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ASIAN KUNG-FU GENERATIONが、約2年半ぶりとなるアルバム『Wonder Future』をリリースした。
新作は、シンプルな曲調にロック本来の“熱”が生々しく息づくアルバム。レコーディングはフー・ファイターズのデイヴ・グロールが所有するプライベートスタジオ「Studio 606」で行われ、そのことが曲調にもサウンドにも大きな影響を与えている。
「強い表現とは何かを考えた」――と語る後藤正文に、今、アジカンはどんな音を鳴らし、どんな言葉を歌うべきと考えたかを訊いた。そして彼が2015年の日本の社会の状況をどう見ているのかを語ってもらった。非常に示唆的な対話になったと思う。(柴 那典)
「アジカンが背負うものは大文字の『ギターロック』」
――今回のアルバムの制作はどういうスタート地点から始まったんでしょうか。
後藤正文(以下、後藤):去年の2月、『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』に向けて「スタンダード」の作業をしていた頃ですね。次はエモとかラウドとか、そういうアルバムを作るのがいいんじゃないかと。「実現するかどうかわからないけれど、デイヴ・グロールにプロデュースを頼んでみたいんだよね」という話をみんなにしました。
――デイヴ・グロールと仕事をしたいという思いは最初からあったんですね。
後藤:それを最初にメンバーに伝えたんです。みんなもそれはいいんじゃないかということだったので、一度打診してもらおうということになりました。『THE FUTURE TIMES』の取材を通じてのパイプもあって連絡はついたんですけど、ツアー中なので時間がなくてプロデュースはできないということで。でも、スタジオを使ってもいいよと。
――デイヴ・グロールにプロデュースを頼みたいということは、どういうところから思ったんでしょう?
後藤 :彼らの『ウェイスティング・ライト』というアルバムがあるんですけれど、1曲目の「ブリッジ・バーニング」の冒頭でデイヴ・グロールがシャウトするところがあるんです。「ア゛ー!!」みたいな声で。みんなと「これだよね!」って話をして。それと比較して、自分達が小手先みたいなものに走ろうとしていないか、それぞれのフレーズに説得力があるのかどうか。そういうことは考えましたね。
――そのデイヴのシャウトがキーワードだった。
後藤:制作の中で、「お前、それデイヴの『ア゛ー!!』に勝ってんの?」って話はよくしました。理詰めで考えたキレイな和音よりも、あのシャウトの方が強いエネルギーがあるよね、って。そのまま真似するわけじゃないけど、ああいうことをやっていかないと、どこまでも届くような強さは宿らないという話はしていました。
――つまり、難しいことやセンス競争じゃなく、衝動的な気持ちよさと音楽をイコールで繋ぐことが自分たちにできているのだろうかという問いかけもあった。
後藤:感情がアウトプットするには技術が必要だと思うんです。たとえ遠回りであっても出てきたものが説得力を持っていればそれでもいいんですけどね。だいたい、良くないものは説得力がないので。
――このアルバムには、その説得力がありますよね。基本的にはシンプルな8ビートのハードロックだけれど、音にちゃんと説得力が宿っている。そこはフー・ファイターズのスタジオで録ったことの結実なのではないかと思います。
後藤:そうですね。どの楽器も録音した音自体がいいのでそれがすごく嬉しいなと思いました。音がいいってだけで聴き手にとってはフックになるし、届くまでのスピード感があがる。自分たちの感情はコード進行や音色に翻訳しているつもりですけど、そういうものが、回りくどくなく届く。言葉はスピードが遅いんです。だから言葉に関しては、まずは受け手にいったん抽象的でもいいからぶつかって、時間を掛けて相手の中でその意味がほぐれて出てくればいいと思っているんです。そういう言葉とサウンドのバランスを考えると、L.A.での録音は自分たちがやろうとしていることに合っていると感じましたね。
――遡ると、今回のアルバムの制作を始めた去年の2月はGotchのソロも作っていたタイミングですよね。その時のインタビューで後藤さんは「アジカンは背負うものが大きい」と言っていました。それがソロをやった理由の一つである、と。改めて、アジカンの「背負うもの」というのは、どういうものなんでしょうか。
後藤:大文字の「ギターロック」って感じがします。ちゃんと8ビートをやる。ダサくてもやるんだっていう。ダサくするつもりはなかったですけど(笑)。2拍4拍にスネアが入っているようなオーセンティックなビートのロックバンドって、周りを見てもどんどん減っているような気がしますからね。一方で、ポストロック的なプロダクションとかニューウェーブに近いものが多いですよね。あと、ソロでやった音楽性はアジカンとは食い合わせが悪いような気もした。やっぱりこのバンドでやるのはシンプルなものが一番気持ちいいのかなと思いました。いわゆるロックというものに、いい意味でも悪い意味でもこだわってやっています。
――それはどういう意味で?
後藤:ありとあらゆる手法が存在するのに、ギターロックの枠から望んで出ていかないわけですよね。アジカンの生真面目さとか不器用さみたいなものは、そういうロックが好きというところに回帰する感じがあります。
――リスナーが期待するアジカンのイメージというのはどれくらい意識しますか?
後藤:ファンが喜ぶかどうかというのは、あまり大きな問題ではないですね。もちろんソロと比較したら、喜んでほしいと思っていますけれど。ソロに関しては、どう評価されてもいいと思って好きなことをやっているので。
――以前には「アジカンでは自分なりにロックスターを引き受けようとしている」と言っていましたけれども。
後藤:ここ何年かはそういうモードにありますね。ただ、曲を書く時に「このくらいだったら喜んでくれるんじゃないかな」っていう考え方はリスナーに対して失礼なんですよ。自分の作品に対して、気合いを入れて、あたふたしたり緊張したり、右往左往しながらやる。それが、一番のリスナーへの誠意だと思うんです。誰かに喜んでもらえる可能性があるならば、それしかないと思うんですよね。
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