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【政治】

機雷掃海 定まらぬ前提 防衛相「国民に死者なくても」

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 安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で二十八日、戦時の機雷掃海をめぐり、安倍政権内の見解の不一致が浮き彫りになった。中谷元・防衛相は中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖され、日本へのエネルギー供給が途絶えた場合、国内で死者が出るほど影響が大きくなくても、他国を武力で守る集団的自衛権に基づき機雷を取り除くことは可能だとの考えを示した。法案提出前の与党協議で座長を務めた自民党の高村正彦副総裁は機雷掃海の前提となる状況として「寒冷地で凍死者が続出」を例示しており、海外派兵の基準のあいまいさを印象づけた。

 戦時の機雷掃海は、ばらまいた国への反撃となり、国際法上の武力行使にあたる。日本を標的にしているのが明確でない限り、集団的自衛権を行使しなければ取り除くことはできない。

 中谷氏は特別委で、どの程度の経済的な影響が出れば戦時の機雷掃海を実施できるかに関し「国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が出る場合だが、必ずしも死者が出ることを必要としない」と説明。凍死者が続出するほどでない経済的な影響でも、集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」に認定する可能性に言及した。

 安倍晋三首相はこれまでの審議で、生活物資の不足や電力供給の停滞を例示。自民党の稲田朋美政調会長は「凍死者や餓死者」が出る事態を想定している。

 見解に違いが生じるのは法案が定める集団的自衛権行使の要件があいまいで、解釈の幅が大きいためだ。

 首相は二十八日の特別委で他国領域で武力を行使する海外派兵は自衛のための必要最小限度を超え、認められないとする一方、機雷掃海は「受動的、限定的な武力行使」として例外だと重ねて主張。これに対し、民主党の辻元清美氏は、米軍は機雷掃海を能動的な武力行使に位置付けており、例外にはならないと追及した。

 政府によると、日本に輸入される原油の八割が中東・ホルムズ海峡を通過する。海峡のほとんどはオマーン、イランの領海にあたり、機雷掃海を実施すれば他国領域での武力行使になる。

◆柳沢協二の安保国会ウォッチ 判断基準を持たぬ政府

 安倍晋三首相がこだわる中東のホルムズ海峡で機雷掃海を行う基準について、中谷元・防衛相は「どれくらいの被害を想定しているのか。死者が続出する状況か」と問われ、「必ずしも死者が出ることを必要としない」と答弁した。首相は「総合的に判断する」と言う。

 死者が一人も出なくても、集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」と言えるのか。武力攻撃を受けたときと同じ損害というのに、一人も死なないというのは同等の被害じゃない。

 国民が一番知りたいのは、政府が総合的に判断する基準が何かだ。それについて何も答えていない。要するに政府は基準を持っていない、答えられないのだと思う。「その時になったら政府が判断する」というのが唯一の答えのようだ。

 端的にホルムズ海峡に機雷がまかれれば、まいた国が日本に届くミサイルを撃ってくるというなら分かりやすいがイランは日本に届くミサイルを持っていない。中東の国で日本に届くミサイルを持っている国はない。

 首相は「それ以外はなかなか念頭にない」と言う。具体例としてそれしかないのであれば、そこを徹底的に議論すべきだが政府自身が他国への攻撃で日本の存立を脅かされることがあると思っているのかさえ、疑わしい。

 首相は二十七日の答弁で、私が指摘した自衛隊の後方支援に関するある新聞でのコメントを「柳沢さんは間違っている。なぜ初歩的なことを分からずにべらべらしゃべっているのか」と批判した。「べらべら」などと言うのはご不快だからだろう。

 私は事実上起こる軍事的常識を指摘しただけだが武力行使を拡大させる法案を出し、実際にその重い決断をする首相自身がこのような感情的な言葉を使ってしまうことに不安を感じる。

 

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