2006年、教育副首相に内定していた金秉準(キム・ビョンジュン)教授が盗作問題で内定を辞退した直後、官公庁では対策の取りまとめに苦心した。当時、文化体育観光部(省に相当)は、盗作問題解決案の研究を延世大学の南馨斗(ナム・ヒョンド)教授(51)に依頼した。
「3カ月以内に盗作防止ガイドラインを作ってほしい」という文化体育観光部の要請に、南教授は「3カ月ではなく3年もらえるならやる」と答えた。既に各学校や研究機関、学術団体で定めている指針にもう一つ追加するよりも、盗作に関する学問的議論や韓国内外の判例を深く研究した方がよい、と判断したからだ。
断られるだろうと思っていたが、承認された。南教授は07年から3年かけて、著作権意識形成のための基礎研究と事例研究、ガイドラインの提案など、3巻からなる研究報告書を作った。その後、再び6年かけて肉付けし、内容を整理して、最近『剽窃(ひょうせつ)論』(玄岩社)を出版した。剽窃(盗作)に関する研究論文は多いが、体系的な研究書にまとめられたのは、韓国では初めて。同書の末尾には「自己盗作も盗作に該当するか」「アイデアの提供者も著者になり得るか」など、普段大学や研究機関で講演する際、しばしば質問される100項目を「剽窃100問」として載せた。(グラフィック参照)
南教授はソウル大学法学部を卒業し、司法試験に合格、弁護士として活動した後、米国シアトルのワシントン大学で修士号および博士号を取得した著作権および知的財産権法の専門家だ。南教授は、盗作が韓国社会でホットな話題になった契機として、大きく三つの事件を挙げた。
第一は、高官の人事検証プロセスで過去の論文の盗作疑惑が浮上し、金秉準教授が副首相候補を辞退した事件だ。次いで、2012年に総選挙が行われた際、テコンドー元韓国代表の文大成(ムン・デソン)議員の論文盗作疑惑が浮上し、盗作の検証は選挙で選ばれる公職者にまで拡大した。2013年には、芸能人や有名講師、運動選手など公人全体に広がった。南教授は「論文を発表したことのある人物は、爆発物の雷管を一つずつ抱えている状況になった。自虐的に言えば、断頭台に首を差し出して暮らしているようなもの」と語った。