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 有明海で続く不漁の原因は養殖ノリの病気を防ぐために使われる酸処理剤だとして、沿岸の熊本、福岡、佐賀各県の漁業者約900人が、国に対し、1人当たり10万円の損害賠償を求める集団訴訟を熊本地裁に起こすことがわかった。酸処理剤の使用を禁止しない国の責任を問うとしている。

 提訴をとりまとめるのはNPO法人・有明海を守る会(熊本市、渡辺年勝理事長)。同会によると、漁業者は「酸処理剤の成分が赤潮などの汚染を引き起こす原因になっており、使用を禁止しない国は漁業権を侵害している」と主張している。提訴は3月上旬ごろの予定で、原告は最終的に1千人を超える見通しという。

 酸処理剤は養殖ノリにつく雑藻の除去や、病気予防のために使われており、1980年代から使用が本格化。84年には水産庁が「酸処理剤の成分を自然界で分解されやすい有機酸に限定し、残液についても適正な処理、処分を行う」などとする通達を出している。

 酸処理剤に含まれているリンや有機酸が海の富栄養化や低酸素化の一因になっているとの指摘は以前からあったが、同庁栽培養殖課は「リンは微量であり、有機酸も数秒から数分で中和される。通達に基づいた使用であれば影響がない」としている。(籏智広太)