(米国株投資は、敷居が高い)と思っている読者も多いと思います。
でもそういう一般の認識とはうらはらに、実は日本株投資より米国株投資の方が少額の手持ち資金から始められることは、あまり知られていません。
それが可能な理由は、米国株の売買は1株からOKだからです。
これに対して日本株は未だ単元株制度の伝統が残っています。単元株制度とは最低取引ロットが100株(銘柄によって違う)というルールを指します。すると、仮に株価が2000円だとしても、最低100株からしか買えないとなると、買付に必要な軍資金は2000円×100株=20万円ということになります。これに外枠で手数料が加算されます。
米国株の例をひとつ挙げましょう。アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の現在の株価は124ドルです。これを現在の為替レート(1ドル=119.11円)で掛け算すると、円建ての株価は1万4770円になります。1株から買い注文を出してオッケーなので、1万4770円×1株=1万4770円というわけです。これに外枠で売買手数料がかかってきます。
売買手数料は証券会社が独自に決めることが出来ます。従って証券会社によって料率が大きく異なります。なるべく安い証券会社を選ぶことをお勧めします。なお、手数料が安いかどうかは、まず自分の手持ち資金を考えて、(20万円くらいからスタートしてみよう)とか(5万円くらいからスタートしてみよう)という風に、元手の大きさで、理想の証券会社が変わってくる場合があるので注意が必要です。
別の言い方をすれば、「どこの顧客ゾーンを最多顧客層として狙うか?」は、証券会社の経営戦略を決める大事な判断であり、各社とも、自分が一番取り込みたい顧客ゾーンで手数料が安くなるように工夫を凝らすということです。
なお、従来型の大手証券では一般論として手数料が高いです。それに加えてそれらの「営業マンの居る証券会社」は、小口客をせせら笑い、蔑む、悪い気風がはびこっています。高コスト体質で、手数料値下げで競争できないのは自分のせいであるにもかわらず、小口投資家の注文は「板汚し(いたよごし)」という証券マンの間だけで交わされる侮蔑用語で笑い合うわけです。
5万円くらいの手持ち資金で米国株を始める場合、たぶん一番フレンドリーな証券会社はマネックス証券だと思います。これは同社の売買手数料率が「約定代金の0.45%、ただし最低5ドル。そして上限は20ドル」と決められているからです。
さきほどのアップルの例で計算してみます。アップルは124ドルで取引されており、円建てに直すとそれは1万4770円だということは既に説明しました。これに1株の買い注文を出すと円建て約定代金は1万4770円×1株=1万4770円になります。いま売買手数料率は「約定代金の0.45%」ですから1万4770円×0.0045=66円47銭になります。「ただし最低5ドル」という規定があるので、ここでは最低5ドル、つまり円換算すると595円の手数料になります。
さて、ここが肝心な部分ですが、こうやって最終的に適用される手数料が計算できたら、必ずその手数料をもう一度買い付け総額で割算して、「買い付けに必要となった取引コスト」を吟味するクセをつけてください。実際にやってみます。
まず上の例での手数料は595円でした。
約定代金1万4770円にこの手数料を加算すると、1万4770円+595円=1万5365円が買い付け総代金になります。いま手数料を買い付け総代金で割算すると595円÷1万5365円=0.0387になります。これに100を掛けてパーセントに直すと3.87%になります。
つまりマネックス証券でアップルを1株だけ買うと、買付に必要となった取引コストは3.9%かかるということです。
これを、どう理解すれば良いのでしょうか?
普通、アップル株は、毎日±0.5%程度、動いています。これは同社にとってごく自然な株価の「揺れ」なのです。すると3.7%というのは、買い付けた時点で、すでに3.9%の手数料を払っているので、-3.9%「負けている」とハッキリ認識すべきです。それを取り戻すには、数日に渡ってアップル株が上昇しないといけないのです。
株価は、上がったり、下がったりという千鳥足(ちどりあし)を繰り返しながら動いてゆくのが常なので、この-3.9%の「負け」が、直ぐに取り戻せると考えるのは、甘いです。だから克服するには、数カ月から1年くらいかかると考えた方が良いでしょう。
ただ、別のやり方で「買い付けに必要となる取引コスト」を軽減することが出来ます。たとえばアップル株を先ほどの例のように1株ではなく、仮に4株まとめて買ったとします。
すると買い付け代金は124ドル×4=496ドル。これに為替を掛けて496ドル×119=5万9080円になります。手数料は5万9080円×0.0045=265円86銭になるけれど、先ほど説明したように「最低5ドル」という規定があるので、やっぱり595円が適用されてしまいます。
いま「買い付けに必要となる取引コスト」を計算すると、595円÷5万9080円は0.01になります。これをパーセント表示すると、ちょうど1%ということになるのです。
するとアップル株は毎日±0.5%程度はザラに動いているので、早ければ2日ほどで買いコストを上回る……なんてコトも大いにありうるわけです。
どうですか? わかりました?
結論としては、皆さんが10万円くらいの手持ち資金で株式投資をはじめるのなら、選択肢は、ほぼマネックス証券だけになってしまいます。20万円くらいあるのなら、マネックス証券と楽天証券ではコスト上の差異は気にならないと思います。
でも20万円くらいで投資を始めるのなら、日本株では買える銘柄がとても限られてきてしまうので、運用が窮屈になります。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
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でもそういう一般の認識とはうらはらに、実は日本株投資より米国株投資の方が少額の手持ち資金から始められることは、あまり知られていません。
それが可能な理由は、米国株の売買は1株からOKだからです。
これに対して日本株は未だ単元株制度の伝統が残っています。単元株制度とは最低取引ロットが100株(銘柄によって違う)というルールを指します。すると、仮に株価が2000円だとしても、最低100株からしか買えないとなると、買付に必要な軍資金は2000円×100株=20万円ということになります。これに外枠で手数料が加算されます。
米国株の例をひとつ挙げましょう。アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の現在の株価は124ドルです。これを現在の為替レート(1ドル=119.11円)で掛け算すると、円建ての株価は1万4770円になります。1株から買い注文を出してオッケーなので、1万4770円×1株=1万4770円というわけです。これに外枠で売買手数料がかかってきます。
売買手数料は証券会社が独自に決めることが出来ます。従って証券会社によって料率が大きく異なります。なるべく安い証券会社を選ぶことをお勧めします。なお、手数料が安いかどうかは、まず自分の手持ち資金を考えて、(20万円くらいからスタートしてみよう)とか(5万円くらいからスタートしてみよう)という風に、元手の大きさで、理想の証券会社が変わってくる場合があるので注意が必要です。
別の言い方をすれば、「どこの顧客ゾーンを最多顧客層として狙うか?」は、証券会社の経営戦略を決める大事な判断であり、各社とも、自分が一番取り込みたい顧客ゾーンで手数料が安くなるように工夫を凝らすということです。
なお、従来型の大手証券では一般論として手数料が高いです。それに加えてそれらの「営業マンの居る証券会社」は、小口客をせせら笑い、蔑む、悪い気風がはびこっています。高コスト体質で、手数料値下げで競争できないのは自分のせいであるにもかわらず、小口投資家の注文は「板汚し(いたよごし)」という証券マンの間だけで交わされる侮蔑用語で笑い合うわけです。
5万円くらいの手持ち資金で米国株を始める場合、たぶん一番フレンドリーな証券会社はマネックス証券だと思います。これは同社の売買手数料率が「約定代金の0.45%、ただし最低5ドル。そして上限は20ドル」と決められているからです。
さきほどのアップルの例で計算してみます。アップルは124ドルで取引されており、円建てに直すとそれは1万4770円だということは既に説明しました。これに1株の買い注文を出すと円建て約定代金は1万4770円×1株=1万4770円になります。いま売買手数料率は「約定代金の0.45%」ですから1万4770円×0.0045=66円47銭になります。「ただし最低5ドル」という規定があるので、ここでは最低5ドル、つまり円換算すると595円の手数料になります。
さて、ここが肝心な部分ですが、こうやって最終的に適用される手数料が計算できたら、必ずその手数料をもう一度買い付け総額で割算して、「買い付けに必要となった取引コスト」を吟味するクセをつけてください。実際にやってみます。
まず上の例での手数料は595円でした。
約定代金1万4770円にこの手数料を加算すると、1万4770円+595円=1万5365円が買い付け総代金になります。いま手数料を買い付け総代金で割算すると595円÷1万5365円=0.0387になります。これに100を掛けてパーセントに直すと3.87%になります。
つまりマネックス証券でアップルを1株だけ買うと、買付に必要となった取引コストは3.9%かかるということです。
これを、どう理解すれば良いのでしょうか?
普通、アップル株は、毎日±0.5%程度、動いています。これは同社にとってごく自然な株価の「揺れ」なのです。すると3.7%というのは、買い付けた時点で、すでに3.9%の手数料を払っているので、-3.9%「負けている」とハッキリ認識すべきです。それを取り戻すには、数日に渡ってアップル株が上昇しないといけないのです。
株価は、上がったり、下がったりという千鳥足(ちどりあし)を繰り返しながら動いてゆくのが常なので、この-3.9%の「負け」が、直ぐに取り戻せると考えるのは、甘いです。だから克服するには、数カ月から1年くらいかかると考えた方が良いでしょう。
ただ、別のやり方で「買い付けに必要となる取引コスト」を軽減することが出来ます。たとえばアップル株を先ほどの例のように1株ではなく、仮に4株まとめて買ったとします。
すると買い付け代金は124ドル×4=496ドル。これに為替を掛けて496ドル×119=5万9080円になります。手数料は5万9080円×0.0045=265円86銭になるけれど、先ほど説明したように「最低5ドル」という規定があるので、やっぱり595円が適用されてしまいます。
いま「買い付けに必要となる取引コスト」を計算すると、595円÷5万9080円は0.01になります。これをパーセント表示すると、ちょうど1%ということになるのです。
するとアップル株は毎日±0.5%程度はザラに動いているので、早ければ2日ほどで買いコストを上回る……なんてコトも大いにありうるわけです。
どうですか? わかりました?
結論としては、皆さんが10万円くらいの手持ち資金で株式投資をはじめるのなら、選択肢は、ほぼマネックス証券だけになってしまいます。20万円くらいあるのなら、マネックス証券と楽天証券ではコスト上の差異は気にならないと思います。
でも20万円くらいで投資を始めるのなら、日本株では買える銘柄がとても限られてきてしまうので、運用が窮屈になります。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
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