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[FT]アベノミクス、日銀総裁と協力を(社説)

2015/5/12 14:10
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 日本は、人口の高齢化、長引くデフレ、そして労働市場の解決しがたい構造問題やエネルギー供給に悩んでいる。財政状況は畏敬の念を起こさせるほど悪い。こうした状況にある国は通常、最悪の事態に備えた計画を立て、単に最良を期待することだけを助言される。

安倍首相(11日、首相官邸)=共同
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安倍首相(11日、首相官邸)=共同

 だが日本の内閣府は今後数年間、名目成長率3~4%を前提に財政予測を立てている。この20年以上そうした水準に到達したことがないにもかかわらずだ。日本は1990年代初頭のバブル崩壊以来、現金払いベースではかろうじて沈まない立ち泳ぎ状態を続けてきた。

 楽観的な財政予測はしばしば、政府の正しい意向にとって致命的となる。そのような予測によって安倍晋三首相は、増税や慢性的な財政赤字を克服する歳出削減に対する手をほとんど打っていない。いかなる国でも、そうした楽観主義は予測を中立的な第三者に委ねるべきだとの要求を強めるだろう。

 だが日本は多くの先進国らしくはない。ある人は数十年におよぶ日本の成長率低迷に、欧州の停滞諸国を同様に待ち受ける前兆を読み取る。別な見方では、日本は異常値であって、まだ修正可能な間違ったマクロ経済政策の先例だとみる。安倍氏が推進する金融、財政、構造改革プログラムである「アベノミクス」はいまだショックにより休眠から経済を目覚めさせるのに必要な薬である。

 アベノミクスは不運なしに進んだわけではない。消費税増税は消費者の信頼をくじいた。急激な原油安は消費者物価指数の低下を招き、それは消費者が年2%の物価上昇を期待すべきだというシグナルを混乱させた。より悪いことに、安倍氏とインフレ論者の黒田東彦日銀総裁は、デフレの病を終わらせることについて、財政、金融政策における重要性に相対的な違いがあるように見える。これらが現在のアプローチを改善すべきで、あきらめるべきではない理由だ。

■それぞれの活動にとどまるべき

 安倍氏と黒田氏の仕事は、内閣府の強気な予測を実現させるという共通の意思を確認することで最良のことを達成するという経済における期待を変えることだ。当面の間、両氏はそれぞれの活動領域にとどまるべきだ。元財務官の黒田氏は、財政政策に干渉する必要はない。安倍氏の金融政策における役割は、黒田氏に積極的なインフレ政策の前進命令を与えることに限られるべきだ。首相の政治的資質は、潜在成長率を2%に引き上げるための構造改革に使われる方がよい。これは依然として難しい課題で、とりわけ日本の高齢化人口を考えると、財政見通しの最も疑わしい要素だ。

 優先事項として、財政赤字に対応する、日本株式会社の急増する資金余剰に対処すべきだ。これまでのところ政府は、企業に対して従業員にもっと寛大になるよう圧力をかけている。もしこれが失敗すれば――うまくいくことを示唆する経済的理論も存在しないが――、次のステップは貯め込むことがより高くつくような財政措置を含むべきだ。一方、失業率が過去15年来の最低水準に近づくなど労働市場逼迫の兆候は、市場主導の賃金上昇という伝統的な経路を通じて経済に資金を循環させるかもしれない。

 日本は過去数十年、優れた輸出能力でドイツ、米国、英国を足した額以上の外貨準備金を残した。これはアベノミクス反対論者が警告してきた通貨・円の突然の信用喪失を防ぐ助けになる。これまでのところ、円に対する信用が低すぎるというよりは高すぎることが問題で、円が投資や支出よりも預金口座に貯め込まれてしまうからだ。アベノミクスはもし失敗すればリスクにすぎなくなる。それでも成功のために計画することが正しいアプローチである。

(2015年5月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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