1億円の借金で賃貸アパートを建てた老夫婦の苦悩。 (中嶋よしふみ SCOL編集長・FP)
シェアーズカフェ・オンライン 5月12日(火)6時29分配信
昨日、NHKのクローズアップ現代で空き家に関する話題が取り上げられていた。番組は1億円もかけて賃貸アパートを建てた家主が不動産会社とトラブルになっていると報じている。原因は「家賃保証」だ。
■家賃保証=サブリースとは?
相続税の強化で節税対策として不動産投資に注目が集まっている。現在は相続バブルと言われるほどの活況だ。湾岸エリアのマンションが高値で売買されている理由に、相続対策で買われている事が原因という指摘もある。
不動産投資で一番のリスクは入居者が集まらず、空室が増えてしまう事だ。そのリスクを避けるためにあるものが家賃保証だ。これは不動産会社がアパートを一括で借り上げて、入居状態にかかわらず一定の家賃を家主に払う、という契約だ。
不動産会社はどこで利益を出すのかというと、まずは建築を請け負って売り上げを確保する。加えて大家から借り上げたアパートを入居者に貸し出す。これをサブリース(また貸し)と呼ぶ。不動産会社は入居者から受け取った売り上げを100%家主に払うわけでは無く、手数料として一部を受け取るような形だ。高い家賃で入居率も高く維持されれば不動産会社は差額で儲かる事になる。
■家賃保証のトラブルは保証額の引き下げで発生する。
安心して不動産投資が出来るのなら家賃保証は良いしくみじゃないか、という事になるが、トラブルの原因は家賃保証の引き下げだ。番組内で映し出された契約書では、当初10年は最初に決めた家賃を保証するが、その後は二年ごとに改定出来るとされていた。
しかし、家主側はそういった契約内容について正確に把握していないケースがあったり、家賃保証は引き下げないと説明されているケースもあったようだ。説明に虚偽があれば悪いのは業者側という事になるが、契約を把握していないケースについては自己責任というほかない。「家主」という立場は消費者ではないため、事業者同士の対等な立場になるからだ。
この点について、国民生活センターが「不動産サブリースの問題点」という冊子をウェブ上で配布している。中身は弁護士が法的な側面から安易な投資に警鐘を鳴らす内容だが、以下のような文面もある。
「賃貸業のプロたるサブリース業者は、素人たる家主との情報・交渉力の格差を無視し、さまざまなリスクを家主に押しつけているとも考えられます。」
番組で報じられていた事はまさにこのようなケースだが、元々は空室リスクを不動産会社に押し付ける事が出来る、つまり「リスクを取らずにリターンを得られる」と勘違いしている家主側の見通しも甘いという事になってしまう。
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