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» 2015年03月20日 08時52分 UPDATE

「武蔵」引き揚げは可能か……1200メートル海底に沈む“ハイテク戦艦” 当時の先端技術を結集 (1/4)

70年ぶりに発見された戦艦武蔵は、当時の日本の最先端技術を集めて建造された。約12100メートル海底に沈む船体の引き上げは可能だろうか。

[産経新聞]
産経新聞

 「武蔵」を発見した−。米マイクロソフト創業者のポール・アレン氏がフィリピン中部のシブヤン海で旧日本軍の戦艦武蔵を発見したとするニュースは、日本はもとより世界を驚かせた。アレン氏はツイッターで船体の写真を公開し、インターネットで映像も中継もした。終戦から70年目の発見は、旧帝国海軍の敗北を決定づけたレイテ沖海戦の歴史を甦らせるとともに、巨大戦艦が誕生した時代背景にも焦点を当てそうだ。当時の日本の最先端技術を集めた大和型戦艦「武蔵」。そのハイテクパワーと戦前日本の造艦技術に迫った。(岡田敏彦)

全ては46センチ砲のため

画像 ポール・アレン氏が公開した「武蔵」とみられる船体の艦橋部分を撮影した映像

 戦争とは、必要な時に、必要な場所へ、必要なだけの戦力(火力)を投入できた者が勝つ−。武蔵も大和も、決戦時に巨大な46センチ(約18インチ)砲弾を敵艦にたたき込むために誕生した。その46センチという数字には大きな意味がある。

 大和型の構想が生まれたのは昭和9年とされる。当時はロンドン海軍軍縮条約により旧式戦艦の代艦建造はできなかったが、日本では軍縮条約の期限が切れる昭和11年に備え、新型戦艦の構想を練っていた。ひとつの“指標”となったのはパナマ運河だ。

 当時は大艦巨砲主義の時代。大きな砲はより遠くへ弾を飛ばせる。敵の弾が届かない位置から敵を一方的に粉砕することが可能だ。だが、巨大な砲を積むためには巨大な船体が必要となる。

 ただし米戦艦は、大西洋と太平洋を行き来するのにパナマ運河を使うため、運河を通れないような巨大戦艦を造るのは非常なリスクを伴う。同運河を通過できる戦艦は、当時の造艦技術では、40センチ砲搭載艦程度が限度とみられていた。

 一方日本は、このパナマ運河による制限(パナマックス)を考慮する必要はない。建艦競争になれば、アメリカの工業力から見て数で劣勢となるのは必至。それを質で、つまり砲の大きさで補おうとして誕生したのが大和と武蔵という巨大戦艦だった。

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