[PR]

 紀伊半島を中心に深い爪痕を残した豪雨災害から3年半。復旧工事にかかわった多くの建設業者が国税当局から「税逃れ」を指摘された。復興特需の終わりが近づき、先行きへの不安から所得隠しに走った業者もいる。公共事業の「甘い汁」に群がる姿に、被災地の住民からは批判の声もあがる。

 「この春で仕事がピタッと止まった。先々のことを考えると、やっぱり不安や」

 豪雨災害で住民28人が亡くなった和歌山県南部の那智勝浦町。その周辺に事務所を置く建設資材会社の経営者はそうこぼす。建設不況が長引くなか、災害後は復旧関連工事の受注が増え、売り上げが通常の3倍近くになる年もあった。その波も引き、今は以前の水準に戻っているという。

 事業の先行きが見えない。復興特需で潤った分を次の仕事につなげよう――。この経営者は今後、取引先になってくれそうな建設会社にお金を贈るため、経費の中に架空の「手数料」を潜り込ませ、原資をひねり出した。

 だが昨年秋から、国税当局が「岡本土石工業」(三重県)と、その周辺業者への税務調査を進める中で、この建設資材会社にも税務署員が来訪。一連の経理処理が所得隠しと認定され、数千万円を追徴課税された。経営者は取材に対し、脱力した様子で話す。「わしにしたら『先行投資』のつもりやったんやが……」。指摘を受けて全額を納付したという。