異色の経歴。元ゲームプランナーがリクナビのサービスを考える
新卒で大手ゲーム会社に入社し、ゲームプランナーを6年半経験しました。その後、リクルート(現:リクルートホールディングス)に転職し、主にメディア商品(リクナビNEXTなどの広告掲載商品)の商品企画を担当しました。今は中途採用領域の商品責任者と、新規事業開発の責任者です。ゲーム会社からの転職でしたが、社風や会社の雰囲気は実はあまり変わらず、比較的、自由にやりたいことが出来る風土でした。仕事の面では、0から1を創り出す発想や、現状を大きく変革させることが求められるリクルートキャリアにおいて、そこに対してのケーパビリティやスキルは大きく活かせました。一方で苦労した事は、「自由に任せられる領域」と「制約を受ける領域」がある中でのお作法の理解です。リクルートキャリアのサービスでは、完全に0から1を生み出すサービスは実はあまりありません。既存のものを残しながら新しいものを生み出していくかが、比較的求められます。現状のサービスやマーケットを見立てながら、残すべき要素や、変えるべき要素を抽出して変化させる企画力が重要です。企画者としては、制約がある方がよりアイデアの難易度が高く、企画者心をくすぐられました。
「働き方」という事業テーマの、社会的影響力
「働き方」という文脈で、社会性が高さを実感しています。「働き方」というのは人生の中で大きなアジェンダであり、恐らく睡眠時間以外の6~7割ぐらいは働いている。働いていることがつまらないと感じてしまうと、その人の人生の6~7割がつまらない人生になってしまう。だからこそ、働く場所において最適な出会いを創出できるかというのは大きなテーマですし、会社として1番介在価値を発揮できるポイントです。結果として働く人がパフォーマンスを発揮して、経済発展や新サービスの創出などで。世の中に正の連鎖が生まれます。そんな正の連鎖を生むためにも、その人に合った天職に出会わせたいと考えています。
ユーザーの心情をイマジネーションする力が重要
「仕事探し」というのは、自分が何をしたいのか明確にはわからない、もっというと、必ず買えるといった購買行動と異なり、採用したい企業と双方向に良い印象を受けて初めてマッチングが成功するものです。故に、データやレコメンドの領域が重要になってきます。「その人が認知していない志向や能力、スキルをどうやってログ化するか?そしてそのログをベースに求人を提案出来るか?」などのレコメンデーション領域は、まだまだ伸び白があります。つまり、これまでの「あなたは何がしたいのですか?この中から選んでください」という状況から、「その人が知らない個性や能力を可視化して、その可視化したものをベースに求人を提案する」というのが、今一番ITでやりたい領域です。
もう一段そのインサイトまで入り込んだサービスやエンジニアリングが出来るか?というテーマへの挑戦です。ユーザーの認識していない言動や行動や感情といった情報の一端を、我々は入手する事が出来るので、これをどう解釈するかがエンジニアに求められることです。テクノロジー側が勝手にログは持ってきてくれますが、果たしてログをどう活用するのか?が大事になります。与えられたその情報をどう調理するか?次世代のエンジニアに求められるスキルです。つまり単に創るだけではなく、実際にユーザーの行動を見ながら、自分でどのようにサービスを創ったら良いのかという、ユーザーの心情をイマジネーションする力が重要になってきます。
やっとリリースしたときに、ユーザーから否定される恐怖感は半端じゃない
メンバーには今、外に出てユーザーの声を拾えという話を強くしています。紙で良いのでイメージを書いて外のユーザーにどんどんぶつけて、その場でMVPを創る。ユーザーとの対話が済んだ状態からサービス開発に入る事で、無駄が少なくなり、もっと速く作れるようになります。エンジニアがMVPを創るメリットも大きく2つ、1つはエンジニアがそのMVPに携われることがあれば、最終ゴールから設計して作ることが出来るので、とにかくきれいで速いと思います。もう1つは、カスタマーやユーザーと対話したときにその解決策の引出が、エンジニアとそうでない人とでは明確に違います。
しかしエンジニアなど創り手の注意点として、反応が良くなかったときに凹まないことが大事です。「作る前からわかって良かったじゃん。」という風になって欲しい。「あとは直すだけ。だから良かった。」となって欲しい。そういった発想になると、自分でMVPを創るという事に対してポジティブに変われます。ベースとなる種に対して、ユーザーから欲しい・欲しくないと言われているだけなので、別にエンジニアの人格が否定されたわけではないという感覚が重要です。世の中にサービスを創りたいとか、価値を生み出したいということをゴールとしている人にはどこがゴールなのかを聞きたい。きっと良いサービスを創りたいのだから、アドバイスをもらえて良かったとなって欲しいと思います。
自分の実感値としては、1勝9敗くらいです。ただ、聞き方が重要で、紙を持って行ったときに相手は皆、良い人なので同意を得やすいと思います。ただ蓋を開けてみると、そのサービスを利用しないケースは多く、リリースしてから裏切られます。なので、聞き方としては、
「このサービスをもっと良いものにしたい、そのために、あなただったらどうしますか?」「どういう機能だったら使いますか?」「手に取ってどのように利用しますか?」という形でユーザーテストをしていくと、比較的答えてくれますし、あまりネガティブな感じにはなりません。
また、環境も重要です。仲間が「それ、いいね!」と言ってくれる環境でやった方が良いと思います。リクルートキャリアにはそれがありますし、面白いとなったらまずはユーザーにぶつけてみようという風潮があります。何か批判を受けてもネガティブに捉えないですし、「進化の方向が分かって良かった」という形でお互い褒め合えるような文化です。一人だったらしんどいですからね。次にどう繋げていくのかを、お互いにポジティブに言い合えるのが大事です。だから1勝9敗の価値も大きくて、9敗という事は9個の伸び白があるということなのです。
株式会社リクルートキャリア
藤原 賢一 氏
ゲーム会社のプランナーを経てリクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。以来、リクナビNEXTの商品企画を担当。現在は、株式会社リクルートキャリアで中途事業領域の商品と新規事業開発の責任者(エグゼクティブ)。