コラム:円安に冷めた海外勢、年後半に円高シフトか=佐々木融氏
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長
[東京 29日] - 筆者は現在、英ロンドンに出張中だが、最近のドル円相場の急速な上昇に対する現地ヘッジファンドと機関投資家の反応はかなり冷静で、若干冷めた印象すら受ける。
ドル円相場は過去2週間で大幅にドル高・円安が進み、2007年6月に付けた124.14円を上抜け、2002年12月以来12年半ぶりとなる124.46円まで上昇した。しかし、今回のドル円上昇は、実は「ドル高」によるところが大きい。
ドルが上昇を始めた5月18日以降の主要10通貨の騰落率を見ると、ドルが圧倒的に強くなっており、上から6番目の円に対して4%上昇している。2番目に強かった英ポンドは対円で1%程度しか上昇していないことを考えても、ドルが圧倒的に強いことが分かる。
ちなみに、この間最も弱かったのはノルウェークローネで、円に対しても3%下落している。その次に弱い豪ドル、ユーロもそれぞれ対円で1%程度下落している。
日本人にとっては、ドル円相場が12年半ぶりの高値を更新したことに特別な感情があるが、ロンドンの投資家からすれば、全体的な「ドル高」の中の1つの動きにすぎない。ここからさらにドルが上昇すると予想している投資家は多いが、12年半ぶりの高値を更新している対円でドルロングポジションを積み上げるより、直近の高値さえ超えていない対豪ドルや対ユーロでドルを買った方が良いと考える投資家が多いのである。
例えば、ドルはノルウェークローネに対して過去2週間で7%超上昇しており勢いがあるが、3月中旬に付けたドルの高値に比べると7%もドル安水準にある。ドルに対して強気なら、わざわざ対円でドルを買わなくても、勢いがあり、まだ上値余地が十分にありそうな対ノルウェークローネで買った方が良いと考えるのは自然なことだろう。
<政策変更を伴わない円安の限界> 続く...