全保障』を『集団的自衛権』の行使と誤報しているばかりか、ドイツが実際に集団的自衛権をアフガンで行使したケースを見落としているなど問題の多いものだ。
 この記事は、ドイツ軍の国際治安支援部隊(ISAF)への派遣を、あたかも集団的自衛権の行使であるかのように取り上げている。しかし、ISAFは国連安全保障理事会が、タリバン政権崩壊直後のアフガン情勢を、『国際の平和と安全に対する脅威』と認定したため、2001年12月20日の安保理決議1386号において承認した、集団安全保障活動である。特定の国への武力攻撃に対する集団的自衛権の行使ではない。(後略)

この昨年6月19日号の記事は、ドイツ軍のアフガン派遣に関する正確な事実関係を知っていただくために、今回の配信号に再掲載しておきます。

朝日新聞の誤報については、日本報道検証機構(Gohoo)も再三にわたって指摘してきました。そんなこともあり、私は5月30日、この事実が広く知られるよう次のようにツイートしました。

朝日新聞が今日の朝刊4面で昨年6月15日朝刊1面トップの誤報について、事実上の訂正記事を出しました。まだまだ姑息の域を出ておらず、新聞の使命を忘れた内容が問題。「誤解を招いた」とはなんたる言いぐさ。歴史を編む当事者として、学者の引用にも応えるように、事実関係を明記すべし。

— 軍事アナリスト 小川和久 (@kazuhisa_ogawa) 2015, 5月 30

さらに、この「訂正記事」を取り上げた日本報道検証機構(Gohoo)の記事をFacebookでシェアするにあたり、次のようにコメントすることになりました。

最初に朝日新聞の誤報(昨年6月15日付け1面トップ)を指摘した立場で言いたい。日本新聞協会の新聞倫理綱領には「新聞は歴史の記録者」と記されている。歴史の記録者とは、責任を持って歴史を編んでいく使命感への自覚を求める言葉でもある。新聞記事は研究者の論文にも引用される。誤報した点を明らかにしなければ、新聞としての使命を果たしたことにならないではないか。少なくとも、専門家の一員である私に対して「誤解を招いた」などと言えるのか?誤解した可能性があれば指摘などしていない。客観的エビデンスがあるから指摘したし、自発的に訂正するように求めたのだ。そのようにして誤魔化すのは、まさしく隠蔽であり、それが昂じれば捏造という犯罪をも生むことを忘れてはなるまい。Facebook2015年5月30日投稿(小川和久)

私は民主主義を機能させる国民(納税者)の代表の中心はジャーナリズムだとする立場です。健全で強力なジャーナリズムこそが、日本を世界の範たる国に成熟させていくと考え、静岡県立大学でジャーナリズムのコースを開設し、ゆくゆくは国際水準を満たしたジャーナリストを育成すべく、タネを蒔いたところです。その立場から、月刊誌『Journalism』を出版し、社内に『ジャーナリスト学校』を備える朝日新聞には、期待するところが少なくないのです。

今回の訂正記事もどきは、ジャーナリズムであることを標榜する朝日新聞の姿勢が見せかけに過ぎず、看板倒れに終わる可能性を物語ってあまりあるものです。

私は、朝日新聞が紙面にエビデンスを列記した訂正記事を掲載することを望んでいる訳ではありません。そうした取り組みは、せっかく月刊誌『Journalism』を出版し、『ジャーナリスト学校』があるのですから、そちらできちんと検証すればよいと思っています。しかし、ジャーナリズムとしてのプライドがあれば、次の訂正記事くらいは誤報の指摘があったらただちに掲載してほしいものです。

2014年6月15日付け『集団的自衛権 海外では』の記事で、ドイツ軍のアフガニスタン派遣を集団的自衛権の行使としているのは、『2001年12月20日の国連安保理決議1386号で承認された集団安全保障措置による国際治安支援部隊(ISAF)としての派遣』の間違いであり、『独軍がアフガンに派遣された02年』としたのも間違いでした。ドイツは2001年9月11日の米国同時多発テロ直後の10月、集団的自衛権と北大西洋条約機構(NATO)条約の責務に基づき特殊部隊をアフガニスタンに派遣しています。事実関係の確認が不十分でした。訂正します。

朝日新聞ばかりでなく、ほかの新聞にもしばしば見られることですが、誤報を指摘されて逃れられないとわかると、「修正しますから」と言ってくるケースがあります。

しかし、正確な訂正記事を伴わない「修正」は誤報を隠蔽するものですから、ジャーナリズムが手をそめてはならない犯罪に近い行為なのです。そうした隠蔽工作がまかり通る中で、捏造のケースが生まれてくることは、忘れてはならないでしょう。

また、そうした隠蔽体質を抱えながら役所や企業の隠蔽を指弾することは、まさしく天にツバする行為でもあります。朝日新聞と深い関わりのあるニューヨークタイムズなど米国の新聞は、誤報は訂正するのが前提ですし、修正といった発想は唾棄すべきものだとしています。

これを機会に、日本の新聞各社の社内の議論が深まり、健全化が進むことを願ってやみません。

* 編集注 この記事は、会員制メールマガジン『NEWSを疑え!』第395号(2015年5月15日号)より了承を得て一部転載しました。

  • (初稿:2015年6月1日 17:00)
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タグ: 報道改革, 朝日, 自衛権

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小川 和久

執筆者について
小川 和久

静岡県立大学特任教授、国際変動研究所理事長。

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