東京23区の南側、多摩川に差し掛かる手前にあるのが蒲田という街。京浜工業地帯の入り口でもあり、駅前には大きなアーケード商店街や、スナック・居酒屋・風俗店などが密集する歓楽街が広がっている。
そしてここはJR京浜東北線、京急の本線と空港線、東急の池上線多摩川線という5路線もの鉄道が集結する交通の要衝。その3社の鉄道駅が、それぞれに個性的で、蒲田ならではの持ち味を備えているのがおもしろい。
まずは、ターミナル駅としての威容がすばらしい東急の蒲田駅に行ってみよう。頭端式のホームが5面4線並ぶ構成を見ると、今はなき東横線の渋谷地上駅のたたずまいを思い出し、泣けてくる。
私がこの駅でとても気に入っているのは、壁面にある富士山型をしたガラス窓。昨年まではこの窓に赤青黄色のフィルムが貼ってあって教会のステンドグラスみたいだったのが、今ははがされて透明の素通しになった。
ホームの先端に立って池上線、多摩川線の線路を眺めると、地上3階にある駅に向かって勾配を上り下りする電車、交錯するポイントが見えて、気分が盛り上がる。
次に訪ねたのは京急蒲田駅。ここはJR蒲田駅東口から徒歩10分弱と、JRと、ちょっと離れた場所にある。数年前から高架化の工事が行われていて、それがほぼ完成しつつあり、高架化によって今まで第一京浜を横切っていた空港線の踏切がなくなったが、重層の高架線がカーブしながら道路上空を越えていくのは見ものだ。
真新しい高架駅は、その土木構築物としてのあまりの重厚長大さから、一部の鉄道マニアから「要塞(ようさい)」とも呼ばれているらしい。最上部は3階ホームということになっているが、周囲のビルと見比べると8階相当。ホーム端からは、かなり遠くまで視界が開けて、品川シーサイドのオフィスビルなども見える。
JR京浜東北線の蒲田駅のホームは2面3線。駅近くには電車区もあるので、蒲田駅が終点の列車があり、駅員さんたちはそれを「かまどん」と呼んでいるのだとか。「かまどん」という名前の怪獣みたいな蒲田駅のキャラクターのポスターが改札口に貼ってあって、これがなかなか可愛らしくていい。
ホームで鳴る発車メロディーは、かつて松竹蒲田撮影所があったことにより「蒲田行進曲」。それが短調にアレンジしてある妙に暗いメロディーで、毎度この駅ではさみし~い気分になってしまう。
東京生まれ。東京女子大卒業後、雑誌「東京人」勤務。1997年より副編集長、2010年退社。都市、建築、鉄道、町歩きなどをテーマに執筆活動を行う。著書に「大人の東京散歩 昭和を探して」「鉄道沿線をゆく 大人の東京散歩」「わたしの東京風景」など。
鉄道にグッとくるとは? 雑誌「東京人」元副編集長、鈴木伸子が日々の通勤、通学電車で見つけることのできる「まずはココを見て 乗って楽しむべき!」というカーブや鉄橋を、ポイント別に写真と文章で解説。
素人でも撮れる空撮映像
弁当男子に人気の曲げわっぱ