IS人質事件報告書:「本気で救出考えたか」…疑問の声

毎日新聞 2015年05月21日 21時56分(最終更新 05月22日 00時00分)

 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人人質事件で、政府の「邦人殺害テロ事件の対応に関する検証委員会」が21日にまとめた報告書。「対応に誤りがあったとは言えない」と政府の主張に沿った結論が出されたが、犠牲となった後藤健二さんの遺族や知人からは、疑問の声が上がった。【内橋寿明、鈴木泰広】

 報告書は、事件を「救出が極めて困難なケース」と位置づけ、「政府の判断や措置で救出の可能性を損ねるような誤りがあったとは言えない」とした。

 後藤さんの兄、純一さん(55)は、事件での政府の対応を「努力はしてくれた」と振り返る。ただ報告書については「政府寄りの内容。どうすれば救出できたのかという検証が必要では」と語った。「政府はこれで区切りとするのだろうが、今でも思い出すとつらい」との心情も吐露した。

 後藤さんの知人でフォトジャーナリストの豊田直巳さん(59)は「『なぜ救えなかったのか』という問いから出発していない」と指摘する。政府がISと直接交渉しなかった理由について、報告書は「理性的な交渉が通用する相手ではない」としたが、豊田さんは「直接交渉する以外に道はなく、政府は本気で救出しようとしたのか疑問だ」と批判した。

 一方、テロ問題に詳しい板橋功・公共政策調査会研究室長は「日本を利用してヨルダンへの要求を突きつけるという事件の性質上、政府が取れる対応は限られていた」と理解を示す。そのうえで「報告書が挙げた課題は以前から指摘されており、今後どうするのかという議論が不十分だ」と指摘した。

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