【モスクワ=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は16日、テレビを通じて全土の国民と直接対話する毎年恒例の特別番組に出演した。昨年来の欧米の対ロ制裁や原油安で停滞するロシア経済に関し「(苦境の)ピークは乗り越えた」と強調した。経済回復の時期については、最近の通貨ルーブルの反転を受け「2年後より早い可能性がある」と語り、昨年末の予測と比べ楽観的な見方を示した。
国営テレビによる国民との直接対話番組はプーチン大統領が全国各地から寄せられるあらゆる分野の質問に生放送で答える形式。2時間を超えた番組中では経済に関する質問が多くを占めた。
世界銀行の予測では今年のロシアの国内総生産(GDP)は3.8%減で、約11年に及ぶプーチン氏の大統領在任中で初めてマイナス成長となる見通し。実質賃金や可処分所得は落ち続けているが、ルーブルは2月以降、原油安の一服やウクライナ東部での停戦発効を背景に対ドルで2割以上反転した。
プーチン氏は冒頭、2014年の経済成長について「0.6%と少ないが、成長は続いている」と指摘。記録的な増加を示したとされる住宅建設や穀物生産などの統計を列挙し、明るい材料もあったと語った。
足元のルーブル高などをアピールし、市民の間で広がる不満や悲観論を抑えたい思惑があるようだ。欧米の対ロ制裁が長引くとの見通しを示したうえで「政治的安定と社会の団結を保てばあらゆる挑戦に対応できる」と述べ、市民に政権への支持を呼びかけた。
ロシアの経済構造については「残念ながら原油(依存)に偏っている」と述べた。経済の停滞は労働生産性の伸びが所得に比べて低いことなど国内問題が主因だと説明した。制裁を逆手にとって輸入代替産業の育成や農業生産の拡大に取り組むべきだと語った。
昨年末に金利を大幅に引き上げた中央銀行の政策対応については「大きな不満はない」と述べた。一方で「中銀の金利の引き下げの決定の後にはいくらか(負担は)軽減される」と語り、利下げによる資金調達環境の改善に期待をにじませた。中小企業への低利融資も拡大する方針も示した。
親ロシア派武装勢力とウクライナ政府が対立する同国東部については「ウクライナ政府に政治的解決の意志がみられない」と指摘。東部の親ロ派支配地域への事実上の経済封鎖を続ける同国のポロシェンコ政権を批判した。
ロシアがイランへの高性能地対空ミサイル「S300」の禁輸措置を解除したことについては「イランの核問題で進展があり、もう禁輸を続ける理由がない」と説明した。米国やイスラエルの批判には「米国は中東にもっと多くの武器を輸出している」と反論した。
プーチン、ロシア