「愚鈍な経営は罪になる」あえて業界を潰す企画にチャレンジするWebシステム開発会社|サンデーアーツ
クラウドファンディングシステム『CFS-Cube』、求人システム『ジョブビーンズ』、クーポンシステム『サンデーPon』などのパッケージ販売をはじめ、リーズナブルなWebシステムの設計・構築・開発を手がけている株式会社サンデーアーツ。
前職の労働環境が過酷を極めた代表取締役社長の瀬野陽介氏は「愚鈍な経営は罪になる」と語ります。では、企業と社員がお互いにバリューを感じることができる労働環境とは、一体どのような経営から生まれるのでしょうか。サンデーアーツの今後の展望とともに、お話を伺いました。
一昨年ようやくダウンロード販売の体制が整って。それまでは茶封筒買ってきて、CD-Rをガーッと焼いてました(笑)
瀬野氏がCTOとして勤務していた前職は、会社の方向性や考え方が仲間と合わなくなったため「サンデーアーツを100%自分の出資で創業した」そうです。そして、事業として新しくソフトウェアのパッケージ開発を始めます。
メンバーを集めてソフトウェア開発を始めることになりますが、まずは販売したタイミングで売上が出るパッケージ製品の開発をすることになりました。受託開発をやると、お金が入ってくるタイミングは納品後翌々月払いだったりする。それではキャッシュが回らないので。
当時は新しいビジネスモデルに特化したパッケージを扱う同業者が日本に2社くらいしかいなかったので、つまりガラ空きの市場を攻めました。
瀬野氏も含めて3名の社員しかいない状況でも、パッケージ製品の売れ行きは着実に伸びていき、事業として大きな成功を収めます。しかし、その影響は意外なところで表れました。
フラッシュマーケティング(クーポンシステム)がドーンと売れたので、完全に社内がパンク状態になりました。月曜日になると、お客さまからの問い合わせが20通くらい溜まっていて、3人しか社員がいなかったから全部に返信ができない。契約書を作ったりとか、出荷や発送の処理をしたりとか、もうひたすら家でもがんばってやって。とりあえず手がなくて発送ができなかったのです。
あと、自社の封筒とかないですから茶封筒買ってきて、それっぽく見せて。当時はCD-Rで納品していたので、私がCD-Rをガーッと焼いてたりして(笑)一昨年ようやくダウンロード販売の体制が整いました。
※フラッシュマーケティング;Webマーケティング手法の一種で、期間限定で、割引価格などの特典が付いた商品を販売する方式のことである。特に、クーポンを販売する共同購入サービスを指すことが多い。
引用元:フラッシュマーケティング
“ガラ空きの市場”を攻めることで先行者メリットを獲得してきたサンデーアーツですが、その理由を「まだ小さな会社なので、新規性がないと勝てないんです」と瀬野氏は語ります。
いわゆるアーリーアダプターみたいな人たちに訴求する形のパッケージ販売なので、その商品が本当に普及する時期になったら、撤退するんです。一般化してしまったら競争相手もいっぱい出てきますし、もう売れないから値段を下げていく。これがずっと続いて「2年後同じ値段で売れますか?」と言われたときには、もうフリーソフトが出てきて「なぜ●●円も出さないといけないの?」みたいな状況になるので。
本当に市場に出回っていない、第一先駆者としてパッケージ販売をしていかないと。(だから、新しい市場を開拓する)時間をお客さまに売っているみたいなイメージもありますよね。
※アーリーアダプター:マーケティングに関する用語で、新たに登場した商品、サービス、ライフスタイルなどを、比較的早期に受け入れ、それによって他の消費者・ユーザーへ大きな影響を与えるとされる利用者層のことである。
引用元:アーリーアダプター
大学生のころテレビの『高城剛X』で高城さんに憧れて、ハイパーメディアクリエイターになりたかった
現在は執筆活動を中心に活躍されているクリエイターの高城剛氏に強い憧れを抱いている瀬野氏。それは自身の夢として「ハイパーメディアクリエイターになりたい」と言うほどでした。
私が大学生ぐらいのころは、テレビで『高城剛X』という番組をやっていたり、彼がものすごく流行っていた時期だったのです。ギャンブルのことばかり語っているコラムで「こういう必勝法がある」みたいなことを高城さんが書いていて。まあ、間違っているのですけれど。
でも、インターネットを電話回線でやっていた時代に、彼はいち早くインターネットでメールアドレスを公開して、IT系の中でもすごく目立つ存在だったのです。
「高城さんと同じ体験をしてみたい」という想いから、2011年にシリコンバレーを訪問し、現地でソフトウェアの販売を試みました。しかし、そのとき日本で東北大震災が発生します。
そのとき私たちが手がけていた仕事は、全部東北系だったのです。2社さんから受注していたのですけれど、どちらも被災されて、さすがにお金は請求できない。そこで帰ってきたら、その月の売上がほぼゼロになっていたという。
そのため目標でもあった海外展開は諦めるほかありませんでした。しかし、4年の月日が経過した現在、「会社の体力も付いた今年、もう一回挑戦しよう」と、決意を新たにします。
シンガポールから英語と中国語ができる人に来てもらったんです。パッケージの多言語化をしようと思って。今年の年末にはアクションを起こせるかな、という感じです。その次はスマホアプリ関連のミドルウェアやサービス系を作るかもしれないですね。
愚鈍な経営は罪になる。みんなが働きやすくて、利益が上がる仕組みを作っておかないと
CTOとして勤務していた前職は労働環境が良くなくて。特にプログラマーの世界で業務系と言われる仕事を、銀行や証券会社を相手にしていました。ちょっと年齢層も高めの人が仕切っていて、若い人がいじめられることは日常茶飯事。だから、精神的にまいって病んでしまう人が結構いましたね。一度なってしまうと、またぶり返すこともあると聞くので、これだけは良くないなと思います。
これらの精神的な病の原因で一番重要なのは労働時間だと思うんです。だから長時間労働を徹底して排除するために、利益率の高い仕事を選びます。納期は実際の作業をやって終わるのよりも倍ぐらいの期間で設定して。結果的には、十分なテストや確認の時間を設けることもできるので、お客さまにはより完成度の高いものを提供できていると思います。
同じく労働環境も良質なものにするため、サンデーアーツでは“10年後に食いっぱぐれないようなスキル”を身につけられるような教育プログラムが整えられているそうです。さらに「私たちから与えられる社員へのバリュー。大企業と張り合うと、お金の面で勝てないじゃないですか」と、瀬野氏は続けます。
ただひたすら作業をこなしているのは意味がないのですよね。だから月に1日は仕事をしないで、ステップアッププランという教育プログラムで社員を教育します。
学校卒業して就職して、実力が足りなくて結構うまくいかなくて、全然違う職に転職するパターンがあるんです。そういうような方をどんどん拾い上げて、技術力を身につけていただけるような場として、今はサンデーアーツを設定していて。
「技術力、知識をつけていただく」と言う瀬野氏。しかし、せっかく教育した社員が転職してしまう不安はないでしょうか。そんな懸念に対して瀬野氏は「それはしょうがない」と答えます。
それよりも弊社に来てくれたんだから、できるだけ社員がハッピーになるようにしていきたい。きちんと技術を身につけて「大企業で働きたい」とか「海外に行って、がんばってみたい」とかって言うんであれば、それは全然オーケーです。独立を目指すのであれば、契約書や見積書の書き方とか、実際仕事をやっていくうえで、必要な書類系に関しても聞いてもらえれば全然返しますし。ずっと弊社で働いていただければ、それはそれでありがたいですし。
今の時代、3年から4年で転職される方は多いですけど「何もしないで40歳を超えました」では、もう転職が利かないのです。
社員に寄り添った経営を進め「この会社だったら、いてもいいな」と思える環境作りに注力する理由を、瀬野氏は“愚鈍な経営”という刺激的な言葉を使って語ります。
人を精神的な病に追い込む“愚鈍な経営”は罪になると思っています。無理やりみんなにがんばってもらって、残業代を払わないから利益が出るとか、ちょっとおかしいよなと。
経営者であればそもそも論として、みんなが働きやすくて、それで利益が上がる仕組みを作っておいて、働きに来てもらわないと。そして、みんなで協力してやるんだから1つの方向に向いて一緒にがんばれる、一緒に成長していける社員じゃないと会社として経営が成り立たない。
今まで体験できなかったことを、みんなにさせてあげたい。だから「業界を潰しにかかろう」と企画する
現在もハイパーメディアクリエイターを目指す瀬野氏。夢の実現と「一緒に成長していける」社員への教育や仕事環境の幅を広げるには、海外進出やサービス開発が必要になります。
英語圏の方ともいろいろ話をしてみたりとかすると、そんなに(私たちの)技術力が劣っているわけではない。ただ単に言語の壁があるだけだ、という。こちらがアピールしていないからシリコンバレーの方たちに認知されてないだけであって、ちゃんとアピールをして認知さえしてもらえれば、仕事は一緒にやっていけるだろうと感じているわけです。
社内の技術力を上げるために、制作の自由度が高いパッケージ開発だけではなく受託開発も行い、さらには社員が「他社に常駐する」勤務形態で、海外展開に向けてのアクションを起こしていました。
パッケージ開発は自分たちが作りやすいように製品を作れるけど、受託開発は自分たちの作りたいように作らせてもらえないじゃないですか。「このやり方でやるの?」みたいな。でも、自分たちが慣れていない技術やプロジェクトの進め方をこなしていくことで、社内の技術力がバーッて上がるんですよ。
他社さんに常駐してもらっている社員もいるんですけど、どれだけ儲かってもやめないつもりなんです。なぜなら同じ会社の中にいると3年で技術力がものすごい遅れていくんですよね。「こんな取組みをしているんだ」と、社外で勉強して、新しい技術力を社内に持ち帰っていただくことを続けたい気持ちがあります。だから私も社外に進出したいな、みたいな(笑)
「今までのキャリアでは体験できなかったことを、できるだけみんなにさせてあげたい」と話す瀬野氏。自社のパッケージ開発だけではなく、受託案件を取るときも“おもしろい経験”を積むことを大切にする、サンデーアーツの今後の展望をお伺いしました。
業界を潰しにかかろう、という企画をしている段階なんです。同業の制作会社などの利益を食い潰しにかかろう、みたいな感じで(笑)制作会社が普通は500~600万円で販売するところを、業界の価格を破壊して35万で売ったらみんな困るんやろな、みたいなことをしょっぱなで考えましたね。 価格設定もどうやったらおもしろくなるんやろうな、みたいな。これから業界がちょっとザワつく感じにしたいな。
インタビュー中の瀬野氏の雰囲気を一言で表すと『静かなるドン』。仕事で問題が起きた場合は、2回目を起こさないように「どうしたらいいのかを一緒に考えて、もう1回やってみる」ことを大切にしているそうです。テンションがただ違うだけで、怒ることに「生産性はない」と言い切る経営者のもと、伸び伸びと力を発揮する組織が印象的でした。
インタビュアー:そめひこ / カメラマン:大塚麻祐子 / 編集者:小松崎拓郎
瀬野 陽介氏
飲食店、営業、システム開発会社、ベンチャー企業の勤務・立ち上げ、CTOなどを経験後、2009年、サンデー合同会社を立ち上げ、その後2013年に株式会社化に伴い「株式会社サンデーアーツ」代表取締役に就任。元プログラマーの経験を活かし、海外で注目を浴びるビジネスモデルをいち早くパッケージ化。数々の業界シェアTOPを獲得。