この1〜2年「壁ドン」が流行語になっているが、東京ゲームショウ2014で、「壁ドン」をリアル体験できるブースを作って大きな話題を呼んだのが、恋愛シミュレーションゲームを手がけるボルテージだ。ターゲットを女性にしぼり、さらに恋愛シミュレーションというニッチなジャンルで勝負し、2010年に東証マザーズ上場(2011年に東証一部上場)。2014年には売上高100億円を達成。現在は、ターゲットを男性にも広げ、米国マーケットの攻略も進める。

「東京ゲームショウ2014」において、ボルテージは、女性をターゲットにした「ロマンスゲームコーナー」に出展。ゲームの世界観をリアルに体験できるブースが大きな話題になり、イケメンが「壁ドン」をしてくれるコーナーは、待ち時間が1時間を超える人気に
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 ボルテージの「恋愛シミュレーションゲーム」とは、女性の主人公(=ユーザー)が恋の駆け引きをしながら物語を進めていくゲーム。同社では「恋愛ドラマアプリ」と呼んでいる。物語の中で、イケメンキャラクターとどんな会話や行動をするのか選択肢を選び、お気に入りの人物と恋愛成就というハッピーエンドを目指す。タイトルには、『上司と秘密の2LDK』『誓いのキスは突然に』『ルームシェア素顔のカレ Love Days』『天下統一恋の乱 Love Ballad』などがある。

 ゲーム自体は、各章の舞台となる背景(静止画)とイケメンのイラスト、セリフのテキスト、BGMを組み合わせたシンプルな作り。ステージをクリアしていくことがカタルシスになる一般的なゲームに対し、少女マンガ、アニメ、ライトノベルのような、物語そのものを楽しむコンテンツ。原作の小説やマンガがあるわけではなく、すべて自社でシナリオライターやイラストレーターを起用して制作しているオリジナルだ。

 他に類を見ないジャンルを切り開き、同社を引っ張ってきているのが津谷祐司会長。東京大学工学部を卒業後に博報堂に入社。空間プロデュースを手がけていたが、在職中に、映画を学ぶ目的でUCLA映画学部大学院に私費留学。帰国後、1999年にボルテージを立ち上げて、約15年間、成長軌道に乗せてきた。2013年に代表取締役社長の職を離れたが、米国での展開を本格化するために、2014年9月に代表取締役会長として復帰。妻でもある東奈々子副会長とともにサンフランシスコに拠点を作り、現地採用のスタッフと恋愛シミュレーションゲームを米国で拡大させている。

 実は今年3月に、ボルテージがどのようにしてヒットを飛ばしてきたかの舞台裏に迫った一冊『「胸キュン」で100億円』が発売された。本書には、同社の社員育成方法やコンテンツ作りのノウハウが、具体的に紹介されている。平均年齢28歳で女性が6割という同社にあって、新卒社員でもヒットが生み出せるような仕組みづくりと組織力アップに力を注ぎ、それをマニュアル化。若手社員には、各人が直面している課題解決方法をA4シート1枚の資料にまとめ、役員やマネジャーの前で、約90秒で発表させる「コンテンツ会」を毎週開くなど、独自の方法論を熟成させている。

 そんな独自路線を歩む異色のゲーム会社は、次の一手としてどんなことを考えているのか? 津谷会長と東副会長に聞いた。

津谷祐司(つたに・ゆうじ)ボルテージ代表取締役会長、ファウンダー。1963年福井県生まれ。著書に『コンテンツビジネスのすべてはUCLA映画学部で学んだ。』(幻冬舎)、『なぜ、ネットでしかヒットは生まれないのか』(PHP 研究所)、訳書に『映画監督術』(フィルムアート社)がある。
東奈々子(ひがし・ななこ)ボルテージ取締役副会長、ファウンダー。1969年生まれ。津田塾大学卒業後、博報堂に入社。00年、津谷氏の起業に伴いボルテージへ参画。副社長を経て、13 年から現職
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