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Listening:<閣議と閣僚懇>議事録公開 議論場面少なく、意思決定たどれず

2015年05月11日

報道陣に公開された第2次安倍内閣の閣議=首相官邸で2013年1月、代表撮影
報道陣に公開された第2次安倍内閣の閣議=首相官邸で2013年1月、代表撮影

 内閣の意思決定をする閣議と大臣が意見交換する閣僚懇談会について、議事録の作成と公開が昨年4月に始まってから1年余がたった。これまでの議事録を読むと、閣議・閣僚懇談会で実際に議論が交わされる場面はほとんど見られない。事前に提出された文書の読み上げが多く、形式化しているとも言える現状では「意思決定」の過程をたどるのは困難になっている。【青島顕】

 ◇官邸HPに掲載

 定例の閣議は毎週火、金曜日に首相官邸で全閣僚が出席して開かれ、その後に「自由に発言する場」とされる閣僚懇談会が行われる。昨年4月1日開催の閣議・閣僚懇談会から議事録が作成され、首相官邸ホームページ(HP)で読めるようになった。

 議事録の内容はどんなものか。今年4月14日分を例に見てみよう。

 閣議は午前8時27分に始まった。菅義偉官房長官に促され、世耕弘成官房副長官が「一般案件(国政に関する基本的重要事項)等について、申し上げます」と説明を始める。北朝鮮船籍の船舶入港禁止や北朝鮮に対する貨物の輸出入禁止を2年間延長した措置で国会の承認を求めること、国会議員から内閣に寄せられた質問主意書への答弁書9件、叙勲などについて決定を求めた。

 続いて、林芳正農相が「緑の募金運動」への協力として各大臣に緑の羽根の着用を求める。安倍晋三首相の発言は、麻生太郎財務相の海外出張に伴う臨時代理の指定をしたのみで、閣議は終了した。

 そのまま閣僚懇談会に移る。菅官房長官が大型連休中の閣僚の海外出張に関して、政府一体の戦略的な展開を要望した。他に発言はなく、閣僚懇談会も終わった。8時37分。閣議開始から10分しかたっていなかった。ちなみに、議事録公開が始まってから1年間の閣議・閣僚懇談会の開催時間は平均で約13分だった。

 議事録は公文書管理法に従って、内閣の意思決定過程を検証できるように作成している。ところが、第3次安倍内閣発足直後に開かれた昨年12月24日の初閣議で、菅官房長官は閣僚にくぎを刺した。「議事整理上、各大臣の発言は原則(事前に)登録いただく」。閣議・閣僚懇談会で発言するなら、あらかじめ文書で「発言要旨」を提出するよう求めたのだ。さらに菅官房長官は、事前提出の「発言要旨」以外の発言があった場合に触れ、「(議事録には)要点のみを記載する。記載内容は、私にご一任ください」と述べた。

 内閣総務官室によると、議事録は各大臣の「発言要旨」と、陪席する杉田和博・官房副長官のメモをもとに、同室の職員が原案を作成する。菅官房長官と3人の官房副長官が決裁して、約3週間後にホームページで公開している。閣議・閣僚懇談会で議事の録音はせず、議事録の内容の正確性は、官房長官らのチェックによって担保するとしている。

 また、情報公開法で不開示とされる「公にすると国の安全が害されるおそれがある情報」などに関わりそうな発言は非公開とし、議事録に注記する予定。同室によると、公開開始以後の1年間で議事録からカットした発言はないという。

 ◇当初は「30年非公開」案 

 明治時代に内閣制度が始まって以降、約130年間にわたって、政府は閣議・閣僚懇談会の議事録を作ってこなかった。閣議での決定事項などは、官房長官や閣僚らが記者会見して公表してきた。

 民主党政権の2011年に公文書管理法が施行され、国の政策決定過程を後から検証可能にするよう義務付けた。野田佳彦政権は翌年、閣議・閣僚懇談会の議事録作成・公開に向け、有識者による「検討チーム」を設置した。検討チームは、議事録の作成を義務付ける一方、短期間で公開すると自由な議論を損なう恐れがあるとして原則30年は非公開として、その後に公開することを提言し、公文書管理法の改正を促した。

 後を受けた安倍政権もいったん法改正の意向を表明したが、並行して検討していた特定秘密保護法が13年12月に成立すると、公文書管理法改正の動きは立ち消えになった。その代わりに安倍政権は昨年3月、議事録作成と約3週間後のホームページでの公開を閣議決定した。菅官房長官は「法改正して30年後に公文書館に移管するより、現行法の中で速やかに公表した方が、説明責任という観点から国民に理解してもらえる」と説明した。

 ◇「閣僚会議」公開必要

 しかし、公開された議事録を見る限り、閣議・閣僚懇談会で政策に関する活発な意見交換がなされているとは言えない。

 だとすれば、閣議以前に関係閣僚が出席して政策を議論する「閣僚会議」について、その内容を記録し公開することが重要になってくる。安倍政権は昨年7月、170以上ある閣僚会議に関しても、発言者や発言内容を明記した「議事の記録」を残すようガイドラインを改めた。ただ、記録を公開するかどうかは会議を開く府省庁に任されている。

 昨年4月の記者会見で菅官房長官は、日本版NSC(国家安全保障会議)を含め、閣僚会議の議事を記録すると表明したが、「機微な情報が含まれるものを対外的に公表することは考えていない」と述べた。さらに記録する内容も「項目ごとに、こういうことが話し合われたという整理」と説明し、概要にとどまることを示唆した。

 昨年6月に内閣府が有識者を集めて開いた公文書管理委員会では、一定期間後に委員が閣僚会議の記録を見て意思決定過程を検証できるようにすることを求める声が上がった。

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 ■ことば

 ◇閣議と閣僚懇談会

 閣議は週2回の定例のほか、重要な決定がある時に臨時で開かれる。政府提出法案や政令、政府声明や首相の談話、国会議員の質問主意書に対する答弁書、各府省庁の事務次官・局長人事などを決める。閣僚懇談会は閣議の後、閣僚が自らの所管にとらわれず、自由に意見交換を行う場とされる。どちらも首相官邸か国会内の閣議室で非公開で開かれる。通常は閣議前に応接室で報道機関の写真撮影に応じている。首相ら全閣僚が出席し、3人の官房副長官と内閣法制局長官が陪席する。

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