よく「養殖のふぐには毒がない」と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
毒を持っている可能性はある
実は、養殖のふぐでも毒を持っている可能性があります。ふぐは食物連鎖によって毒化するので、プールのような水槽で毒のないエサを与え続けて大きくすれば、無毒のふぐを作ることは理論的には可能なのですが、実際には、海に網の囲いをして養殖したり、より天然物に近づけるために湾内を仕切って養殖していたりするところもあり、その場合は、網の間から侵入してきた毒化プランクトンや毒化した貝類などを養殖ふぐが捕食して毒化するという可能性が大いにあるのです。
天然ふぐによって毒化されることも
また、無毒の養殖ふぐと有毒の天然ふぐとを同じ生け簀に入れておいたところ、無毒だった養殖ふぐが毒化されたという報告もあります。実際、無毒の養殖ふぐが有毒の天然ふぐに襲いかかり、その後、その養殖ふぐが毒を持つようになったということもあるようです。ふぐをつつくと大きく膨らむというのはよく知られていますが、このとき、ふぐは体の表面からテトロドトキシンを放出するという研究の結果が報告されています。つまり、無毒の養殖ふぐが有毒の天然ふぐに襲いかかるというのは、天然ふぐが持っている毒を自分のものにしようとする行為だと考えられています。
養殖ふぐのエサに毒を混ぜる研究
このことから、天然ふぐから毒素を取り出し、発酵魚粉飼料の中に混ぜて養殖トラフグに与え、魚病予防や噛み合いを少なくさせる飼育研究が進められました。これは、毒を持たない養殖トラフグに、天然物質のふぐ毒を抽出しエサと一緒に与えることで、一種の予防ワクチンの効果を生み出し、寄生虫に対する免疫力とふぐそのものの精神安定で噛み合いの防止ができるのでは?というユニークな発想から生まれたものです。その結果、実験の第一段階において、毒素を与えたふぐと与えないものとの差がはっきり表れ、毒素を吸収したふぐは免疫力によって生存率が高くなっているという順当な成果が出てきたといいます。これにより、ふぐにとってのふぐ毒は生存に必要な生体防衛物質であり、ふぐ毒を持たない養殖ふぐは天然物に比べ魚病や寄生虫に対する抵抗力は弱いが、毒含量の投餌によって内臓や皮に毒素が蓄積されるという結果が出たのです。
現時点では無毒ふぐを生産するメリットはない
現在は、テトロドトキシン含有のエサが発売されており、養殖ふぐの生育のため、高価ではあるもののふぐ毒含有のエサを与えている生産者もあります。なぜなら、国で認められていないということもありますが、現時点では無毒ふぐを生産するメリットがないからです。そのうち、養殖ふぐは無毒であるという神話は崩れ、むしろ養殖ふぐのほうが危険であるということがいえるようになるかもしれません。