「危険ドラッグで精神異常」はまれ?ネイチャー誌が賛否両論に注目
自殺のリスクを増やすと恐れられているが実は良い薬の見方まで

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:new 1lluminati/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般)

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 危険ドラッグなどを含めた「幻覚剤」は精神を冒して、大きな社会問題になっている。そういう見方が常識化しているだろう。だからこそ法的に規制もされている。

 ところが、このところ全く異なる見方が浮上してにわかに注目されている。

 「精神衛生上の問題を起こさない」とする報告が続いており、有力医学誌のネイチャー誌2015年3月4日号で賛否両論に注目している。

米国の全国調査に基づく分析

 一般的には、幻覚剤は精神異常やその他の精神衛生上の問題を起こし、例えば、自殺のリスクを増やすとして恐れられている。今回、こうした見方に反して、米国の全国調査のデータに基づいて、幻覚剤の有害性が意外と低いという論文が発表された。

 1件目の論文はノルウェー科学技術大学の研究グループによるもの。研究グループは「薬物使用と健康に関する全国調査(NSDUH)」2008年~2011年の13万5000人以上についてデータを解析した。

 その結果、14%の人が標準的幻覚剤(LSD、マジックマッシュルーム、ペヨーテ)の使用経験があると答えた。精神衛生上の問題(統合失調症・精神異常・うつ・不安障害・自殺企図)との関連を解析しており、結果として「発症リスクが高くない」という結果を導いている。

 この結果に反対する研究者も見方も紹介されている。米国カリフォルニア大学教授は長く末期がんなどの不安治療に幻覚剤の投与を提唱してきた。その経験に基づいて、同教授はHPPD(フラッシュバック)の発症など、有害事象が起きているという実態を説明。幻覚剤の精神への影響は無視できないと考えを示している。

 この点について今回調査を担当した研究グループは幻覚剤を使用しない人にもHPPDの症状が見られると反論。問題は幻覚剤にあるわけではないという考えを示している。

幻覚剤の有害事象は過大評価?

 2件目は、同じくNSDUHの調査結果の解析で、標準的な幻覚剤は精神衛生上の問題とは無関係とやはり指摘。さらにLSDなどの使用者がむしろ自殺企図の割合が低いとの結果を導き出している(危険ドラッグが最新鋭うつ薬に?米国グループ「その発想はなかったが、ブレークスルーに」を参照)。

 論文をまとめている米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは「幻覚剤で害を受ける人がいないとは言っていない。薬物犠牲者の話はショッキングだが、これはまれと見るべき。幻覚剤の有害事象は過大に言及されている」と述べた。

 うつに対する薬としての可能性も浮上しているくらいで、有害性よりも有益性に光が当たるような動きすらある。

 危険ドラッグを含めた幻覚剤についての議論がにわかに米国で盛り上がっている。国際的にも注目されるかもしれない。

文献情報

No link found between psychedelics and psychosis

http://www.nature.com/news/

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