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脱パワポのプレゼン術
「伝わる」プレゼンを行うためには、それにふさわしい身体の状態を手に入れる必要がある。「落ち着こう」と考えるのではなく、お腹の下にある「丹田」をイメージするなど、意識的に身体の重心を下げることで、人はリラックスすることができる。
「落ち着こう」、「うまく話そう」と思えば思うほど、人は舞い上がります。「自意識を無視しよう、忘れよう」と思えば思うほど、自意識は大きくなるのです。自意識を捨て去ることはできません。だからこそ、自意識を敵にするのではなく、味方にする必要があります。
人の思考能力は、無限ではありません。話の内容に集中し、その風景を具体的に想像しながら話せば、自意識にまわるはずのエネルギーが減り、自意識からラクになることができます。
新規事業のプレゼンなら、それが実現したときの状況を想像します。そのプロジェクトが成功したら、具体的にどうなるか。それが実現したときのスタッフが活躍するシーン、顧客の反応や周囲の声、オフィスの空気感や温度、窓から光が差し込んでいる風景など、ディティールをイメージするようにします。
受けを狙おうと思うのではなく、具体的なディティールまで想像し、感じとることで、リラックスして話せるようになります。
鴻上尚史(作家・演出家)
落ち着くことができれば、人の身体は自動的にその空間にふさわしい身体になります。プレゼンなどの場面でも、自分の身体を、レスポンスが自然にしやすい状態にする必要があります。
まずは、聴衆全体を見ることです。そして、場の全体を身体に入れるイメージを持つのです。身体全体で、会場と対話できる雰囲気になると、会場がゆるみ始めたことや緊張しすぎている状況に合わせて、話し方を変えることができます。
あがり症の人だったら、少し早目に会場に行って、実際に話す場所で一度深呼吸をしてみるのが効果的です。そして、会場の四隅を見て、その全体を自分の身体に入れるイメージを持つことで、リラックスした身体が手に入りやすくなります。
また、人前で話すとは、「感じること」と「考えること」を高いレベルで両立させることです。
事前に暗記した文章をただ言っていたら、それは「考えている」だけで「感じること」をしていません。逆に、その場のノリだけで話す人は、「感じている」だけで「考えること」をしていません。プレゼンが上手な人は、場の雰囲気を感じながら、資料を飛ばして簡単に説明したり、重要なところを繰り返したり、調整することができます。
プレゼンの本番では、話しながら、聞いている人たちを何度もチラチラと見ることです。そうすることで、聴衆のリアクションを感じとることができるようになります。
人は、人の状態を感じることができます。あなたがリラックスすれば、そのリラックスは相手に伝わり、相手の身体もゆるみます。そして、あなたの言葉は相手に届きやすくなります。
リラックスするためのテクニックとして、「声を低く始める」という方法があります。人は緊張すると声が高くなります。意識的に声を低くして始めることで、自然と身体もリラックスするようになり、心を落ち着かせることができます。
舞い上がっているとき、身体の重心は上にあがっています。身体の重心を下げるためには、丹田を意識することが有効です。丹田は、あなたのおヘソから握りこぶし一つ下のところにあります。丹田を感じる方法として、前傾になって前に倒れる瞬間に、お腹の中にぐっとしまる場所を感じたら、そこが丹田です(図1参照)。
大切なことを言わなければいけないとき、丹田をイメージするだけで、ずいぶん違います。自分の重心を下げようとイメージするだけで変わるのです。
丹田は、おヘソから握りこぶし一つ下のところにある。前傾になって、前に倒れてみたときに、お腹の中にぐっとしまる場所を感じたら、そこに丹田がある。
出典:鴻上尚史著『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)
「リラックスした身体」というと、サウナに入った後のような、グダーッとした身体を思い浮かべがちですが、本当に「リラックスした身体」とは、「余計な緊張がなく、いつでも動ける身体」です。ほとんどの人は、自分の身体が、ずっと緊張していることを自覚していません。でも、日常の中で身構えることは山ほどあって、身体はどうしても緊張しています。
まったく運動をしないような人は、休日にウォーキングなどをして、身体に身体を意識させることから始めます。身体を意識できるようになると、自分がストレスを感じたときに、身体のどこが緊張するかを感じられるようになります。
人によって、緊張する箇所は違います。緊張する箇所はたいてい、「肩がこる」、「腰が痛い」、「背中がバリバリ」など、ストレスがかかったときに痛くなるところです。まず大切なのは、「緊張を抜こう」と考えることよりも「今、自分が緊張している」と感じることです。
自分が緊張する箇所がわかったら、その箇所をほぐすことです。そのためには、こわばった箇所の筋肉がフワ~と広がってラクになることをイメージします。信号待ちのちょっとした時間、電車を待っている空き時間などを使って、そのイメージを持つことを1日に何回も繰り返します。心と身体は、相互に影響し合いますから、イメージするだけで変わっていきます。
人間はゆっくりとしか変われません。でも、ゆっくりでも確実に変わるのです。
(1)〜(2)
鼻から息を吸いながら、ゆっくりと手のひらを上にして、両手を頭の上にあげていく。この動作を「手のひらで、大気のエネルギーを集めている」というイメージを持ちながら行う。
(3)〜(4)
口からゆっくり息を吐きながら、集めたエネルギーを丹田に押し込めるイメージで、手のひらを下にして、手をおろしていく。
出典:鴻上尚史著『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)
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