起業家に大事なのは信念と柔軟性を持つこと

by 森川 亮 (起業家)


「起業家にとって何が大事なのか」という質問をよく受けます。起業家になる人たちはやはり、やりたいことがいっぱいある人が多いのですが、結局すべてはできない。

では、何からやったらいいのか?それは「何を削るのか」を考えるといいと思います。

考える際に有効なのは、素朴な疑問から考えることです。たとえば売上とサービスとどちらが大切なのかとか、そういう疑問です。その答えは自分の中にあるはずなので、それを整理するんです。結局、何をやるか絞れない人は、普通の起業家にしかなれません。

いい起業家と普通の起業家の差


例えば利益率が5%、成長率も5%、という規模の事業があったとします。そして、その事業をやっている人たちはいい人たちで、みんな楽しくやっていたとします。

そういう事業を、本当に事業として認めるかどうかが、いい起業家と普通の起業家の差です。利益が出ているからといって、認めるのは普通の起業家です。たぶん、その事業の先に新しい未来はありません。

それを辞めてでも、成長分野に投資するような判断をできるかどうか。それができないベンチャーは中小企業なんです。特に日本のような成熟した国で世の中を変えるような動きを作るためには、利益率50%ぐらいの事業か、もしくは赤字の事業か、どちらかで勝負をかけてほしい。

きちんと利益が出ていて、みんな楽しくやっている事業をやめるという判断をすれば、当然、現場の社員に嫌われます。利益率5%・成長率5%の事業をやっている現場の人たちはみんな幸せに働いているわけで、それをやめるといったらもう、ほとんどの人が反対します。

LINEにいたとき、たとえば他社に事業譲渡をするときなど、昔はよく社内から不満の声が聞こえてきたり、嘆きのメールが送られてきたりしました。(なので、僕は社員に会わないようにしたんです。会ってしまうと、情が移ってしまい冷静な判断が出来なくなって思しまうからです。もちろん会社が小さいうちからそんなことをやっているとみんな会社をやめてしまうので、大きくなってからですが(笑))。

そのためにはやはり、信念(明確な目標)を持っていなければ、多少なりとも利益がでている事業をやめるという判断はできません。結局、起業家にとっては、「起業の目標が何なのか」が重要なんです。

ただし、起業は多くの人を巻き込むことになるので、自分の金儲けのために起業するのだけはやめたほうがいい。賢い人ならば、一人でデイトレーダーとかをやってもらったほうがよっぽど儲かります。

起業家に必要なのは柔軟性と信念


「強みに寄りかからないほうがいい」ということも起業家によく話します。もちろん起業家にとって強みは必要ですが、あくまで自分の強みが他人にとってメリットかどうかが大事です。起業家になる人にはそこを勘違いしている人が多い(笑)。

自分の強みがうまく他の人のニーズとマッチすればいいのですが、そうでないと意味がありません。周りがその人のことをスゴイと思っていないのに、俺はスゴイと思っていても全然意味がない。むしろ迷惑な話ですよね。

起業家は自分の強みを発揮しようとするのではなく、なるべく世の中のニーズに応えようとした方がいいと思います。そうしないと、自社の強みはこうでこれで差別化して世界を狙うみたいなことを言ってみたものの全然ニーズがなかった、なんてことになりかねません。

つまり、いまの起業家に必要なのは、柔軟な中に信念を持つということではないでしょうか。

さじ加減が難しいのですが、いろいろな人たちの話を聞いていると、特にいまの時代は柔軟性を求めている。これをやらなきゃいけないとか、これが正しいとか、そういうものがひと通り失敗している時代なのかなと思います。

だから「俺の生き方はこうだ!」みたいな本を出したら、次に失敗する確率が高いと思います。いかに緩くあるかみたいなものが大事だと思うんです。ただ、緩いだけだと流されてしまうので、その中にどう芯を作るかみたいなところが次の時代の考え方になるはずです。

例えば、天候の変化が激しいという現象があったときに、その現象を変えなきゃいけないと思う人が多いわけです。でも僕たちにそんな力はない。であれば、そのなかでどう幸せに生きるのかを考えるしかない。

それはビジネスも一緒です。

いまの時代がどうなっているのかを考えて、それを利用してどう正しく生きるのかを考えるしかないんです。いまだと少子高齢化で若い人に元気がないというのであれば、逆にそこを生かして、若い人をどう元気にできるのかを考えるとか。そういう時代の中でどう楽しむか、そういうものが大事なんです。

やはり時代の流れには逆らわないほうがいいのではないかと思っています。逆らってもいいことが何もないですから。

僕は常に、水のようなイメージを持っています。もし僕が水だったらどう流れるのか、ここで水を流したときにどう流れると大きな川になるのか、そんなことを考えています。その緩さ(柔軟性)の中で芯を持てばいいんです。

緩さの中に芯を持つためには、周りの人の幸せを考えることです。周りが幸せじゃない人は、絶対幸せにはなれないですから。そうすると、全員は無理なので誰を幸せにしたいかが大事になります。幸せにしたい人のところに自分も行って、自分も相手も幸せな環境をまず作る。そこから広がっていって、その規模が大きくなる。それが市場にもなるし、国にもなるし、ということだと思うんです。