2015年02月19日

2月12日のミンスク合意に関する個人ノート

 あれこれ考え、また、問い合わせも少なからずあったので、現時点での私の意見をまとめてみたい(独断的な見解を含むので引用の場合は出所明記)。

・何故、軍事行動がとりにくいこの時期にロシアは軍事的攻勢を加えたのか?
  人民共和国とロシアの経済状況が悪化したため。特に12/1からのキエフによる年金・社会保障ストップが効いて人民共和国は完全な現金不足、金欠に。困窮する人民共和国側の財政援助は今のロシア経済にとって負担(実際にルーブル札の提供、財政援助を拒否している)。一時的な軍事費増大を以てしても、軍事的攻勢をかけて、一刻も早く経済的な負担をウクライナ側に押し付けることを確定させたい。膠着状態が続くのが一番困る。

・ロシアによる沿ドニエストル化・非承認国家化はあるのか?
 ない。非承認国家の定義に、「財政の親国家からの独立」を加えると、ますますあり得ない。
 沿ドニエストルは財政的に親国家モルドバから独立しているが、実際はロシアが7割くらい援助してきた。その沿ドニエストルを見捨てた今のロシアが、人口にして沿ドニエストルの10倍、経済規模にして20倍で、かつインフラ崩壊のドンバス社会・経済を支えたいとは思えない。「ミンスク合意履行に関する包括措置」第8項*にあるように、ウクライナ側の財政を前提にしている。ロシアは経済負担をしない。ロシアの狙いは中央予算に寄生していたチェチェン化(財政上、独立していないチェチェンは非承認国家に含めない)。
* 小泉氏による合意文書の和訳はこちら

・クリミアみたいな編入はあるのか?
 ロシアの経済的負担は、編入(クリミア)が一番高い。住民の年金、社会保障、インフラ、全部内地並みにしないといけない。クリミアもドンバスも生産性は高くないから、編入で負担は大きくなる。仮に編入したり、連邦化を諦めて非承認国家化させた場合は、プーチン指導部が経済合理性を無視して安全保障至上主義のイケイケになった証拠ともなる。財政負担は、編入>非承認国家>連邦制(親国家の枠内)の順になる。

・ウクライナ軍は何でこんなに弱いの?
バタリオン(志願部隊)を含み、統制が取れないから。しかし、それ以上に、8月末以降、ロシア・人民共和国側が質・量ともに圧倒的に増強されているから、相対的に弱いまま。ロシアとの国境を塞いで、ロシアからの軍事支援を絶たない限り、ウクライナ軍が勝てる可能性はない。

・次々に占領しているけど領土拡大する意味は?
 軍事的に圧力をかけて、交渉を有利に進めるため。いたずらに領土を広げると、域内の住民を養わねばならず、デメリットが大きくなる。また、ロジック上、「解放」地域には限界がある。

・結局、プーチンは何がしたいの?
 合意文章第11項にあるように、憲法改正を強いて、ウクライナに連邦制かその類を導入させたい。連邦制には、外交権に対する拒否権を含めたい。そうすることで、「ファシスト・キエフ政権に対する同胞の権利をプーチン自らが擁護した」という名目と、「ウクライナのNATO加盟阻止」という実利を達成できる。ついでに、連邦制なので財政はウクライナ任せ。一石三鳥。

・この後、どうなるの?
 改憲をめぐる三者協議に注目。ウクライナ側お得意の引き伸ばしを阻止するために年末まで、と期限を切ってある。
 連邦制導入失敗→再々度の軍事的圧力をかける、
 ロシアへの経済制裁&ドンバス経済封鎖の継続→経済的負担に耐えられないロシア側が再々度の軍事的攻勢 というループ化も考えられる。 
posted by 藤森信吉 at 01:12| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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