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桜井 厚・石川良子 編 ライフストーリー研究に何ができるか
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四六判上製266頁 定価:本体2200円+税 発売日 15.4.9 ISBN 978-4-7885-1398-3 |
◆ライフストーリー研究の再定位のために | |
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ライフストーリー研究に何ができるか 目次 本書の企画意図や経緯について、個人的な思いも交えながら簡単に記しておきたい。本書は桜井厚さんの定年退職の記念として企画された。桜井さんが立教大学を退職したのは二〇一三年三月、それから二年が経過してしまったが、ともあれ出発点はそこである。桜井さんには二〇一〇年秋口に、記念になるような論集を作りたい、そのために研究会を立ち上げたいと伝えた。締切りまでに各自で原稿を仕上げるのではなく、皆でテーマ・内容を検討しながら完成させていくようにしたかったからである。そして二〇一一年一月、ライフストーリー研究会の若手の常連メンバーを中心に呼びかけて第一回目の会合を持ち、ここで「対話的構築主義研究会」という名称が決まった。その後は数ヵ月おきに集まり、適宜メールでもやりとりを行った。また、八ヶ岳の麓にある桜井さんのご自宅で合宿したこともある。 本書を企画するにあたり、調査研究の実践に基づいて方法論を論じること、執筆陣は若手に絞ること、この二点は最初から明確にイメージしていた。とくに前者に関しては桜井さんも強いこだわりがあるようで、研究会でも次のように繰り返していた。方法論といってもいたずらに理論的検討に走ることなく、また単なる調査手順の解説に陥ることなく、常にフィールドに立ち返り、自分が何をやってきたのか論じることが重要である、と。執筆作業に行き詰ったときは、桜井さんのこの言葉を思い出すようにしていた。 執筆者を若手に限定したのは、自分なりの方法論をまだ確立していない、あるいは今まさに確立しつつある者同士で切磋琢磨する機会を作りたかったからである。序章で触れたとおり、これまでライフストーリー研究への疑問や批判に対する応答は不十分なまま留まっていたが、こと若手に関しては方法論に取り組めるだけの調査研究の蓄積がないことが大きかったと思う。しかしながら、私自身の反省を込めて言えば、桜井さんに頼りきりで自分で応える努力をしてこなかった部分もあるのではないか。そして、それゆえに『インタビューの社会学』以降、ライフストーリー研究をきちんと発展させることができなかったのではないか。そこで、桜井さんに影響を受けながら研究してきた若手同士で集まり、それぞれが実践してきたライフストーリー研究を相互検討する機会を持ちたいと思った。 比較的早くから準備を始めたにもかかわらず、ここまで出版が遅れてしまったのは、何より取りまとめ役である私の怠慢と能力不足による。しかし、言い訳に過ぎないとのご批判とご叱責を承知のうえで言えば、この数年のうちに私自身を含む複数の執筆メンバーが、博士論文の執筆や書籍化、就職、異動などを経験したことも無関係ではない。桜井さんが定年退職するタイミングと、研究者人生の初期に桜井さんと出会った若手研究者が節目を迎えるタイミングが重なったことには、単なる巡り合わせ以上の意味があると思う。 本書を作り上げるために「対話的構築主義研究会」を立ち上げたと述べたが、この名称に込めたのは「対話的構築主義をそのまま受け継ぐための研究会」ではなく、「対話的構築主義を批判的に捉え直すための研究会」というニュアンスである。個人的には、桜井さんの研究を「学び捨てる」ぐらいのつもりで取り組んできた。だからと言って桜井さんには回顧録のようなものでお茶を濁してほしくなかったし、生意気ながら現時点における最前線を書いてほしいとお願いもした。 なお、本書の見本として『ライフヒストリーの社会学』(中野卓・桜井厚編、弘文堂、一九九五年)を念頭に置いていたことを付け加えておきたい。故中野卓さんの定年退職を記念して、桜井さんが中心になって企画した論文集である。生活史研究会のメンバーが共同で作りあげ、現在ではライフヒストリー研究における必読文献にもなっている。本書もまた桜井さんの退職を記念しつつ、ライフストーリー研究のみならず社会調査方法論に一石を投じ、やがてはスタンダードに加えられるような水準を目指した。 最後になったが、新曜社の橋直樹さんには大変お世話になった。退職記念論集としてありがちな寄せ集めではなく、質的調査の次の一手を指し示すような論文集を作りたいという趣旨に賛同し、編集を引き受けてくださったことに心から感謝したい。また、橋さんをご紹介くださった小宮友根さんにも、この場を借りてお礼申し上げたい。本書がライフストーリー研究を専門としない人たちにも幅広く読んでもらえるような仕上がりになっているとしたら、それは橋さんが本書に関する相談とも愚痴ともつかないような長話に幾度となく付き合ってくださり、また各章に対して的確で丁寧なコメントを出してくださったおかげである。 ライフストーリー研究に何ができるか。本書が投げかけたこの問いをめぐって、複数の場で対話が生まれることを切に願う。 石川良子 | ||