教育も満足に受けられない貧困街で育った少年が、10数年後にビリオネア(億万長者)になる。一代で大成功を収めた、まさに「アメリカン・ドリーム」を体現するアメリカ・ビリオネアの意思決定をご紹介します。
今回ご紹介するのは、アメリカ・シアトルにある町の小さなコーヒー豆販売会社を、世界的企業にまで成長させたスターバックス・コーポレーションCEO、ハワード・シュルツの人生です。
小さなコーヒー豆販売会社を世界的企業に
献血をして学費を稼ぐ
現スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏は1953年、ニューヨーク市、ブルックリンの貧困街に生まれました。父親は高校を中退したトラックの運転手。貧しい家庭ではありましたが、幼い頃から自分の能力を信じるように教えられたハワード青年は、シュルツ家で初の大学進学を成し遂げます。ときには、献血をして学費を稼ぐなどしながら、貧しい学生時代を過ごしました。
大学卒業後は調理器具や家庭用品の販売に携わり、その後、シアトルに渡り、スターバックスという小さなコーヒー豆の販売店を知ります。そこでは、店主が海外から厳選して仕入れたコーヒー豆の素晴らしい香りがあふれていました。そして、豆を購入した人たちに対してコーヒーの焙煎方法や入れ方を丁寧に伝えるスタッフの姿勢に感銘を受け「ここで働きたい!」とオーナーに懇願し、マーケティング担当としてスターバックスに転職します。
会社を380万ドルで買収しオーナーに
あるとき、仕事でイタリアを訪れたシュルツ氏は、街のあちこちにエスプレッソ・バーが立ち並んでいることに気がつきます。そこは、エスプレッソのおいしさを楽しむだけでなく、時間や空間を楽しむ場であり、イタリア人の生活の一部となっていたのです。
イタリアでの体験に感動したシュルツ氏はオーナーに、コーヒー豆の販売だけでなく、小さなエスプレッソ・バーを始めたいと願い出ましたが、オーナーからの返事は「No」。ならばと、シュルツ氏はスターバックスを退職し、1985年に、小さなエスプレッソ・バーを開きます。彼のエスプレッソ・バーはまたたく間に人気店となり、2年後の1987年に、スターバックスを380万ドルで買収。それまでのコーヒー豆販売という業態を一新し、現在のカフェスタイルとしての店舗展開を始めました。
無謀な出店計画と原点回帰
順調に店舗展開、企業成長を続けていたスターバックス。2000年にシュルツ氏がCEOを辞任、後任を譲った後も順調に成長しているかに見えました。しかし、「企業の成長」に魅了された無謀な出店計画と、人材不足に次ぐクオリティーの低下とブランド力の低下により徐々に顧客の足が遠のき、株価は一時、最盛期から81%も下落しました。
スターバックスの意思決定
再びCEOとして舞い戻ったシュルツ氏は、2008年、7,100店舗を一斉に閉店。目的はバリスタの再教育とブランド力の向上でした。数百万ドルにも及ぶ損失が出てしまい、多くの経営陣から非難を受けましたが、それでもシュルツ氏は譲りません。「スターバックスはなんのためにあるのか」――スターバックスは、原点回帰を目指したのです。
損失により業績が落ち込んだものの、シュルツ氏が復帰した3年後の2011年9月期の売上高は120億ドルと過去最高を記録しました。1987年、たった4店舗の小さなコーヒー豆の販売会社であったスターバックスの2014年の売上は、164億ドル(約1兆9,000億円)にも上り、2015年3月、スターバックスの世界総店舗数はとうとう2万2,000を突破したのです。
人の許容範囲以上のリスクを
シュルツ氏は、自身の半生と成功体験を振り返り、以下のように述べています。
“Expect more than others think possible.
Dream more than others think practical.
Risk more than others think safe.
Care more than others think wise. “
「人が可能だと思う以上のことを求めなさい。
人が達成できると思う以上の夢を見なさい。
人の許容範囲以上のリスクをとりなさい。
人が『これで万全だ』と思う以上に注意を払いなさい。」
まとめ
“Starbucks represents something beyond a cup of coffee.” 「スターバックスはコーヒー一杯以上の価値を提供しています」というシュルツ氏の言葉は、イタリアでの体験がもとになっていました。
シュルツ氏が小さなエスプレッソ・バーを開いたとき、2万を超える世界総店舗数を誰が想像したでしょうか? 彼はオーナーに反対されてもなお、リスクを取り信じる道を突き進んだからこそ、成功を収められたのかもしれません。
ただ夢を見るだけではなく、誰よりも周到で注意深く、そして誰よりも可能性を見いだして走り続けてきたシュルツ氏はまさにアメリカン・ドリーマーと言っても過言ではないでしょう。
- ハワード・シュルツ(スターバックス・コーポレーション/CEO)
- 個人資産(2015年):25億ドル(約3,000億円)