ロシアのチェリャビンスクで開催された世界テコンドー選手権。閉幕を翌日に控えたこの日、試合に臨む各国選手たちは相手を倒そうと真剣そのものだった。観客席では有料のチケットを購入した7000人以上のロシアのテコンドーファンたちが、歓声を送りながら試合を見守っていた。英国、トルコ、タイ、ウズベキスタンなど、さまざまな国が金メダルを獲得するのを目の当たりにすると、今やテコンドーは韓国だけのものではないことをあらためて実感した。
とりわけ各国の代表チームスタッフたちが自国選手たちの強化のために注ぐ情熱とその取り組みは想像以上だった。まず記者席は数多くのビデオカメラに占領されていた。中でも最も目に付いたのは、5台のカメラで試合を撮影する英国チームだ。会場では四つの試合が同時に行われるが、その一瞬も見逃さないため常にカメラを回しているのだ。英国でビデオ分析を担当するラドクリフさんは「今大会には12台のビデオカメラを持ち込んだ。試合の細かい場面を全てリアルタイムで撮影し、それらのデータベースを構築して選手たちがいつでも自分の見たい試合を手軽に見られるようにした」と話した。
「GBテコンドー」という愛称を持つ英国代表は、選手育成がシステム化されていることでも知られている。強化担当のスタッフだけでも総勢20人にもなるが、その中には6人の強化コーチに加え、ビデオ分析担当やメンタルケアの専門家なども含まれている。GBテコンドーの運営責任者を務めるフーリン氏は「今大会には12人のスタッフが派遣され、各自に与えられた役割をしっかりと行っている」「観客席で腕を組んで試合を眺めるだけの人間は一人もいない」と述べた。
フーリン氏が語る「観客席で腕を組んで試合を眺めるだけの人間」とは韓国代表の関係者のことだ。今大会の取材を行う中、記者も理解し難かったことの一つが韓国代表監督の行動だった。韓国は他国とは異なり、監督はセコンドをしないので競技エリアには入らず観客席で試合を見守っている。