「いままで観た中で一番好きな映画は?」
と質問されたら、『ダークナイト』(クリストファー・ノーラン監督、2008年公開)だと答えていた。
だけど2014年11月22日から、人生最高の映画は『インターステラー』に乗り換えた。脳細胞が活性して、魂が振動する。とてつもない体験をした3時間。
公開からずいぶん経ったけど……。
はじめて僕がこの映画のことをつぶやいたのは、たぶん2014年10月4日。
今秋はこれが楽しみ! / “未知の惑星を描くSF映画『インターステラー』最新予告編 « WIRED.jp” http://t.co/T6g2Zwo9WK #宇宙 #映画 #SF
— 石原 健一郎 (@ishiharaken) October 4, 2014
予告編はいくつかパターン存在するけど、僕のお気に入りはこちら。
映画『インターステラー』予告2【HD】2014年11月22日公開 - YouTube
地球の寿命は尽きかけていた。
居住可能な新たな惑星を探すという人類の限界を超えたミッションに選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男。
彼を待っていたのは、未だかつて誰も見たことがない、衝撃の宇宙。 はたして彼は人類の存続をかけたミッションを成し遂げることが出来るのか?
―ワーナー・ブラザーズのオフィシャルサイト ストーリーより
映画『インターステラー』の日本国内劇場公開は2014年11月下旬からスタートして、3ヶ月あまり経った現在は劇場公開は終了している。iTunes Storeでは2015年3月25日から先行販売、AmazonなどではBlu-ray・DVDが4月8日から販売開始となり、予約受付中*1。
僕は2014年11月から12月にかけて、この3時間の作品を、3つの映画館に出掛けて、合計3回鑑賞した。
1回目は、これまで何度もお世話になっている岡山市郊外の「TOHOシネマズ岡南」SCREEN6にて。2回目は、IMAXで見たいと思い立ち大阪府箕面市まで出っ張って「109シネマズ箕面」シアター1 IMAXにて*2。3回目は、最近岡山に出来たばかりのシネコン「イオンシネマ岡山」SCREEN6の座席が動くD-BOXにて。いずれも素晴らしい感動体験だった。
ものすごく刺激を受けているのは間違いないのだけど、その想いをなかなか自分のブログに記事をかけずに年を越してしまった。その理由は、あまりに心と頭にグサグサ突き刺さっていて自分の感じたこと考えたことを上手に纏まらなかったから。激しい感動が交錯して、うまく表現できそうになくて躊躇ったまま時間が過ぎてしまった*3。
今回の記事は、僕の中でほとばしる想いの発露なのだ。
心が揺さぶられる父娘 愛の物語。
テレビで見かけた『インターステラー』の宣伝では、父と娘の絆を描いた感動ストーリー、という点がアピールされていたと思う。実際、僕も大いに心打たれて、映画館でボロボロ泣いていた。
40歳になった僕は涙もろいオッサン。映画や小説への感情移入が年々深まっているような気がしてる。それは個人的な事情も関係しているかもしれない。
僕には一人娘がいる。30歳の時に生まれ、今年10歳(ちょうど主人公の娘と同い年)。残念ながら、娘が2歳の時から別居・離婚して長らく離れて暮らしている。ここ数年は会えずにいるが、養育費を送ったり、誕生日やクリスマスのプレゼントを贈ったりという交流は続いている状態。
時々もらうメールで新しい写真を見せてもらうたびに、娘の成長に驚かされる。同時に思わず自分に問いかける。長い間会っていない娘に会う事ができたら僕は気持ちになるだろう?逆に、そのとき娘は僕を見てどう思うのだろう?
父と娘の絆というのは、ごくありふれた普遍的なテーマなのだろう。でもこの映画の父娘のストーリーは、今の僕にとってはあまりに身につまされて(もちろん主人公たちのような過酷な運命の中にはいないが)、心に深く突き刺さった。そして、親と子の関係は続いていくので、これからも心に残り続けるのだと思う。
頭が刺激される科学と探求の旅。
『インターステラー』は父と娘の愛の物語だけでない。サイエンスワードが散りばめられたエキサイティングなSF映画だ。ワームホール、重力ターン(=スイングバイ)、ブラックホール、重力レンズ効果、相対性理論、事象の地平線、特異点、5次元………何気なく説明なしに登場する言葉もあるので、馴染みない方は戸惑うかもしれない(もっとも限られた映画の時間では説明不可能だろうけど)。
僕自身は、科学の専門トレーニングは受けてないし(大学の専攻はいわゆる文系)、人にこの用語を説明しろと言われると正確にできる自信はないけど、こういう科学要素は大好物。小学生の頃は親が買ってくれた雑誌『Newton』*4 を眺めてたし、今もEテレの『サイエンスZERO』*5を好んで観るタイプ。科学読み物も好きだし、映画や小説もSFには全く抵抗なし。ハードなSF映画は僕の科学心が大いにくすぐられるのだ*6。
SFが見せてくれる世界は、人類がまだ知らないものへ思いを馳せる舞台としてワクワクさせてくれる。それにも増して、現実の科学者の提示する新しい世界も見方というのも興味深い。理論物理学者リサ・ランドール教授の著書『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』では、僕たちのなじみのある3次元の世界を超越した「余剰次元」について説明している。この本の中で、彼女は次のように語っている*7。
推論は私たちの理解を進展させる唯一の道である。
当たり前の現実にとらわれず、新しい理解に到達するためには想像力の翼が必要。SFを作ったり鑑賞したりすることは、その方法のひとつであるように思う。その動機を突き詰めると、結局は自分自身のことを知りたいという願いかもしれない。
われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか
"Paul Gauguin - D'ou venons-nous" by Paul Gauguin - Museum of Fine Arts Boston. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
人類の理解を広げる科学者は知の開拓者*8。しかし、未知の領域に踏み込むのは孤独と苦悩に耐えながら進まなければならない。だからこそ僕は本物の科学者に憧れや尊敬を抱くし、科学的成果に関心を向けていきたい。一方で科学的方法・態度はどうであるか注意しなければならないとも思っている。
それにしても問いは尽きない。時間とは、空間とは、宇宙はどのようなものか、人類は孤独なのだろうか……。
ノーラン監督のこだわり。
クリストファー・ノーラン監督は、デジタル全盛の映画界にあって、フィルムにこだわる人として知られている*9。そして、CGをなるべく使わない実写にこだわる*10。
このこだわりには、やがて消えゆく技術への寂寥を感じる。僕たちはフィルム映画を観る最後の世代になるかもしれない。これも「消えゆく光」なのかも。映画というメディアが良い部分を継承してくれればそれでよいのだろうけど。
ちなみに、1970年生まれの監督と僕はほぼ同年代で、人生の半分は20世紀、半分は21世紀。インターネットやスマートフォンのない時代も知っているが、現在の僕自身はスマートフォンが手放せいない生活になっている。それでも監督の言うようにスマートフォンばかり見つめずに、空を見上げて宇宙の彼方への想像を広げる時間も必要なのかもしれない*11。
監督が手がける映画では、細やかな演出や心理描写が迫力を生んでいるように思う。もちろんそこには役者の演技も光っている。
この映画で特に印象的だったのは、主人公が空(宇宙)を見るシーンが何度かある。それぞれ微妙に違う表情から心中の不安、憧れ、決意、覚悟……を想像させられた。そしてもう一つ圧巻なのは、ここぞと言うときの畳み掛ける演出。クライマックスのカットバックに心から酔いしれた。
ところで、監督の意図を完全に反映した70mmフィルムIMAXは日本では上映されなかった。というより上映できる映画館がなかったとか*12。この映画をフル体験するための海外旅行に行くべきだったのかも、と最近思うようになった。リバイバル上映のチャンスはないのかな?
愛と科学の点と点がつなる交差点で喪失と死を想う。
この映画は、多くの要素が重層的な構造を織り成している。主人公以外の登場人物の考え方や行動にも、それぞれ理解できる深みが感じられた。何より、「人類存続を懸けたミッション」というマクロな物語と「父と娘の絆」というミクロな物語が、巧みに重ね合わされ展開していくストーリー。時空を超えた冒険が、ある一点に収束していく結末に、激しく心も頭も刺激されて深い感動がある。
スティーブ・ジョブズさんがApple CEOの頃、Appleの目指すべき立ち位置はテクノロジーとリベラルアーツの交差点である、と語っていた*13。それになぞらえるなら、この映画『インターステラー』は、科学 Science と愛 Love の交差点 Intersection を表現した作品ではないかと感じた。ちょっと強引かな?
ついでに言うならば、ジョブズさんのスタンフォード大学卒業式での超有名スピーチ*14で語られたテーマ「点と点をつなぐ」「愛と喪失」「死」というキーワードも連想してしまう。
スミマセン、こじつけ過ぎた。
結局、僕が『インターステラー』を観たときの感動はことばでは表現しきれない。筆舌に尽くしがたい素晴らしさ。It was fabulous beyond description! ビヨンドですよ、ビヨンド!
だから、僕の駄文を読んでもらうより、ともかく体験してもらいたい映画なのだ。
*1:どれを買うか悩ましい。特典とかちょっと違うのかな?
▼iTunes Store。HD版はiTunesExtras(特典映像)があるみたい。
▼Amazon.co.jpのBlu-ray&DVDセットとBlu-ray&本のセット。後者はちょっとお高くなってるなあ……。
インターステラー ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/3枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
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*2:映画鑑賞を主目的とした単独日帰り弾丸ツアーを敢行。その顛末は別記事に書く予定。
*3:他の方のブログには、コメントとして感想を書き込ませていただいた。
映画『インターステラー』を考える(ネタバレ要注意!) - What a Wonderful World
*4:創刊1981年の科学雑誌。ビジュアルが充実しているので、こどもなりに楽しんでいたとおもう。
▼Amazonで売っている2015年04月号
Newton(ニュートン) 2015年 04 月号 [雑誌]
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▼iTunes Storeにあったブラックホール特集のデジタルブック。
*5:http://www.nhk.or.jp/zero/index.html
日曜日夜に頭にサイエンスを注入。南沢奈央さんを鑑賞する目的でもよし。
*6:日本での映画公開前日のGIGAZINEの記事は、筆者のSF熱が伝わってくる。
「インターステラー」のSFっぷりは一体どれぐらいで何がスゴイのか、SF小説とかSF映画とか大好き野郎が見るとこうなる - GIGAZINE
この記事でも挙がっていた映画ももう一度観てみようかな。
▼『2001年宇宙の旅』
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僕が生まれる前に公開された映画が、21世紀の映画にも大きな影響を及ぼしている。『インターステラー』では土星へ向けて旅立つあたり、リスペクトが伺える。
▼『コンタクト』
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ジョディ・フォスター演じる科学者の孤独と苦悩に圧倒される。
*7:29ページ。
- 作者: リサ・ランドール
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2007年に来日してNHKで取り上げられて、この本はちょっと流行ったような気がする。「余剰次元」について物理学の系譜をたどりつつ、数式を使わずわかりやすく解説してくれている。僕はまだ理解しているとは言えないので、また改めて読んでみよう。
*8:『インターステラー』予告編のうち最初期のパターンは、人類が宇宙へ挑戦するリアル映像を使った演出。これもかっこいい。
映画『インターステラー』特報【HD】 2014年11月22日公開 - YouTube
*9:
J・J・エイブラムス監督、クリストファー・ノーラン監督らがフィルムを救う : 映画ニュース - 映画.com
あのエイブラムス監督による『スター・ウォーズ エピソード7』もフィルム撮影というのは興味深い。
▼ちなみに僕が書いたスター・ウォーズ記事。
5月4日は「スター・ウォーズの日」記念!僕の『スター・ウォーズ』体験を語ってみた。 - i-kenのブログ
*10:これはCGだろう、って思ったのがメイキングを見ると実際のセットやロケで撮影していたという驚き。『ダークナイト』の爆破とか、『インセプション』の無重力とか。
▼『ダークナイト』
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Amazonのリンクは『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』のBlu-ray3本入ったパッケージ。未見の方はぜひ3部作どうぞ。
▼『インセプション』
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テレビで放映された時に、テロップで「現在○○階層」と説明が出ていたという話を聞いて脱力した。
*11:
クリストファー・ノーラン監督、Eメールも携帯電話も使わない主義だと判明 : 映画ニュース - 映画.com
*12:IMAXについてのこの記事を読んで、はじめて様々なIMAXがあることを知った。海外での鑑賞記もあり。
なぜ「インターステラー」を観るために海外のIMAXシアターへ行くのか。:足元の足元を広げる :So-netブログ
*13:Steve Jobsが語るIntersection of technology and liberal arts。iPad2発表イベントにて。
Steve Jobs: Technology & Liberal Arts - YouTube
We’ve always tried to be at the intersection of technology and liberal arts, to be able to get the best of both, to make extremely advanced products from a technology point of view, but also have them be intuitive, easy to use, fun to use, so that they really fit the users – the users don’t have to come to them, they come to the user.”
—Steve Jobs
*14:「Stay hungry, stay foolish」で有名なスピーチ。