私たちは毎日ゲームをしている。恋人たちは駆け引きし、商人は交渉し、企業は競争し、政党は政争をする。その結果により、人は泣き笑いし、企業は繁栄または衰退し、政党は浮き沈みする。そのたびに大騒ぎするが、長い目で見れば繰り返しであり、循環している。だが、失敗することが我々全体の将来に致命傷となる分野がある。外交だ。列強時代以降、韓国の外交は実に複雑かつ高難度なゲームとして繰り広げられてきた。それは逆説的にいえば、韓国の外交は国民の生存に最も重要でありながら、国民の関心からは最も遠い所にあったとも言える。相手や変数が多いために理解しにくいからだ。
しかし、応用は複雑でも原理は単純なのがゲーム理論の醍醐味(だいごみ)だという。ナッシュ氏が生前に確立した均衡の原理「互いにとって最良の戦略の接点」(ナッシュ均衡)に、私たちが立っているかどうかを模索するのは単純なことだ。「あらゆるゲームには均衡がある」ことを証明したナッシュ氏の理論は、私たちに「韓国の外交は北朝鮮とのゲームでどんな均衡を模索しているのか?」と問い掛ける。さらにさかのぼれば、すべての問い掛けは結局、「韓国の外交はあらゆる相手を知っているのか?」という所に行き着く。
ゲーム理論の基本は、相手全員の立場を考えることだ。韓国の北東アジア外交は米国と中国に加え、北朝鮮や日本まで絡んでいるスペクタクル・ゲームだ。北朝鮮を知らなければ中国が分からず、日本を知らなければ米国が分からない。結局は自分の座標を失い、全体の均衡が崩れる。均衡が崩れた時、どのような結果になるのか、韓国の歴史はそれを痛いほどに示している。生存のためなら相手が悪魔だとしても近づくのが戦略的思考だ。天才数学者ジョン・ナッシュが生きていたら、今の韓国にそう忠告していることだろう。