こんな話を書きました。
まさに異世界チートハーレム無双。時に西暦2010年。タブレット端末登場! 黒船襲来? リストラなう! 時代は風雲急を告げる。冴えないアラサーSEとして燻ぶっていた僕は、偶然にもチートな技術仕様を手にしたことから異世界(電子出版)の動乱に巻き込まれ、縦横無尽の大活躍で(主に年季の入ったおじさまたちから)モッテモテ♡
というのは90パーセント以上誇張が入った嘘です。ごめんなさい。
僕にとっての「電子書籍元年」は2010年です。この年、日本は米国を中心とした電子書籍市場の隆盛から取り残されてしまうか否かの瀬戸際にあったように思います。また、この年に僕はプログラムも書けない残念なSEもどきから残念な電子書籍の人になりました。いったいどんな出来事があったのか、極めて私的な回想を「群雛」の3月号にゲストコラムとして掲載して貰いました。群雛は先週NPO化がニュースになった日本独立作家同盟の発行するインディーズ作家たちによる月刊誌です。以下から僕の文章が読めます。『僕の「電子書籍元年」』というタイトルです。EPUB 3が作られてゆく舞台裏がちょっとは伝わると思います。
追記: BCCKSの立ち読み版だと終わりのほうがちょっと欠けるけど、Kindle版の試し読みは全文読めるらしいです。
月刊群雛 (GunSu) 2015年 03月号 ? インディーズ作家を応援するマガジン ?
- 作者: 神楽坂らせん,芦火屋与太郎,晴海まどか,青海玻洞瑠鯉,合川幸希,盛実果子,王木亡一朗,きうり,高瀬拓史
- 出版社/メーカー: 日本独立作家同盟
- 発売日: 2015/02/23
- メディア: Kindle版
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回想というのはそれなりの地位のある人がやるからなんとか格好がつくのであって、僕などがやってもみっともないし恥ずかしいものです。とはいえ当時の貴重な光景を見届けることができたのでそれを伝えたい気持ちはありました。既に出来事の結末を知っている今の僕たちには、当時のワクワク感や不安感を追体験するのは難しいかもしれません。でも当時から数年は世間のシガラミが気になって気軽に書けなかったし、あまり時間をおくと記憶が風化してしまうので、これを機会に書いておくことにしました。
一万字という制限があったので書けなかったことがいっぱいあります。「俺のことが書いてない!」と誰かから怒られる気もしています。とりわけ既存の出版業界の外側にいた人たちの姿を書けなかったことは心残りです。当時はツイッターで「EPUB」を検索すると大半が日本人によるツイートで、いろんな人が立場を越えて熱心に議論をしたり、学んだことを惜しげも無くブログに公開したりしていました。ウェブを通じたこうした人々の交流も「電子書籍元年」を前に進めた大きな力でした。2010年の「電子書籍元年」は単なる出版業界内部に閉じたムーブメントではなく、だからこそ前進できたと思っています。みんなで作った電子出版環境なんだと僕は証言しておきたいです。
最後になりましたが機会をくれた鷹野凌編集長とスタッフの皆さんに感謝します。日本独立作家同盟のNPO化には、いよいよ電子書籍のバトンが技術者から本の作り手に渡ったような感慨があります。そろそろ僕は「電子書籍元年」をネタにするのも終わりにしようかなと思うのでありました。
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電書ちゃんはまだ帰ってきません。