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大滝詠一のアルバムを買ってしまった。「ノスタルジー普遍の法則」

大滝詠一にノスタルジーを感じた2時間

NHKで「大滝詠一ソングブック」という番組をやっていたのを、録画で観ました。
とっても面白かった。
音楽評論家の萩原健太が大滝詠一の音楽の変遷と歴史を、スタジオで実際に聞きながら進めていく、ゆるい番組。
いとうせいこう(作家・クリエイター)
清水ミチコ(タレント)
太田裕美(歌手)
がゲストで出ていた。

大滝詠一といえば、1981年3月に発表された「A LONG VACATION」がとっても有名です。

「君は天然色」
「Velvet Motel」
「恋するカレン」
「カナリア諸島」

大学生だったボクはこのレコードをホント擦り切れるほど聞いた。
はっぴいえんど時代から伝説の人でしたが、このアルバムが大滝詠一の名前を決定的にしました。

大滝詠一のアルバム

大滝詠一のアルバム

 

他にもソングライターとしても才能があった人です。
たくさんの名曲をさまざまなアーティストに作っています。

76年3月の吉田美奈子のために作った「夢で逢えたら」がとっても有名。
間違いなく歴史に残る名曲です。
ポップでスィートな大滝詠一らしい曲です。
100人以上のアーティストがカバーしているそうです。
ラッツアンドスターのカバーが有名ですね。

太田裕美「さらばシベリア鉄道」。
松田聖子「風立ちぬ」。
森新一「冬のリヴィエラ」。
薬師丸ひろ子「探偵物語」。
小林旭「熱き心に」。
渡辺真理奈「うれしい予感」。

名曲をたくさん作っています。
本当になつかしかった。
仕事があったのに、2時間ずっと見てしまった。

なつかしさは心を癒すのだと思う

人間は「なつかしさ」が好きです。
まだ未経験な未来よりも過去のほうがイマジネーションが働くから。

テーマパークのプランニングをしている人の間で、常識とされていることがあります。
それは「宇宙や未来をテーマにした施設は、なかなか成功しない」ということ。

宇宙をテーマにしたテーマパークはことごとく失敗に終わっています。
以前、九州地方で開業していた、宇宙をテーマにしたパークは、今ではただの遊園地になっています。
リピート力がないってことです。
未来的デザインの施設は、ほとんど例外なく閑古鳥が鳴いています。
各電力会社で展開している、電力館みたいな博物館。
水族館や博物館で展示している映像を使った展示も、開館のときには最新式ですが、あっという間に古くなってしまう。

一度体験したら、もう体験しなくてもいいと思うわけです。

建築物でも同じです。
ステンレススチールとガラスを基本にした、現代建築の清潔で無機質な建物と、レンガや漆喰、石、木などの昔からあるような材料でイメージした建物。
あなたならどちらの建物に癒されますか?
これは商業空間を考えるときに、とっても重要な要素になります。

たとえばノスタルジーをベースにした施設は、何年たっても、人を集めています。
昭和33年をテーマにした、新横浜にある「ラーメン博物館」。
やっぱり昭和30年代をテーマにしたフードテーマパーク「ナンジャタウン」。
その後各地でいたるところに出現した、ノスタルジーをテーマにした施設。

あの大人気の東京ディズニーランドでも、カリブの海賊やホーンテッドマンションは、ちょっとしたマイナーチェンジこそあるものの、ほとんど開業以来変わらないアトラクションになっている。
それに対して、未来や宇宙をテーマにした「トゥモローランド」が、比較的頻繁にリニューアルされているのも、同じ理由なんです。
人間というものは、未来や宇宙よりも「過去」や「懐かしさ」に、安らぎや興味や好感を覚えるということ。
アメリカでは「フィフティーズ」をテーマにしたレストランやショップははずれがないそうです。
アメリカ人にとってはあの輝いていた50年代のデザインが、とってもイマジネーションを働かせる要因なのでしょう。
「過去」や「懐かしさ」は人々に安らぎを与えたり、興味を与えたり、好感度が高く迎えられるということです。

そういえば以前、会社にある社員が『POPEYE』という雑誌の創刊号を持ってきたことがあります。
この雑誌は40年近く前に創刊されたものですが、大のおとながまるで子供のように顔を輝かせ、ああでもない、こうでもないとその頃の話で盛り上がり、全然仕事にならなかったことがあります。
まさにノスタルジーパワーです。

過去やなつかしさ、いわゆるノスタルジーには人を引きつけてやまない不思議な魅力があるのです。

店舗やレストランの内装や、商品開発で行き詰ったら思い出してください。
未来や宇宙をデザインテーマにしないことです。
過去やなつかしさ、ノスタルジーに目を向けてみましょう。

「なつかしい」は集客できる。

人間は経験したことのないことに対してイマジネーションが働きにくい。
宇宙や未来へ行った人はほとんどいないから。
イマジネーションが働かないと、「もう一度体験したい」という動機づけになりにくく、一度来たお客が思うようにリピートしてくれないわけです。

ソーシャルメディアやインターネットが普及して、人々の生活や仕事が昔より忙しくなっています。
そんなときに、昭和時代のほのぼのと、のんびりとした生活に懐かしさや安らぎを感じる人も多い。
ノスタルジーには人を引きつける不思議な魅力があるのです。

ボクはこれを「ノスタルジー普遍の法則」と名づけました。

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藤村 正宏
1958年、北海道釧路生まれ。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。集客施設や企業のコンサルティングを行っている。コストをあまりかけない、誰でもカンタンにできる手法で、圧倒的な成果をあげている。 執筆活動、講演活動もする。現在フリーパレット集客施設研究所主宰。

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