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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平が3000人訪中団を
熱烈歓迎した現実が意味すること

加藤嘉一 [国際コラムニスト]
【第52回】 2015年5月26日
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約3000人の日本人訪中団を歓迎
習近平の演説に隠された意図

先日、習首席が日本人訪中団を前に行った演説は、日本との外交関係を高度に重視している内容だった。演説の背景には、どんな意思があったのだろうか Photo:REUTERS/AFLO

 5月24日、朝7時、北京時間――。

 中国共産党中央で外交政策の立案に携わる幹部から、ショートメールが送られてきた。そこには前日の夜、習近平国家主席が、訪中した自民党の二階俊博総務会長に同行した約3000人の日本人訪中団を前に、演説を行ったことを受けたコメントが記されていた。

 「故郷と歴史を大切にする習主席が、地元の陝西省を引き合いに出しながら、西安が中日交流史の窓口になった歴史、しかも日本の使節を代表する阿倍仲麻呂と唐代詩人を代表する李白や王維らが深い友情を築いた歴史を、自らの言葉で振り返った。日本との外交関係を高度に重視している証拠だ。現に習主席は演説の内容や文言にとことんこだわっていた」

 共産党機関紙である『人民日報』は、5月24日付の一面トップで、習主席が日本の3000人訪中団の前で演説をしたことを報じた。写真には、紅字で記された「中日友好交流大会」という壁をバックに、青いネクタイを着用した習主席が比較的穏やかな表情で映っていた。

 「中国は中日関係の発展を高度に重視している。中日関係は困難な時期を経てきているが、この基本方針は終始変わらないし、これからも変わらない。我々は日本側と手を携えて、4つの政治文書の基礎の上、両国間の善隣、友好、協力関係を推進していきたいと願っている」

 このように、対日関係重視という基本方針がこれまでもこれからも変わらない政治的立場を自ら主張した習主席の「中日友好交流大会」への出席と演説を大々的に報じたのは、前述の『人民日報』だけではなかった。共産党のマウスピースと称される国営新華社通信は5月24日、“習近平:中日友好的根基在民間”と名づけた記事をヘッドラインで配信した。習主席が演説のなかで最後の主張として口にした「中日友好の根幹と基礎は民間にある」という一節である。

 党中央でプロパガンダを担当する宣伝部の知人に確認してみると、「習主席があそこまで対日関係を重視されている。我々の立場も、中日友好の重要性を全面的に宣伝する方向で一致した」とのことであった。

 確かに、私が本稿を執筆している2015年5月25日4時(北京時間)の時点で、新華網(新華社通信ウェブ版)、人民網(人民日報ウェブ版)、央視網(中国中央電視台ウェブ版)、鳳凰網(香港フェニックスグループのウェブメディア)、そして中国の4大ポータルサイトと称されることもある新浪、網易、捜狐、騰迅すべてのサイトにおいて、習近平国家主席が中日友好交流大会に出席し、演説をした旨がヘッドライン(トップ記事)として報じられていた。

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加藤嘉一 [国際コラムニスト]

1984年静岡県生まれ。日本語、中国語、英語で執筆・発信する国際コラムニスト。2003年高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。学業の傍ら、中国メディアでコラムニスト・コメンテーターとして活躍。中国語による単著・共著・訳著は10冊以上。日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)、『いま中国人は何を考えているのか』(日経プレミアシリーズ)、『脱・中国論—日本人が中国と上手く付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。2012年2月、9年間過ごした北京を離れ上海復旦大学新聞学院にて講座学者として半年間教鞭をとり、その後渡米、ハーバード大学ケネディースクールフェロー、同大アジアセンターフェローを歴任。2014年夏からは米ジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院の客員研究員として、ワシントンDCを拠点に“日米同盟と中国の台頭”をテーマにした研究・発信に挑む。米ニューヨーク・タイムズ中国語版コラムニスト。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。趣味はマラソン。座右の銘は「流した汗は嘘をつかない」。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

 21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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