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住民が議会に「正統性」を与える
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住民が議会に「正統性」を与える

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議会の「正統性」について、以前(2012年)まとめたものです。

議会の「正統性」について、以前(2012年)まとめたものです。

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  • 1. 住民が議会に「正統性」を与える 米山知宏 @kedamatti ● 1
  • 2. 要旨:「正当性」のみならず「正統性」ある議会へ ①市民との対話(話す・聴く)を「質」「量」という観点から見直して みよう ②市民との対話を通じて、議会の「正統性」は強化してもらおう (市民が議会に「正統性」を与えてくれる) ③市民によって強化された「正統性」をもって、執行機関と対峙しよう 2
  • 3. 「正当性」と「正統性」 n  正当性 l  意思決定した内容や政策自体の内容の正しさ n  正統性 l  行われる意思決定が、関係者が納得するプロセス・手続きで行われているかどうかと いう意味での正しさ 3
  • 4. 問題意識 n  地方議会に「正統性」を与えるものとしては、まず「選挙」があげられるが、選挙だけで 100%の正統性が与えられる訳ではない(投票した議員の考え方を全て承諾している訳で はなく、また、落選した議員に一票を投じた住民もいる)。選挙後も、様々な議会活動を 通じて、議会の「正統性」を高める必要がある。多くの議会が実施するようになっている 「議会報告会」も、「正統性」を高めるための重要な手段である。 n  その際に大事なのは「民意の把握」である。「適切な民意」にもとづいた「適切な議論」 が行われているからこそ、住民は議会の正統性を認識する。 n  現在、議会はどの程度正確に「民意」を把握できているのだろうか。議会報告会で出され る意見は「民意」と言えるのだろうか。 n  もし民意が把握できていないのであれば、その状況で行われる意思決定は「正統性」を持 ちうるのだろうか。住民は、議会の意思決定が「正統性」を持っていると信じることがで きるのだろうか。住民が議会の意思決定に「正統性」を感じているからこそ、議会の意思 決定が執行機関に対して真に力を持つのではないか。 n  人々の価値観が多様化するとともに、メディア(住民の考えを知る場:従来のマスメディ アだけでなく、ソーシャルメディア、議会報告会等も含む)が多様化する中で、民意を把 握することは従来以上に難しくなってきているとも考えられるが、今後、議会はどのよう に「正統性」を獲得していけばよいのだろうか。 4
  • 5. 議会の「正統性」を構築するもの 5 議会の「正統性」の向上 【Output】 「伝える」機能の向上 【Input】 「聴く」機能の向上 これらの相互循環 プロセスが「対話」 伝える(Output) 聴く(Input) Who(誰に・誰から) 誰に伝えるのか 誰から聴くのか What(何を) 何を伝えるのか 何を聴くのか When(いつ) いつ伝えるのか いつ聴くのか Where(どこで) どこで伝えるのか どこで聴くのか Why(なぜ) 何のために伝えるのか 何のために聴くのか How(どのように) どのように伝えるのか どのように聴くのか
  • 6. 「市民との対話」「民意を把握すること」の重要性 n  「正当性」の強化 l  町の存亡にかかわる課題に間違いのない判断をするためにも、民意をくみ取ることが 大事だ(元・栗山町議会事務局長 中尾氏/西日本新聞2010.01.15) l  専門的知見の活用も「正当性」を強化するための一手段。 n  「正統性」の強化 l  議会がみずから市民参加や協働に取り組まなければ正統性はますます執行機関に移る。 議会の正統性を再強化すること、つまり市民からの信頼をさらに強めることは緊急な 課題である。(山梨学院大学 江藤教授) l  選出された代表者や行政職員に対して、直接民主主義的に正当性を持つ手法や提言は、 社会全体に対する決定を実現し、それ故また、代表制民主主義や行政が人々に受容さ れることを促進する。(ディーネル) l  これまで述べた欠如よりもっと危険なことは国家的行為の正統性の欠如である。正統 性の必要性は大きくなっている。正統性の欠如のため、決定手続きにも疑いがもたれ ている。正統性の欠如は、政治的機関と市民の交流が十分に発展していないことにも 起因している。(ディーネル) 6 住民が、議会に「正当性」&「正統性」を与える
  • 7. 現在行われている「市民との対話」 7 参加者の代 表性 市民同士の 対話 市民と議 員・議会の 対話 熟議度 政策とのリ ンク n  直接的対話 p  議員個人としての対話 ü  支持者との対話 × △ ○ △ △ p  議会としての対話 ü  請願・陳情 × ○ ○ △ ○ ü  議会報告会 × △ ○ △ △ ü  市民モニター × ○ ○ ○ △ n  間接的対話 ü  選挙 ○ × △ × × ü  市民アンケート ○ × △ × △ ü  住民投票 ○ △ × △ ○ l  現状実施されているものを見ると、「直接的対話」は 「代表性」の点で問題があり、「間接的対話」は「対 話・熟議」の点で問題がある。 注:上記の評価は、相対的かつ感覚 的なもので、絶対的な評価ではない。 あくまでも、手法の特徴の違いの 「おおよその傾向」を整理している に過ぎない。
  • 8. 現状の民意把握の問題点① 選挙では、「政策単位」での民意把握ができない n  【選択単位のズレ】 「人」を選択する選挙では、政策単位の民意を把握できない n  【選択タイミングのズレ】 選挙時と政策決定時の民意の変化を把握できない n  【熟慮無き意思決定】 選挙時の意思決定は必ずしも熟慮されたものではない 8 有権者① 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ×反対 政策D ×反対 候補者Y 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ×反対 政策D ×反対 有権者③ 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ×反対 政策D ×反対 有権者④ 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ×反対 政策D ×反対 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ○賛成 政策D ×反対 候補者X 政策A ○賛成 政策B ○賛成 政策C ○賛成 政策D ○賛成 候補者Z 政策A ○賛成 政策B ×反対 政策C ×反対 政策D ○賛成 有権者② ? ? ?
  • 9. 現状の民意把握の問題点② 議会報告会における参加者層の偏り n  【参加者層の偏り】 議会報告会が開催され、参加者との意見交換、アンケートなどが行 われているが、参加者層が偏っていることにより、それらの意見が「適切な民意」とは言 えない。 n  【熟議の場ではない】 また、じっくり検討したり熟議したりする場ではないため、発言 が個人的な要望になる傾向。 現状の議会報告会の参加者分布 議会報告会の望ましい参加者分布 若者層 高齢者層 若者層 高齢者層 9
  • 10. ある議会報告会における参加者属性 10 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 〜10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代〜 議会報告会の参加者層 実際の人口分布 l  「実際の人口分布」と「議会報 告会参加者層」との乖離 l  若年層が参加できていない現状
  • 11. 現状の民意把握の問題点③ 現状の世論調査における熟慮無き回答 n  代表制の問題 n  適切な情報が与えられていない n  その場での回答が求められ、熟慮された回答にならない l  面接調査より電話調査の方が、賛成−反対をはっきり表明する傾向があり、わからない、 無回答が少ない(世論調査の現状とその問題/飽戸) 11
  • 12. 民意は反映されているのか?①(内閣府調査) 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 出典:社会意識に関する世論調査(内閣府) 12 ・民意が反映されていないと考 えている人の割合は、30年で 約30%程度増加。 反映されていない 反映されている
  • 13. 民意は反映されているのか?②(市議会調査) 13 13.5% 27.7% 29.8% 32.4% 39.6% 6.4% 67.6% 56.7% 34.4% 30.4% 21.6% 32.7% 18.9% 15.6% 35.8% 37.3% 38.9% 60.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% A議会 B議会 C議会 D議会 E議会 F議会 評価する 評価しない 分からない・無回答 出典:各議会で実施された市民アンケート結果より n  「民意の反映」に関する住民の認識は、議会によって様々。
  • 14. 民意は反映されているか?③(市議会調査) 14 39.6% 22.9% 31.9% 32.2% 40.6% 45.3% 50.0% 21.6% 16.7% 18.6% 23.1% 23.0% 24.0% 17.7% 38.9% 60.4% 49.6% 44.8% 36.3% 30.8% 32.4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代以上 反映されている 反映されていない 分からない・無回答 出典:ある議会で実施された市民アンケート結果より n  年齢別に見ると、若年層ほど「民意が反映されている」と回答する割合は減少。同時に、 「分からない」という回答する人の割合は若年層ほど高い。
  • 15. 議会に対する評価(市議会調査) 15 38.3% 33.3% 38.6% 17.4% 26.8% 26.3% 23.5% 64.9% 34.8% 40.4% 37.8% 17.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% A議会 B議会 C議会 D議会 評価する 評価しない 分からない・無回答 出典:各議会で実施された市民アンケート結果より n  議会に対する住民の評価は、議会によって様々。
  • 16. 議会に対する評価(年齢別) 16 38.6% 18.8% 29.2% 28.0% 35.7% 46.1% 56.9% 23.5% 27.1% 19.5% 25.2% 30.3% 23.6% 14.6% 37.8% 54.1% 51.3% 46.9% 34.0% 30.3% 28.5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代以上 評価する 評価しない 分からない・無回答 出典:ある議会で実施された市民アンケート結果より n  年齢別に見ると、若年層ほど「評価する」と回答する割合は減少。同時に、「分からな い」という回答する人の割合は若年層ほど高い。
  • 17. 「DP(討論型世論調査)」で、「民意」をより適切に把握する n  現状のアンケート調査結果を見ると、全体として見れば必ずしも低評価ということではな いが、十分に評価されていると言える状況ではなく、これまで以上に市民からの評価を高 めていく必要がある。現状、低い評価をしている層が高い評価をするようになり、高い評 価をしている層もより高い評価をするようになれば、議会としての「正統性」がより高ま る。 n  多くの専門家が指摘しているとおり、議会の正統性を向上させるポイントは「対話」であ る。実際、多くの議会が「対話」の重要性を認識し、議会報告会等を通じて住民との対話 の場をもうけているところである。 n  しかし、この「対話」を「伝える(Output)」と「聴く(Input)」という観点で捉える と、これまでの議会改革は主に「伝える(Output)」ことに焦点があたっていたと思われ る。当然それは重要なことであるが、「聴く(Input)」の機能を向上させなければ、両者 の相互循環プロセスとしての「対話」の質は向上せず、「聴く(Input)」機能をどのよう に向上させるかということも真剣に考える必要がある。 n  以降で紹介する「DP(Deliverative  Poll:討論型世論調査」は、「聴く機能」を向上させ る一つの手法である。そのポイントは、「無作為抽出」と「市民同士の討論・熟議」であ る。 17
  • 18. 「DP(討論型世論調査)」とは n  一定のテーマについて、ランダム・サンプリング(無作為抽出)によって選ばれた参加者 が、少数のグループによる討議をくりかえしたあとで、意見の調査をするもの(篠原)で、 DP(Deliverative  Poll:討論型世論調査)と呼ばれる。 n  DPの特徴 l  ①無作為抽出によって調査対象の市民を選定することで、地域全体の代表制が確保さ れるとともに、多様な意見に接する機会となる。 l  ②市民同士の討論・熟議を通じて、熟慮された意思を形成 l  ③意見の合意を求めないことで、同調圧力が無くなり、安心して討論できる 18 特徴 従来の世論調査 市民アンケート 市民討論会 議会報告会 プラーヌンクスツェレ (※1) DP(討論型世論調査) ①無作為抽出 ○ × (参加したいという意 識がある人が参加する ため、代表制の問題が ある) ○ (住民基本台帳等を母 集団として、無作為抽 出) ○ (住民基本台帳等を母 集団として、無作為抽 出) ②市民同士の討 論・熟議 × ○ ○ ○ ③合意を求めるか どうか 求めない (個人の考えを調査) どちらのケースもある (求める  or  求めない) 求める (「市民答申」という 形で提言書を策定) 求めない (あくまでも、個人の 考えを調査するもの) ※1:市民の中から無作為に選ばれたメンバーが、少人数の基本単位に分れて討議し、討議にもとづいて提言を作成して計画づくりの指針とする制度(篠原)
  • 19. DP(討論型世論調査)の実施手順 19出典:http://cdd.stanford.edu/polls/docs/flyers/deliberative-polling-flyer-jp.pdf
  • 20. DP(討論型世論調査)の日本における実施事例 20 実施主体 テーマ 参加者 (無作為抽出の対象) 実施時期 ① 神奈川県 東京工業大学坂野研究室 道州制 神奈川県民 (横浜市在住者) 2009年12月 ② 慶應義塾大学DP研究会 藤沢市総合計画 藤沢市民 2010年1月、8月 ③ 慶應義塾大学DP研究会 社会保障(年金) 全国 2011年5月 ④ 北海道大学科学技術コミュ ニケーション教育研究部門 BSE(牛海綿状脳症) 札幌市民 2011年11月 議会が主催した「DP(討論型世論調査)」は無い
  • 21. 議会が「DP(討論型世論調査)」を主催する意義 n  議会の「正統性」の向上 l  執行機関は、これまで様々な市民参加手法を通じて、その「正統性」を高めようとし てきた。 l  二元代表制の一翼を担う議会も、「正統性」を高めていく必要がある。(二元代表性 は、お互いの「正統性」を競い合うもの) n  篠籐先生(別府大学) l  「市民答申」が決定権を持つものではありません。具体的詰めを決定していく機能は、 常に必要です。それが議会に託された機能であると考えると、逆に、議会に連結した、 別の言い方をすれば、議会が委託するプラーヌンクスツェレ(※)があっても良い。  ※:DPと同じように、無作為抽出によって選ばれた市民によって討論をするもの 21
  • 22. DPの実施を検討している議会もある n  藤沢市議会 l  条例案の検討段階での市民の意見聴取については、市民アンケートや議会モニター、 さらにはDP(討論型世論調査)、参考人の招致等新手法も取り入れたさまざまな方法 で行う。(議会活性化検討会、平成22年5月12日)   http://shigikai.city.fujisawa.kanagawa.jp/pdf/kaikaku_h2302_38_39.pdf n  大阪市議会 l  無作為抽出市民に参加を呼びかけ、市政について、市のあり方について話しやすい雰 囲気のもとグループで討論するという取組は当市では未経験である。 l  政策づくりの過程への市民参加というと難しいイメージになるが、まずは公聴の手法 と捉えて試行を検討してはどうだろうか。当市も「待ち」から「攻め」の公聴へ幅を 広げる時期を迎えている。(ある会派による行政調査報告、2012年1月30日)   http://www.city.obu.aichi.jp/contents_detail.php?frmId=14751 22
  • 23. 民意把握手段の類型 参加者のデザイン×討議の場のデザイン 23 「討議の場」のデザイン 【有】 「討議の場」のデザイン 【無】 「参加者」のデザイン 【有】 l  DP(討論型世論調査) l  コンセンサス会議 l  プラーヌンクスツェレ 等 l  無作為抽出によるアンケート調査 「参加者」のデザイン 【無】 l  公募型の市民会議や市政モニター l  選挙、住民投票 l  マスメディアが実施する世論調査 l  ソーシャルメディアを通じたコミュニ ケーション?? l  インターネットを通じたアンケート 『「参加者」のデザイン』とは、民意形成に参加する市民メンバーの抽出が、第三者によってコントロールさ れたものであるかどうかという視点。 『「討議の場」のデザイン』とは、市民間の対話が行われるような場を構築しているかどうかという視点。
  • 24. 民意をどう把握し、どう政策決定に繋げるか 政策決定(議会) デザインされた場 自由な場 民意形成(市民) l  ミニパブリックス(参加者を 無作為抽出によりコントロー ル。自由参加ではない) l  理性 l  熟議 l  横のコミュニケーション l  オープンパブリックス(参加 者はコントロールされない。 誰でも自由に参加可能) l  情念 l  非熟議 l  縦のコミュニケーション 24 多様な回路を通じた民 意の把握 【論点】 l  民意形成の場をどう構築するか。 l  DPは、あくまでもその一つの手段。他のやり方も検討する必要がある。 【論点】 l  民意と政策決定と のリンク
  • 25. 多様な回路を通じて、より適切に民意を把握する n  DPは手段の一つ。DP以外にも、様々な場を構築し、対話を行っていく必要がある。 n  当然、ICTの活用も「民意の把握」という観点で期待は大きい(例えば以下は、ごく一案。 他にも色々考えられる)。 25
  • 26. 他にやり方は無いか? 26 議会の皆様(議員・議会事務局職員)と一緒に考えたい