斉藤寛子
2015年4月13日15時33分
歌人・劇作家の寺山修司(1935~83)が、昨年4月に亡くなった元妻の九條今日子さんに宛てて結婚前に書いたラブレターが見つかった。言葉を自在に操った奇才が恋人へ送ったのは、直球の言葉だった。
第一信
仕事はうまくいっていますか?
これから毎日手紙かくつもり。
紀伊国屋の400字詰め原稿用紙に書かれたラブレター。東京新聞に連載されていた4コマ漫画が切り抜いて貼られ、末尾には「My dear A子 修司」とある。
二人が出会った60年から、一緒に暮らし始めるまでの2年間に書かれた。
当時、寺山は新劇作家として劇団四季の「血は立ったまま眠っている」を手がけ、九條さんは九條映子の名で松竹歌劇団(SKD)から映画女優になり活躍していた。ともに24歳。寺山が「A子」(映子)の大ファンだった。
第二信
きみはいまどこで遊んでいるだろうか、と思うと気がかりでペンも進まない。
第三信
今夜はなぜだか、きみがそんなに遠くにいるという気がしない。
第五信
早く帰っておいで。
売れっ子女優として、九條さんは撮影のために京都や伊豆など全国を飛び回っていた。手紙は毎日のように撮影所や旅館に届いた。九條さんへの思いや手がける作品、将来のことなど、枚数は増えていった。
九條さんは晩年にエッセーで、あまりにたくさんの手紙が届いたので捨てたことがあったと明かしている。しかし、それが寺山に知られてしまい、「何年かすると高価な値段で売れるんだ。文豪からの手紙だ」と諭されたという。
手紙は、寺山の著作権管理を行うテラヤマ・ワールド代表の笹目浩之さん(52)が九條さんの自宅で遺品を整理する中で見つけた。結婚する前に受け取ったラブレターだけが「手紙」と書かれたファイルに収められていたという。
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