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映画という表現も、今まで通りのスタイルであり続ける必要はないと思う

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北野武インタビュー「老人を大切にしようなんて、大きなお世話」

インタビュー・テキスト:柴那典 撮影:菱沼勇夫(2015/04/22)

北野武監督の最新作『龍三と七人の子分たち』が、4月25日から全国公開される。その内容は、元ヤクザのジジイたちがオレオレ詐欺集団の若者と対決を繰り広げるという筋書きのエンターテイメント作品。近年の『アウトレイジ』シリーズでは強烈な暴力描写が話題となったが、今作はこれまでの北野映画の中でも最も笑いの要素を前面に押し出した、コミカルな一作だ。「金無し、先無し、怖いモノ無し!」というキャッチコピー通り、登場するジジイたちの行動原理は、「ノーフューチャー」なパンク魂に満ちたもの。それが痛快な物語の原動力になっている。

一方で、近年の日本においては、昭和時代など過去を賛美しノスタルジーをかき立てるような作品が娯楽映画の王道となっているのも事実。そんな中、なぜ北野武は「ノーフューチャー」なジジイたちをモチーフにした映画を撮ろうと考えたのか? 高齢化社会が本格化する中、人は老いとどう向き合っていくべきなのか。

エンターテイメントを通して見える時代の変化について、そして、そんな中で取り沙汰されるようになった「老害」という言葉について。様々な観点から、北野武監督に語ってもらった。

PROFILE

北野武(きたの たけし)
初監督作の『その男、凶暴につき』(1989)以降、『3-4×10月』(1990)、『あの夏、いちばん静かな海。』(1991)、『ソナチネ』(1993)、『みんな〜やってるか!』(1995)、『キッズ・リターン』(1996)と続けて作品を発表し、『HANA-BI』(1997)では『第54回ベネチア国際映画祭金獅子賞』受賞の他、国内外で多くの映画賞を受賞、評価を不動のものにした。その後、『菊次郎の夏』(1999)、日英合作の『BROTHER』(2001)、『Dolls』(2002)に続き、『座頭市』(2003)では自身初の時代劇に挑戦し、『第60回ベネチア国際映画祭銀獅子賞』を受賞。芸術家としての自己を投影した3部作『TAKESHIS'』(2005)、『監督・ばんざい』(2007)、『アキレスと亀』(2008)に続き、「全員悪人」のバイオレンスエンターテイメント『アウトレイジ』(2010)と続編の『アウトレイジ ビヨンド』(2012)が大ヒットを記録した。『龍三と七人の子分たち』は、17作目の監督作品となる。
オフィス北野
映画『龍三と七人の子分たち』公式サイト|2015.4.25(sat.)ロードショー

単純にジジイが暴走族を組んで暴れ回ったら面白いだろうなって。警察の言うことなんて聞きやしない、「君たちには将来がある!」「将来なんてねえよ!」って(笑)。

―ヤクザを引退した老人たちの活躍を描くという今作のモチーフは、現代の日本とリンクする部分もありますが、じつは以前からあたためていたネタだそうですね。

北野:そうだね。最近は高齢化社会になって、年金の問題やらいろいろ言われるようになってきた。われわれ団塊の世代もいずれジジイばっかりになる。でも、ネタはかなり前からあったんだよ。単純にジジイが暴走族を組んで暴れ回ったら面白いだろうなって。警察だって相手が若いから説得できるんだよね。でも、ジジイの暴走族は脅しても言うことなんて聞きやしない。「君たちには将来がある!」「将来なんてねえよ!」「命を大切にしなさい」「してきたよ!」って(笑)。

―まさにそうですね(笑)。

北野:最初はそういうネタを4コマ漫画みたいな内容で書いていたの。「俺たちに明日はない」っていう、そのまんまのタイトルで(笑)。で、今の時代になって、それを元に映画を撮ろうということになった。オレオレ詐欺や、暴走族がタレントを襲う事件なんかも出てきて、ストーリーをだいぶ作り変えたんだ。ジジイが路線バスを乗っ取って、若いヤツを町中追いかけまわすっていうイメージだけが最初にあって、そこから遡って作り直した。

©2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会

©2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会
©2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会

―物語の核の部分が最初にあったんですね。

北野:そう。でも、今は高齢者が騙されて何百万円も取られるような事件が一杯あるから、それもちゃんと絡ませようって。オレオレ詐欺の連中が、間違ってとんでもなく凶暴なジジイを引っ掛けて焦る。ジジイのほうは金を払う代わりに指を詰めようとしたり、大マジメに「俺の指じゃ足りねえのか!」とか「なんで逃げるんだ、コノヤロー!」って激怒するっていう。そういう面白さを出そうとした。


スマホで見るような映画がジャンジャン出ているときに、「映像美」「カメラワーク」なんて言ってる場合じゃない。だったら、とにかく楽しめる作品を作ってやろうと思った。

―監督はここ数年、特に『アウトレイジ』以降はエンターテイメントに徹した映画作りをされていると思います。観客を楽しませるということを強く意識して映画を作るようになったのは?

北野:映画監督としてアートというか、自分の根源的な部分だけで撮りたい気持ちはあるんだけど、果たしてそれがちゃんと伝わったり、公開してくれるところがあるんだろうか? という気持ちもあって。ただでさえDVDやBlu-rayの時代になって、映画館からフイルムはなくなってるし、デカいスクリーンで観る人も少なくなった。それどころか今はネット配信で、スマートフォンで見るような映画がジャンジャン出てる。そんなときに「映像美が」とか「カメラワークが」だなんて、一人で骨董品屋やってる場合じゃないっていうね(笑)。だったらとにかく楽しめる、作品そのものがエンターテイメントっていうものを作ってやろうと思った。時代がそう変わっているわけだから。

北野武
北野武

―時代が変わったことを念頭に置いている。

北野:もちろん、今の時代は細分化しているからね。昔のアート系ミニシアターみたいな映画館も残っているし、そういうところで評価されるような作品はちゃんと別にある。でも、これはそこにかける映画とはまた違うからね。映画という表現自体も今まで通りのスタイルであり続ける必要はないと思う。

―一方、最近の日本では、娯楽映画の王道としてノスタルジックな作品が受けていますよね。「あの頃は良かった……」と過去を賛美するようなものも多い。

北野:ノスタルジーっていうのはウソだよね。そういう映画も観たけどさ、小道具のオモチャからして一つひとつ違う。自分はちょうど戦後に子ども時代だったから、そういうのを観るとちょっとイラついちゃうところもあって。竹ひご製の模型飛行機だって、ロウソクで竹ひごをあぶって、イチから作んなきゃいけなかったんだから。ノスタルジックに撮るのもいいけど、それは作っている人の理想だっていうこと。都会育ちの人ほど、下町に憧れたりするんだよね。でも、自分はホンモノの下町に育ったから、ああいった映画に描かれるような人物なんてどこにもいねえよ、ってことを知ってる。よそ者に親切にするなんてあり得ないし、あんなのがいたらぶん殴ってるよって(笑)。


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