目立つことだけがスタートアップじゃない
byイセオサム(起業家)
新しくプロダクトをリリースしたとき、人に言いたくなりますよね。多くの人は、Facebookやtwitterにもポストするし、「Tech Crunch」や「CNET」 、「THE BRIDGE」などのテックメディアに取り上げてもらえるよう、取材の相談をしたりします。
3年前くらい前までは、僕はどのプロダクトでもそのようなやり方をしてました。これまでずっと、誰からも注目されなかったから。僕は、目立ちたかったんだと思います。
ただ、いくつかサービスを当てることができて(まだ大きくは無いけど)、そうじゃないやり方もあるんだな、ということに気が付きました。「MERY」を運営する株式会社peroliや、アプリを大量に持っている株式会社IGNISを見つつ、プロダクトとユーザーだけに向き合っていてスゴイなあ、と思ったり。
そこで、起業してからこれまで7年で10個ほどのサービスをやってきて、目立つことのメリット、デメリットが少しわかってきたので書いてみます。
目立つことのメリット・デメリット
まず、目立つことのメリット・デメリットを紹介します。
メリット
・多くの仲間からフィードバックを得られる
・ユーザー増加に役立つ
・クライアント獲得をスムーズにする
・資金調達や事業の提携をスムーズにする
・採用に役立つ
デメリット
・パクられたり、競合の成長を早める
・外野の声がノイズになる
・嫉妬を生む
数で考えると、オープンにするメリットのほうが大きく見えるかと思います。しかし、実際にはメリット・デメリットはケースバイケースの場合が多く、単純にどちらがいいとは断言できません。
そこで、僕が「今思えばこうだった」という具体的事例を、3つ紹介したいと思います。
アドラッテでリワード市場をつくった話
2011年の冬に、動画を見て、クイズに答えるとポイントがもらえる、「アドラッテ」とうサービスをリリースしました。
韓国で仲良くなったスタートアップと共同で運営していたのですが、翌年の2012年にアプリDLのブーストメディアにピボットしてからブレイク、100万インストールを突破して月の売上が数千万円に急成長しました。
当初の2011年「動画リワード」というマーケットがなかったので、とにかく目立ってクライアントを啓蒙しよう、という戦略でした。ad techに出たり、セミナーやったり、資料をばら撒いたり。このタイミングでは、ちょっと早すぎてクライアントも、その他の企業もほぼ見向きもしませんでした。
しかし、2012年になって、iOSアプリのブーストが一気に流行り、アドラッテ一つでランキングを自由自在にコントロールできるようになりました。僕らも気持よくなってしまって、セミナーや資料、事例集など情報をフルオープンにし、ダンディ坂野さんと大量の水着ギャルが出演するPVを作ったりした結果、目立ちすぎました。
CMを見て、クイズに答えて、ポイントを貯めるスマートフォンアプリ「AD ...news.livedoor.com
このタイミングで、僕らの商品を販売していた代理店や、アプリ事業者たちがこぞって「アドラッテと同じもの」をリリースしまくりました。
当時はプロダクトとマーケティングの力で、競合が出てきても突破できると思っていたのですが、2つの「リプレイスコスト」を読み違えた戦略ミスでした。
1.メディアのユーザーがコミュニティではなく、「情報」や「金銭的メリット」のみを求めている場合、サービスのリプレイスが簡単に起こる。
2.代理店に広告の販売経路を握られると、その会社の自社メディアに商品を簡単にリプレイスされてしまう
反省点は、「競合優位性を早急に築く」「一気に資金調達して走り抜ける」「嫉妬を生むような情報は出さない」などの判断ができなかったことです。こちらのサービスは競合に変則的に事業譲渡し、幕を閉じました。
boketeでユーザー=自分たちという運営をした時の話
「写真で一言ボケて(bokete)」というサービスがあります。これは、友人の@kamadangoと@yusukebeが2008年から運営していたサービスです。これを2012年にアプリ化するときからジョインしました。
僕ら自身が本当にこのサービスが好きで、友達に笑ってほしいから、とガンガンメディアに出ました。人前で話す機会も多く頂いたので、内部でやっている「グロースハック的手法」も共有しました。これは@yusukebeが参加しているYAPCや、perl技術者たちの日常の交流を見ていて、会社やサービス間を問わず情報を共有しているコミュニティに感化されたのが大きいです。
実際、YAPCにはLINE、DeNA、クックパッドなどの技術者たちが、自分たちの好きな技術でよいサービスが生まれるよう、ガンガン発信しているのがすごくかっこよかった。だから、エンジニアコミュニティのような生態系が、ディレクターや、マーケッターにも生まれたらいいなと思ったのです。一方、アドラッテの反省からマネタイズ周りのお話はしないことにしました。
まとめると、boketeの時にやったことを振り返ると
- 僕ら自身がユーザーのサービスは、ガンガン情報を出していく
- 情報を出していけば、多くの人がもっと情報を教えてくれる
- マネタイズ手法はオープンにしない
ということです。
ViRATESでステルスからオープンに切替え
2014年の4月から、株式会社狩猟社の孫良が立ちあげたメディア「ViRATES」を手伝っていました。当時は「バイラルメディアがくる」というなんとなくの感覚だったのですが、それを実験するために運営者情報を明かさず、ステルスで取り組んでいました。
当時、バイラルメディアは、グルーポンやリワードメディアのように、参入障壁が低いサービスということをすごく気にしていたので、極力ユーザーに対して以外は目立たないようにしていました。
一方で、「運営元を公開せずに、メディア運営を続けることは難しい」ことも想像がついていました。一部のコピペメディアを除き、編集部をもって、ネタを探して、記事を書く、というのは相当な労力がかかります。メディアのブランドも必要ですし、資金も必要です。しかし、ステルスでは、ブランド化も資金調達も難しい。
なので、「スマホ時代の週刊誌」というキャッチフレーズがかたまり、そこに出していく動画を自分たちでつくろう、となった時に、経営チームをオープンにし、資金調達を実施しました。
この時のジャッジは下記3点のポイントです
1.メディアとしてのブランドを確立していくために、運営チームを明らかにすることが必要
2.まだ見えていない「動画」事業に取り組むにあたり、多くの情報を得たい
3.資金調達や提携をスムーズに進めるために、市場での存在感を出していくことが有効
まとめ
目立つかどうかのジャッジにはそれぞれメリット、デメリットがありますが、最後はパーソナリティの問題もありそうです。僕の場合は、情報を出して頂いて、成長してきた部分が多いので、なるべくコミュニティに還元したいと考えています。
完全に動向が見えていたらステルスでコツコツ続けるという選択肢もあるのですが、なんだか僕には合わないようです。「ViRATES」でのステルス期間はほんとに辛かった。
でも、これからは立ち上がりつつある動画コンテンツ、メディア事業を一緒に立ち上げていくような感覚で皆さんと接することができたらと思います。